認知症介護あるある~岡崎家の場合~
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【最終回】パンデミックに鼻毛で対抗? 介護施設の関門をくぐり、父さんと衝撃の再会
徹底ぶりに感謝
いよいよ父さんのいるところに行けるかと思ったら、入所者の居住スペースには入れず、父さんを会議室に呼び出しての面会となるのだそう。
新型コロナウイルスは、高齢者や持病のある人が感染すると重症化しやすいといわれています。老健には、その条件をダブルで満たす人が集まっているのですから、念には念を入れるのは当然のこと。ここまで徹底した対策を行ってくださる介護現場のスタッフには頭が下がる思いです。
……なんてことを考えながら、広い会議室でぽつんと座っていると、歩行器を操りつつ父さんが登場。私の顔を見るなり、「鼻毛を切るハサミを持ってきたのか?」と、思いもよらない第一声です。驚いて父さんの顔を見ると、なぜか鼻毛がボーボーと生い茂り、鼻の穴から盛大にはみ出しています。
いろいろ予想外だったけど、元気でなにより
ゆらゆら揺れる鼻毛を見て、「空気が汚染されると自己防衛本能が働き、危険物質の侵入を防ぐために鼻毛が伸びる」という都市伝説を思い出しました。もしや、毎日、新型コロナウイルスのニュースを見るうちに、父さんの本能が目覚めたとか??
それって、科学的な根拠はないんじゃないの? でも、鼻毛が異物をシャットアウトしているのは間違いないんだから、切ってしまっていいのだろうか……と、一瞬迷いながらも「スタッフに切るように伝えるよ」と返しました。すると、「頼む!」と言い残し、父さんは会議室を後にしました。
あっという間に面会が終了。あれ? 私、やっと決まった特別養護老人ホームのこととかも話そうと思ってたのに……。でも、よく伸びる鼻毛にも守られて(?)父さんは元気なようでなによりです。
さて、2年余りにわたってご愛読いただいたこの連載は、今回で終了します。長い間、ありがとうございました。いつも家の真ん中にいた父さんが施設で暮らすようになり、我が家の様子も大きく変わりつつあります。ここで装いを一新し、「ニュー岡崎家」で巻き起こるあれやこれやをお届けする連載を近日中にスタートします。引き続きご愛読のほど、よろしくお願いいたします。(岡崎杏里 ライター)
登場人物の紹介は こちら
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