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妊娠・育児・性の悩み

不妊治療は「不要不急」じゃない! 緊急事態宣言で深まる妊活者の苦悩

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不妊治療は「不要不急」じゃない! 緊急事態宣言で深まる妊活者の苦悩

新規治療の開始を見合わせたクリニックも

 しかしながら、この新型コロナが不妊治療に与える影響は、もちろんこれだけではありません。緊急事態宣言が出たことで、新規治療の開始を見合わせているクリニックもあります。Nさんは結婚3年目の34歳。昨年の夏から不妊治療を始め、人工授精を行っていたといいます。「もうそろそろステップアップ(次の段階の治療=体外受精に進むこと)をしようと、先生と話をしていたんです」。それが今年の1月の終わりだったそうです。

 パートナーの仕事の繁忙期が終わる4月に入ったら、次の治療に進もうと計画していたのに、通っている病院から、新規の治療は開始しないという方針が出てしまったそうです。「無理を言えば、もしかしたらやってもらえるかもしれないんですけど、そこまでしてやってもらうのもどうかなって、だんなさんと話をしていて……。確かにうちの病院は混んでいるので、院内感染も怖いといえばそうだし、待合室は狭いから椅子が近いし。でも、せっかくステップアップに向けて準備してたし……」。この機会に転院したほうがいいか、転院するならどうしたらいいのか、どこに行けばいいのか、迷いが深まる、と小さな声でつぶやきました。

 こうした方たちの悩みや不安に対して何か少しでもできないかと、NPO法人Fineでは「新型コロナウイルス感染症についての医療施設対応(一部)」として、まずは1都3県(東京都・神奈川県・埼玉県・千葉県)の助成金の指定医療機関を一覧にした対応リストを掲載しており、順次、他の地域のデータなどもアップデートを行っていきます。そのほかにも学会や厚生労働省の関連リンクもこのページにまとめてありますので、必要な方はよろしければご参照ください。
https://j-fine.jp/infertility/coronataiou_clinic.html

オンラインカウンセリングで心理サポート

 また、不安を抱えている当事者の心理サポートとして、オンラインでカウンセリングが受けられるところもありますので、そうしたところを利用されることもよいと思います。Fineでもオンラインカウンセリングの準備を進めていて、現在プレスタートしています。よろしければご活用ください。
https://j-fine.jp/activity/counseling/index.html

 さらに、4月19日(日)には、生殖心理カウンセラーの講演と、不妊体験者2人の体験談が聴け、希望者はオンラインおしゃべり会にも参加できる「カウンセリング公開講座」も実施します。無料でどなたでもご参加いただけますので、「今誰かと話したい」「話が聴きたい」と思う方は、ぜひこうした機会もご利用いただけたらと思います(事前申し込み必要。定員あり)。
https://j-fine.jp/activity/counseling/kouza.html

不本意な治療中断が起きないように

 報道やニュースでは、「不要不急」という言葉が繰り返されています。世界各国のARTのデータ収集・分析・普及を行う非営利国際機関のICMART(International Committee for Monitoring Assisted Reproductive Technologies)の声明文には、「新規治療の開始を見合わせること、不妊治療に関連するその他の非緊急処置をすべて延期することを推奨いたします」との一文もありました。妊婦や胎児に対する影響等、何もかもがわからない状況では、患者の安心安全を考えると、それも致し方ないことと頭では理解できます。

 しかし、当事者からすると、不要で不急な不妊治療などありません。みな一日も早く子どもを授かりたい思いで、これまでずっと、他の様々なことを我慢したり、あきらめたりしながら必死で頑張ってきているのです。多くの不妊治療施設も同様で、この状況の中でも何とか患者が望む治療を続けられるようにと頑張ってくださっています。どうか、納得のいくような治療を続けられますように。患者にとっても医療者にとっても、不本意な治療の中断等が起こりませんようにと、心から祈っています。(松本亜樹子 NPO法人Fine=ファイン=理事長)

 

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松本 亜樹子(まつもと・あきこ)
NPO法人Fineファウンダー・理事/国際コーチング連盟マスター認定コーチ

松本亜樹子(まつもと あきこ)

 長崎市生まれ。不妊経験をきっかけとしてNPO法人Fine(~現在・過去・未来の不妊体験者を支援する会~)を立ち上げ、不妊の環境向上等の自助活動を行なっている。自身は法人の事業に従事しながら、人材育成トレーナー(米国Gallup社認定ストレングス・コーチ、アンガーマネジメントコンサルタント等)、研修講師として活動している。著書に『不妊治療のやめどき』(WAVE出版)など。
Official site:http://coacham.biz/

野曽原 誉枝(のそはら・やすえ)
NPO法人Fine理事長

 福島県郡山市出身。NECに管理職として勤務しながら6年の不妊治療を経て男児を出産。2013年からNPO法人Fineに参画。14年9月に同法人理事、22年9月に理事長に就任。自らの不妊治療と仕事の両立の実体験をもとに、企業の従業員向け講演や、自治体向けの啓発活動、プレコンセプションケア推進に力を入れている。自身は、法人の事業に従事しながら、産後ドゥーラとして産後ケア活動をしている。

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