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のぶさんのペイシェント・カフェ 鈴木信行

医療・健康・介護のコラム

検査を受けるときの三つのポイント

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発信した情報に反応があった

 「のぶさん! 連れてきました!!」

 急ぐ報告もあり、今日はランチにのぶさんのカフェへ行くことにした。そして、彼も連れて。

 彼とは、先日胃がんであることが判明した会社の同僚だ。いままで周囲に隠していたが、先日ののぶさんのアドバイスを受けて、私が「発信の大切さ」をSNSに書き込んだところ、昨夕、彼が私にそっと連絡してきた。

 「胃がんが判明して、これからいくつかの検査が予定されているんです」

 そこで、早速のぶさんと引き合わせるためにこのカフェに連れてきた。彼は、このカフェの存在は知っていても、ここが医療に関する学びの場になっていることは知らなかったらしい。単にランチに誘われたと思っているようだ。ランチを注文するなり、私は意気込んで聞いてみた。

 「検査を受けるときの心構えや準備ってありますか?」

 彼は、怪訝(けげん)そうな顔で私とのぶさんを見比べる。そりゃそうだ。カフェでいきなり病気の話をし始めているのだから。

 のぶさんは、私と彼の二つのランチ注文を厨房(ちゅうぼう)のスタッフへ告げると、事務室へ入っていく。しばらくすると、メモ用紙を持ってきた。そこには三つの項目が箇条書きされていた。

検査を受けるときの三つのポイント

医師の説明をお薬手帳にメモした筆者の実例

(1) お薬手帳を持って「記者」になる

 医師や看護師らから説明されることは初めて聞く言葉が多いし、口頭で説明されることもある。そこで、しっかりとメモすることが大切。まるで新聞記者のように。その際にお薬手帳にメモすると、その後の調剤薬局で薬剤師に説明する手間も省け、情報が一つにまとまるので効率的だそうだ。また、どの程度、理解できているかが、自分にも医師らにもわかるので、よりわかりやすい説明を受けられるようになるという。

(2)着脱しやすい服装で

 自分が予想していない検査を勧められる日もある。セーターよりもカーディガン、女性ならズボンよりスカートのような着脱しやすい服装がよい。また、カルテや書類など、なにかと荷物が増えるので、自分の物は一つにまとめられるように大きめのカバンにしておくと動きやすくなる。もちろん、ピアスなどの装飾品は少なめにして、外せるように準備し、顔色をわからなくしてしまうような化粧も避けた方が無難だという。

(3)プラスを見つける意識を持とう

 一番重要なのは、病気になったことをいかにしてプラスに捉えられるかという意識だという。病気になったことはマイナスである。しかし、そこからそれを超えるようなプラスを見いだすような前向きな意識を持つことが大切だと、治せる見込みのないがんを患っているにもかかわらず、のぶさんは力強く言う。

自分自身にとって「何が大切か」を考える

 ランチを食べ終えた頃、カフェは落ち着いてきた。のぶさんの仕事もひと段落したようだ。

 「何よりも、あなたが日々の生活の中で何を大切にしたいのかを、しっかりと考えてくださいね」

 のぶさんが私の隣でメモを真剣に見ている彼に告げた。

 「単に病気を治したい」ではなく、自分の人生で大切にしているものが何かを見つめ直すチャンス。それを踏まえて、治療方針を医師と相談してほしいという。半年ほど前に「要望書」を書いて医師に渡そうという話をのぶさんがしていたことを思い出した。

 「何を大切にしているかは、医師にはわかりません。それをあなたがしっかりと伝えることで、提案される治療方針が変わるかもしれないですよ」

 彼の中で何かの考えがまとまったようだ。検査は来週だという。納得のいく治療になることを期待している。

(鈴木信行 患医ねっと代表)

 下町と言われる街の裏路地に、昭和と令和がうまく調和した落ち着く小さなカフェ。そこは、コーヒーを片手に、 身体(からだ) を自分でメンテナンスする工夫やアイデアが得られる空間らしい。カフェの近所の会社に勤める49歳男性の私は、仕事の合間に立ち寄っては、オーナーの話に耳を傾けるのが、楽しみの一つになっている。

(※ このカフェは架空のものです)

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鈴木信行(すずき・のぶゆき)

患医ねっと代表。1969年、神奈川県生まれ。生まれつき二分脊椎の障害があり、20歳で精巣がんを発症、24歳で再発(寛解)。46歳の時には甲状腺がんを発症した。第一製薬(現・第一三共)の研究所に13年間勤務した後、退職。2011年に患医ねっとを設立し、より良い医療の実現を目指して患者と医療者をつなぐ活動に取り組んでいる。著書に「医者・病院・薬局 失敗しない選び方・考え方」(さくら舎)など。


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