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のぶさんのペイシェント・カフェ 鈴木信行

医療・健康・介護のコラム

意外にヒマ?な入院生活を満たす必需品とは

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まずはメモ帳とペン

 どうやら胃がんの彼は、入院して手術を受けることになったようだ。彼から、このカフェに行きたいと私に言ってきた。のぶさんが、カウンターに横並びに座った私たちをやさしく迎えてくれる。

 「あれから、入院して手術を受けることになってしまって……」

 彼から、のぶさんに切り出した。

 「そうですか。それならねぇ、持っていくと便利なものを挙げてみましょうか」

 なんだか講義みたいだ。彼がメモ帳を取り出した。

 「まずは、まさにそのメモ帳とペン。気づいたこと、医師に言いたいこと、検査の記録、家族に伝えることなどを書き込むといいですよ。多分お薬手帳は病院に預けてしまうので、自分では書き込めないと思います」

 なるほど。自分が記録を取るというのは、いつものぶさんが言っていることだ。

 「他には……」

 のぶさんが次から次へと挙げてきた。

インターネットのWi-Fiは使える?

2016年に入院した時の筆者の様子

2016年に入院した時の筆者の様子

 ・パソコン・タブレット…とにかくヒマなので。

 ・Wi-Fi…無料接続できる病院もあるが、自分でレンタルなどの手配が必要な場合もある。

 ・耳にやさしいヘッドフォン…大部屋だと音は出せない。

 ・電源2口タップ…コンセントは一人1口しか使えない病室が多い。

 ・羽織れる上着…室温が自分の思い通りにならない場合もある(点滴時には袖を通せないので、かぶるのではなく、羽織るタイプがいい)。

 ・S字フック…何かとベッド周りにつるせると便利。

 ・耳栓…夜は、同室者のいびきだけではなく、スタッフの足音なども気になるもの。

 ・ふりかけ…病院食の味に過度な期待はしないほうがいい。

 ・小さな置き時計…検査や食事の時刻が決まっているが、スマホでチェックするのは煩わしい。

 ・大きめのタオル…風呂の回数も限られるし、枕の形も選べない。なにかとあれば便利。

 「それ以外も、SNSなどに『入院する』ことを書くと、読んだ人からアイデアが寄せられる可能性もありますよ」

逆に不要なものも

 逆に、事前に用意するのが不要なものもあるという。

 入院前に、持参するべきものを指示されるが、それらの多くは病院内の売店で購入できるらしい。割高になるが、持参する荷物を減らせるメリットもある。

 何度も入院しているのぶさんは、彼にさらりと話している。まるで小旅行に行く身支度を考えているぐらいの感覚だ。そんな私の気持ちを察して、私に言う。

 「周りの方は、あまり大げさにしないという意識も大切だと思うんですよ」

 みんなが「大変だ」と言うと、患者自身も「大変だ」という意識が強くなってしまうもの。慣れていない入院や手術には、不安があって当然。でも、その不安は、漠然としている場合が多い。不安の内容がはっきりして具体的なサポートが必要ならするが、そうでなければ、患者の気持ちが前向きになれるような態度がよいという。

面会の可否もあらかじめ表明しておく

 「入院中に気を付けることもありますね」 

 ・足腰…入院中は、歩く時間も階段昇降の機会も少なくなる。数日、体を動かさなくなるだけで、想像以上に体が鈍る。病気の状態にもよるが、足腰の筋力の低下が著しい方が多い。歩いてよいかを看護師に聞いて、できる限り病院内を散歩するなどして体を動かした方がいい。もちろん、散歩に行くときは看護師に声をかけるのがマナーだ。 

 ・間食…病院で出される食事だけでは足りず、口寂しくて、間食をしたくなるものだ。病気によっては、少し食べても大丈夫な場合もある。看護師に相談した上で食べるようにするとともに、食べた量はしっかりとメモしておき、看護師に報告することも大切。

 ・面会の可否…職場の同僚や親族などに、面会の可否をオープンにしておくことで、余計な気遣いをさせないで済む。これもSNSなどに投稿しておくと、周囲の方はわかりやすい。

 「のぶさんも、入院したときはSNSへアップしたんですか?」

 私から聞いてみた。

 面会には来てほしくないと思ったのぶさんは、入院することはSNSに書いたが、病院名などは一切明かさなかったそうだ。

 ともあれ、慣れない上に、不安がたくさんある入院生活。彼が、少しでも快適に過ごせることを期待したい。

 下町と言われる街の裏路地に、昭和と令和がうまく調和した落ち着く小さなカフェ。そこは、コーヒーを片手に、 身体(からだ) を自分でメンテナンスする工夫やアイデアが得られる空間らしい。カフェの近所の会社に勤める49歳男性の私は、仕事の合間に立ち寄っては、オーナーの話に耳を傾けるのが、楽しみの一つになっている。

(※ このカフェは架空のものです)

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鈴木信行(すずき・のぶゆき)

患医ねっと代表。1969年、神奈川県生まれ。生まれつき二分脊椎の障害があり、20歳で精巣がんを発症、24歳で再発(寛解)。46歳の時には甲状腺がんを発症した。第一製薬(現・第一三共)の研究所に13年間勤務した後、退職。2011年に患医ねっとを設立し、より良い医療の実現を目指して患者と医療者をつなぐ活動に取り組んでいる。著書に「医者・病院・薬局 失敗しない選び方・考え方」(さくら舎)など。

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