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Dr.若倉の目の癒やし相談室 若倉雅登

医療・健康・介護のコラム

新型コロナウイルスと眼科…無関係ではありません!?

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新型コロナウイルスと眼科…無関係ではありません!?

医師と患者の距離が30センチの近さに。当院では透明の遮蔽板を間に挟む対策をとりました

 昨年末から中国湖北省の武漢市を中心に広がった新型コロナウイルスの感染(COVID-19)は、その後3か月も経過しないうちに世界への大流行(パンデミック)へと発展しました。ここまでくると、このウイルスの活性に季節性があるとか、有効な治療法が見つかるとかしない限り、人類による制御は不能に近い状態になったことを示しています。

 医療関係者の発症も少なからず報道されていますが、そんな中で、武漢市の病院に勤務していた2人の眼科医がこの感染症で死亡したというニュースは、私たち眼科医の衝撃となりました。

 眼科の李文亮医師(当時33歳)は、昨年12月末に、少なくとも7人、重症急性呼吸器症候群(SARS)に似た感染症患者がいるとの情報を、医師仲間のソーシャル・ネットワーキング・サービス(SNS)で共有しました。しかしその4日後、事実でない情報を広めて社会秩序を乱したとして、公安当局から訓戒処分を受けることとなりました。

 さて、公安当局から病院勤務に戻った李医師は、1月初めに緑内障の女性を治療しました。その患者はその後、発熱し、肺炎になっています。李医師は、1月10日ごろから (せき) が出て、発熱、入院となりました。中国では1月20日になって新型コロナウイルスの流行を認めました。李医師は、ウイルスの検査を何度か受けましたが、陰性、最終的に陽性となり、その約1週間後の2月7日に死亡しました。最後の2日間で重症化したようです。ご両親も感染しましたが、回復しているようです。

 追いうちをかけるように、同じ病院の別の眼科医もこの感染症による肺炎のため、3月9日に死亡しています。

 ちなみに中国政府は、3月19日、李医師への地元公安当局の処分は不当だったとして、李医師への訓戒処分を撤回して謝罪し、関係者を処分したとのことです。

 眼科の病気で通院している患者たちは、仮に多少発熱していても、風邪症状があっても、眼科の病気とは無関係と考え、わざわざ申告することは少ないと思われます。しかし、眼科の診察や検査は、患者との距離が非常に短く、たとえば検査や治療に多用される 細隙灯(さいげきとう) 顕微鏡では、医師と患者の距離が30センチになります。そこで、当院では透明の 遮蔽(しゃへい) 板を間に挟む対策をとりました。同様のものは、最近の香港からの論文でも使用が勧められおり、普及するものと思われます。

 新型コロナウイルス感染では、急性結膜炎になる場合もあり、結膜からウイルスが検出された例も報告されていることが、日本眼科医会から眼科医向けに注意喚起がなされています。

 このように、一見、COVID-19は眼科や眼科医と無関係のようにも見えますが、医療側はもちろん、眼科に通院する方々も高い意識を持つ必要があります。

 (若倉雅登 井上眼科病院名誉院長)

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若倉雅登(わかくら まさと)

井上眼科病院(東京・御茶ノ水)名誉院長
1949年、東京生まれ。80年、北里大学大学院博士課程修了。北里大学助教授を経て、2002年、井上眼科病院院長。12年4月から同病院名誉院長。NPO法人目と心の健康相談室副理事長。神経眼科、心療眼科を専門として予約診療をしているほか、講演、著作、相談室や患者会などでのボランティア活動でも活躍中。主な著書に「目の異常、そのとき」(人間と歴史社)、「健康は眼にきけ」「絶望からはじまる患者力」「医者で苦労する人、しない人」(以上、春秋社)、「心療眼科医が教える その目の不調は脳が原因」(集英社新書)など多数。明治期の女性医師を描いた「茅花つばな流しの診療所」「蓮花谷話譚れんげだにわたん」(以上、青志社)などの小説もある。

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