のぶさんのペイシェント・カフェ 鈴木信行
医療・健康・介護のコラム
意外にヒマ?な入院生活を満たす必需品とは
まずはメモ帳とペン
どうやら胃がんの彼は、入院して手術を受けることになったようだ。彼から、このカフェに行きたいと私に言ってきた。のぶさんが、カウンターに横並びに座った私たちをやさしく迎えてくれる。
「あれから、入院して手術を受けることになってしまって……」
彼から、のぶさんに切り出した。
「そうですか。それならねぇ、持っていくと便利なものを挙げてみましょうか」
なんだか講義みたいだ。彼がメモ帳を取り出した。
「まずは、まさにそのメモ帳とペン。気づいたこと、医師に言いたいこと、検査の記録、家族に伝えることなどを書き込むといいですよ。多分お薬手帳は病院に預けてしまうので、自分では書き込めないと思います」
なるほど。自分が記録を取るというのは、いつものぶさんが言っていることだ。
「他には……」
のぶさんが次から次へと挙げてきた。
インターネットのWi-Fiは使える?
・パソコン・タブレット…とにかくヒマなので。
・Wi-Fi…無料接続できる病院もあるが、自分でレンタルなどの手配が必要な場合もある。
・耳にやさしいヘッドフォン…大部屋だと音は出せない。
・電源2口タップ…コンセントは一人1口しか使えない病室が多い。
・羽織れる上着…室温が自分の思い通りにならない場合もある(点滴時には袖を通せないので、かぶるのではなく、羽織るタイプがいい)。
・S字フック…何かとベッド周りにつるせると便利。
・耳栓…夜は、同室者のいびきだけではなく、スタッフの足音なども気になるもの。
・ふりかけ…病院食の味に過度な期待はしないほうがいい。
・小さな置き時計…検査や食事の時刻が決まっているが、スマホでチェックするのは煩わしい。
・大きめのタオル…風呂の回数も限られるし、枕の形も選べない。なにかとあれば便利。
「それ以外も、SNSなどに『入院する』ことを書くと、読んだ人からアイデアが寄せられる可能性もありますよ」
逆に不要なものも
逆に、事前に用意するのが不要なものもあるという。
入院前に、持参するべきものを指示されるが、それらの多くは病院内の売店で購入できるらしい。割高になるが、持参する荷物を減らせるメリットもある。
何度も入院しているのぶさんは、彼にさらりと話している。まるで小旅行に行く身支度を考えているぐらいの感覚だ。そんな私の気持ちを察して、私に言う。
「周りの方は、あまり大げさにしないという意識も大切だと思うんですよ」
みんなが「大変だ」と言うと、患者自身も「大変だ」という意識が強くなってしまうもの。慣れていない入院や手術には、不安があって当然。でも、その不安は、漠然としている場合が多い。不安の内容がはっきりして具体的なサポートが必要ならするが、そうでなければ、患者の気持ちが前向きになれるような態度がよいという。
面会の可否もあらかじめ表明しておく
「入院中に気を付けることもありますね」
・足腰…入院中は、歩く時間も階段昇降の機会も少なくなる。数日、体を動かさなくなるだけで、想像以上に体が鈍る。病気の状態にもよるが、足腰の筋力の低下が著しい方が多い。歩いてよいかを看護師に聞いて、できる限り病院内を散歩するなどして体を動かした方がいい。もちろん、散歩に行くときは看護師に声をかけるのがマナーだ。
・間食…病院で出される食事だけでは足りず、口寂しくて、間食をしたくなるものだ。病気によっては、少し食べても大丈夫な場合もある。看護師に相談した上で食べるようにするとともに、食べた量はしっかりとメモしておき、看護師に報告することも大切。
・面会の可否…職場の同僚や親族などに、面会の可否をオープンにしておくことで、余計な気遣いをさせないで済む。これもSNSなどに投稿しておくと、周囲の方はわかりやすい。
「のぶさんも、入院したときはSNSへアップしたんですか?」
私から聞いてみた。
面会には来てほしくないと思ったのぶさんは、入院することはSNSに書いたが、病院名などは一切明かさなかったそうだ。
ともあれ、慣れない上に、不安がたくさんある入院生活。彼が、少しでも快適に過ごせることを期待したい。
下町と言われる街の裏路地に、昭和と令和がうまく調和した落ち着く小さなカフェ。そこは、コーヒーを片手に、 身体 を自分でメンテナンスする工夫やアイデアが得られる空間らしい。カフェの近所の会社に勤める49歳男性の私は、仕事の合間に立ち寄っては、オーナーの話に耳を傾けるのが、楽しみの一つになっている。
(※ このカフェは架空のものです)
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