40代から備えよう「老後のお金」 楢戸ひかる
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「60歳を過ぎたら起業せよ!」と元厚労官僚が勧めるワケ…公的年金でトクする方法
捨てたもんじゃない厚生年金
主婦の方なら、パートをする際の、いわゆる「扶養の範囲」の線引きラインが、2016年10月に変わったことは記憶に新しいかもしれません。当時、女性向けの媒体では「扶養の範囲内で働くにはどうしたらいいか?」という話でもちきりでしたが、あの制度改正の本質は、「パート労働者への厚生年金の適用拡大」です。
「改正時、適用対象にならないよう労働時間を短くした人は全体の3分の1にとどまり、政府予想の25万人に対して、1.5倍の37万人が新たに厚生年金に加入したと報じられました」(宇野さん)
公的年金に対して、「将来、公的年金はあてにできないから、今、払わないようにする」と考えるか、「将来もらえる公的年金を増やすために、今、できる限り払うようにする」と考えるか……。両極の考え方ですが、人生100年時代で長寿化が可視化されてきた今、終身もらえる公的年金を積極的に利用しようと考える人が増えているのでしょう。
「お金のため」ばかりじゃない
起業の魅力は社会保険の面だけではないようです。ひつじ企画は、昨年の秋から、更なる事業として「フリースペース江古田3」を開設しました。フリースペース江古田3の利用料は、1日2000円。取材中も、宇野さんは、公共スペースに置いてあるチラシを補充したり、商店街で買い物をしている母子にチラシを手渡したりと、宣伝に余念がありません。
1日2000円の「収益」のために頑張るモチベーションは何なのでしょうか? ちなみに、宇野さんが非常勤で勤務する際の時給は、これよりはるかに高く、「公益財団法人年金シニアプラン総合研究機構特任研究員」という肩書で、社会保障制度への提言もされています。
「確かに、文章を書いていた方がお金になるし、社会的なインパクトはありますよね。でも、ひつじ企画の経営は、ある意味、ゲームなんだと思います。ゲームを始めたからには、勝ちたいじゃないですか。そこなんだと思いますよ」と笑います。
起業というゲームをしている宇野さん、何だかとても楽しそうでした。私も、宇野さんのような遊び心があるシニアになりたい! そう考えると、今のうちから社会保障の知識を持ち、公的年金を少しでも多くもらえる工夫をしてみよう――そんな気持ちになりました。(楢戸ひかる マネーライター)
追記: 本記事の取材は、2020年3月19日に行いました。宇野さんの次男、株式会社ひつじ企画の専属モニター兼顧客の宇野敦さんは、同23日に急逝されました。謹んでご冥福をお祈りします。
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