常喜眞理「女のココロとカラダ講座」
医療・健康・介護のコラム
「汗をかく」「ドキドキする」は甲状腺の病気かも…「食べているのにやせる」も要注意です
美容院で円形性脱毛症を指摘されたと言って、30歳代前半のKさんが来院された。「しばらく前から体調も悪くて、胸がドキドキするんです」と言い始めた。Kさんに今まで大きな病気はない。3か月前からの体重変動を聞くと、4キロ減っているという。最初は少し炭水化物を減らしたせいかな?と思っていたが、その後も、食べる量を減らしていないのに体重が減ってしまったという。最近、仕事のストレスも多かったので、体調不良もそのせいだと思っていた
ダイエットの成果と思っていたが…
「脱毛のほかに気になることは?」と聞いてみた。眠りが浅いと感じていたが、喉が痛いなど風邪の症状もなく、熱もないので、しばらくは受診を迷っていたらしい。確かに脈が少し速い。血圧を測ると、上は112、下が58と正常だが、脈拍は90と速かった。
首の前側下方にある甲状腺が少し腫れていたので、血液検査を行った。その結果、甲状腺機能が高く、バセドウ病だと分かった。
甲状腺機能亢進症は女性に多い病気だ。Kさんのように、ダイエットして痩せたと思いきや、実は甲状腺機能亢進症が潜んでいたという場合もある。
早めに気付いて薬による治療をすれば改善する病気なのだが、徐々に痩せていくケースでは、自覚がないこともある。よく汗をかく、軽い運動でも息があがるなどの症状や、3か月で3キロ以上、体重が減った場合などは、一度、医療機関に相談してみよう。
「最近、すごく汗をかくんです」
Aさんは、3か月のお子さんの予防接種でクリニックを訪れた。最近は、日本の予防接種もようやく世界標準に近づいており、0歳児が受けるべきワクチンの数は多い。3本も注射された赤ちゃんは大泣きしたので、Aさんは抱っこしながら一生懸命あやしていた。
するとAさんは、「最近、すごく汗をかくんです」と言いながら、汗を自分のタオルで拭き出した。もともと汗っかきだが、自分でも尋常じゃないと思うほど汗をかくという。脈を測ったら、1分に85回と少し速い。体重は出産後、減っているが、消費カロリーが多大な母乳による子育て中のため,参考にはならない。それほどやせ形のタイプではなく、甲状腺の腫れも目立たないが、一度調べてみることになった。
甲状腺機能は高く、軽度の炎症反応もあり、亜急性甲状腺炎と診断した。亜急性甲状腺炎は30~40歳代の女性に多い。出産後も比較的発症しやすい時期だ。一過性のこともあり、軽い場合は、出産後の子育ての忙しさで気づかない方もいるかもしれない。Aさんも炎症のピークは過ぎている状態だった。「もう少し経過をみるだけで大丈夫だから、汗には驚かずに過ごそうね」と声をかけた。幸い3か月後には正常に戻っていた。
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