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がんの粒子線治療に新機器…臓器守り 体内で分解

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 切除が難しいがんが見つかった時、有力な選択肢となる粒子線治療。消化管が集まる腹部に照射すると、正常な臓器が損傷する恐れがあり、治療できないケースもあった。この課題の解消につながる新しい医療機器が昨年末に登場し、治療の可能性が広がった。(野村昌玄)

がんの粒子線治療に新機器…臓器守り 体内で分解

  縫合糸と同じ材料

 がんの治療は手術、薬物療法、放射線治療の三つが基本だ。放射線治療は、手術の負担に耐えられない高齢者や、切除が難しい部位にがんができた人に適しており、手術後の再発・転移を防ぐ目的でも行われる。

 粒子線は放射線の一種。その中に重粒子線や陽子線があり、炭素イオンや陽子などの粒子を加速させ、狙ったがんをたたく。エネルギーの集中度を高め、ピンポイントで照射できる。がん周辺の臓器への影響も最小限に抑えられる。

 ただ、消化管は粒子線に当たると穴が開くなど、損傷を受けやすい。腹部や骨盤内には消化管が集まっており、がんの部位によっては、粒子線治療を断念せざるを得ない患者もいた。

 治療の前に開腹手術を行い、がんの部位と正常な臓器の間に医療用のシートなどを挟む。粒子線の影響を最小限に抑えるためだ。照射後もシートを体内に残すが、硬化などによる違和感から、再び手術で取り出すこともある。

 治療に伴う患者の負担を減らすため、神戸大チームが開発したのが「ネスキープ」だ。粒子線を遮断・低減する効果に加え、手術で使う縫合糸と同じ材料のため、半年余りで水や二酸化炭素に分解される。

 患者5人を対象とした治験では、がんがある部位と正常な臓器の間にネスキープを挟み、粒子線治療を行ったところ、正常な臓器に影響は出なかった。

 大阪市の男性会社員(48)は、肝臓がんで2014年秋から治療を続けている。市内の病院で、がんに栄養を運ぶ血管を塞ぎ、兵糧攻めにする肝動脈 塞栓そくせん 療法などを受けた。一定の効果はあったが、昨年春に6センチのがんが見つかった。消化管に近接していた。

 「これ以上の治療は難しい」。粒子線治療を念頭に担当医から神戸大病院を紹介された。この治療の設備があるのは国内で陽子線17か所、重粒子線5か所、両方可能1か所。同病院にはないが、両方備えた兵庫県立粒子線医療センター(たつの市)と連携している。

 昨年9月初め、同病院でネスキープを体内に置く手術を受けた後、同センターへ移った。治療の結果、がんは画像検査で確認できないほど小さくなった。当時は全額自費で約500万円かかったが、男性は「家族のことを考えると諦めきれなかった」と話す。

  昨年末に保険適用

 ネスキープは昨年12月に医療機器として公的医療保険の対象となった。粒子線治療でこの保険が使えるのは、前立腺がんや 頭頸とうけい 部がんなどに限られる。それ以外は先進医療として自費と保険診療の併用となる。

 ネスキープの使用は、日本放射線腫瘍学会の指針に基づき、研修を受けた外科医と放射線腫瘍医の連携などが条件。同大学 肝胆膵かんたんすい 外科教授の福本巧さんは「血管や神経を巻き込み、手術が難しくなることが多い膵臓がんにも、選択肢が広がるのではないか」と話す。

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