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田村専門委員の「まるごと医療」

医療・健康・介護のコラム

教員が感染した大学の付属高生徒に「コロナ」 言われなき差別、偏見

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最前線の医療機関や医師らに対しても

教員が感染した大学の付属高生徒に「コロナ」 言われなき差別、偏見

 制服を着た高校生に向かって通りがかりの人が「コロナ」と叫んだり、運営法人の職員が子どもの保育を断られたり。教員の新型コロナウイルス感染がわかった郡山女子大学(福島県郡山市)で、嫌がらせが相次いでいると、読売新聞の福島県版(3月27日)が伝えている。記事によると、大学に100件以上の言いがかりや嫌がらせの電話があったほか、付属高の生徒にも嫌がらせの行為が数十件あったという。誹謗(ひぼう)中傷に悩む大学側が26日、記者会見して明らかにした。

 差別、偏見の目は、新型コロナウイルスの対応に当たっている医療機関や医療関係者にも向けられている。日本災害医学会は2月22日、医療関係者への不当な批判に対する声明を発表。チャーター便やクルーズ船の乗客らの対応に当たった医師らが、「職場において『バイ菌』扱いされるなどのいじめ行為や、子供の保育園・幼稚園から登園自粛を求められる」など、「信じがたい不当な扱いを受けた」として、抗議するとともに改善を訴えた。日頃の取材を通じても、同様の話はたびたび耳にする。感染の広がり、患者数の増加につれて、いじめや差別も広がっているとすれば、何をかいわんやだ。

繰り返される感染症への偏見

 福島の女子高生への嫌がらせのニュースを聞いて、真っ先に思い出したのは、新型インフルエンザが流行した2009年の騒動だ。あの時も、感染がわかった生徒や学校をあげつらう誹謗中傷がインターネット上などで広がり、社会問題になった。

 感染症をめぐる差別、偏見問題では、HIV(エイズウイルス)感染を理由に採用内定を取り消された裁判について、このコラムでも半年前に取り上げたばかりだ。HIVに感染しても、今では、きちんと治療を受けていれば普通に生活ができるし、パートナーへ感染させることもない。それにもかかわらず、HIVに対する差別や偏見は一向になくならない。

 エイズ患者が初めて報告された1980年代、治療薬もなく「死の病」として恐れられた。だが、それから40年近くたち、薬物治療は飛躍的に進歩し、適切な治療を受ければ、もはやエイズで死ぬ時代ではなくなった。

 そして、治療薬が開発されてエイズが「治る病気」になることで、偏見や差別もなくなってほしいとの願いもあった。だが残念ながら、エイズが治る病気になっても、偏見や差別は依然、強い。治療薬がなかった時代に比べて、問題の根はより深い。

だれもが感染者、濃厚接触者になりうる

 HIVをめぐっては、2020年に東京五輪・パラリンピックが開かれるのを機に、都市部におけるHIV・性感染症対策の充実を図ろうとの取り組みも進められている。くしくも新型コロナウイルスのために五輪・パラリンピック開催は1年延期になってしまったものの、取り組みの重要性には変わりない。

 国の新型コロナウイルス感染症対策専門家会議は3月19日に発表した提言において、「市民と事業者の皆様へ」として、まず、感染防止のために「換気の悪い密閉空間」「多くの人が密集」「近距離での会話や発声」という三つの条件が重なる場所を避けるよう求めた。

 そして、続いて訴えているのが、偏見、差別問題だ。提言は、「感染者、濃厚接触者とその家族、この感染症の対策や治療にあたる医療従事者とその家族に対する偏見や差別につながるような行為は、断じて許されません」と述べた。そのうえで、だれもが感染者、濃厚接触者になりうる状況であること、また報道に対しても個人情報保護と公衆衛生対策の観点から特段の配慮を求めること、医療従事者が差別されることのないよう、市民に高い意識を持つことを求めた。

 ウイルスとの闘いは、差別、偏見との闘いでもある。新型コロナウイルス感染症の克服に向かって進むとともに、差別、偏見の克服も成し遂げる必要がある。(田村良彦 読売新聞専門委員)

