ペットと暮らせる特養から 若山三千彦
医療・健康・介護のコラム
職員家族の3段階先の知人感染でも出勤停止に 新型コロナで疲弊する介護現場
愚痴は出ても「何があっても、ご入居者様の命は守ります」
しかしそれでも、リーダーから「職員の友人の友人の友人が感染したという報告がありましたが、休ませなければいけませんか? もうユニットの職員がギリギリなんですけど」と聞かれたら、心を鬼にして「絶対に休ませるように」と答えています。もちろんリーダーも、ご入居者様が一番大切ですから、その職員を休ませなければいけないことはよくわかっているのですが、それでも私に言いたいだけなんです。愚痴のような報告をして、必死に頑張っているんです。これが現在の介護現場の状況なのです。
悲観的なことを書いてしまいましたが、リーダーも、その下にいる職員たちも音を上げていません。何があっても、ご入居者様の命を守らなければいけないと覚悟を固めています。あるリーダーの言葉が強く印象に残っています。
「万が一、うちのユニットで大勢の職員が感染してしまった場合は、私がユニットに泊まり込んで、ぶっ続けで勤務しますよ。2週間くらい、何があってもご入居者様の命は守りますよ」
「ありがとう、頼むよ」と言いながら、私は涙をこらえていました。 このような職員が介護の現場を支えているのです。このような職員が、全国すべての特別養護老人ホームで頑張っているのです。
職員の頑張りだけでは限界がある
しかし、職員の頑張りにだけ頼るのは限界があります。今回の新型コロナウィルス感染は何とか持ちこたえてみせますが、また同じような災厄に見舞われたら、持ちこたえるのは困難です。
今、この状況で国に支援を求めるのが無理なことは、私たちもよくわかっています。しかし、国には、このような特別養護老人ホームの現場の状況だけは把握してもらいたいのです。その上で、今回の新型コロナウイルスの感染が終息した後、次に未曽有の大災害に見舞われた時に特別養護老人ホームが持ちこたえられるよう、 脆弱 な職員体制を改善してくださることを期待しています。(若山三千彦 特別養護老人ホーム「さくらの里山科」施設長)
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