<注目記事>
クルーズ船で活動の医師らを「バイ菌扱い」、悲鳴に近い悲しい報告
死の病ではなくなったエイズ 差別・偏見の解消へ「性の多様性受け入れる社会を」

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田村 良彦(たむら・よしひこ)

 読売新聞東京本社メディア局専門委員。1986年早稲田大学政治経済学部卒、同年読売新聞東京本社入社。97年から編集局医療情報室(現・医療部)で連載「医療ルネサンス」「病院の実力」などを担当。西部本社社会部次長兼編集委員、東京本社編集委員(医療部)などを経て2019年6月から現職。

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2件 のコメント

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人間が暴走するのは心と体の余裕を失った時

寺田次郎 関西医大放射線科不名誉享受

大阪の府立高校で休校延長が決まりました。 大英断だと思います。 生きていて健康であれば、勉強はできるし、理解の遅れを取り戻すこともできます。 定...

大阪の府立高校で休校延長が決まりました。
大英断だと思います。
生きていて健康であれば、勉強はできるし、理解の遅れを取り戻すこともできます。
定期的に手入れしていれば、自習の方が効率の良い学生もいるでしょう。

30歳まで第2新卒と言われる時代です。
自分は30歳の大学院単位取得中退までノンストップでしたが、人それぞれに生き方や巡りあわせがあります。
受験科目以外も含めて、勉強していけばいいわけです。

また、そういう状況を守る、家庭や社会の安定がもっと大事です。
個人や家庭への給付の方法を巡って色々やっていますが、子供食堂のような理念があれば、ほんの少しの工夫で何とかなりますよね。

直接的に殺し合いをする戦争が始まったわけではなく、料理の材料がなくなったわけではなく、材料の材料の所にも問題ない所は沢山あって、日本社会においてフードロスの問題は多々あって、日本の保存技術は優れています。
感染の確率を下げる、隔離政策との両立も衆知を持って取り組めばいいでしょう。
お腹が満たされれば、無料に近い状況で勉強する手段も沢山あります。

衣食足りて礼節を知るわけで、暴言や暴走を助長する原因を減らしていけばいいのではないかと思います。

日々を楽しく生きる方法や自炊、自習の工夫なども、非常時におけるマスコミの存在意義ですから募集してもらえればと思います。
反戦を訴えたり、戦争の恐怖を伝えるだけが反戦活動ではなく、日々の充実の意味や作り方もまた反戦活動です。
戦争なんかたいがい差別意識の先の民族主義の暴走ですからね。

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喧伝と扇動の違いの元にある理性と感情

寺田次郎 六甲学院放射線科不名誉享受

最近読んだ本で、喧伝と扇動の違いが触れられていました。 精緻な理屈で少数の人間を納得させて行動させる方法と、エモーショナルな言動や行動でより多く...

最近読んだ本で、喧伝と扇動の違いが触れられていました。
精緻な理屈で少数の人間を納得させて行動させる方法と、エモーショナルな言動や行動でより多くの人間を行動させる方法は違う、ということです。
後者の方、短期的な利害や感情的な側面の影響力は本文の話に繋がります。

差別と区別の違いが分からないのは、心身の余裕がないからなのか、情報が足りないからなのか、わかりませんが、一方で、自分たちのエゴ=自己愛や防衛本能の中に差別する意思が潜んでいることに確信犯であることが一番大事なのではないかと思います。
情報の幅と理解や感情の幅を理解して、その状況下でも節度を持って行動するということが現実的な「差別をしない」ということだと思います。

新型コロナの件で言えば、初期のもっと情報がない中で、パニックになって、感染者やその家族の隔離を求めてしまった感情を理解するとともに、不必要な暴言は不要であることの提示が大事です。
また、誰でも感染者になりうることや、現場でリスクを伴う診療行為や診療補助をする人間に敵意を向ければ、自分だけでなく家族や知人が検査や治療を受けるにあたっていいことはないという理解も大事です。
言い換えれば、子供のケンカと同じで、失敗の中から、適切な距離感や関係性の築き方、TPOを学んでいくのも大事なのではないかと思います。
エスカレートしうる自分や集団と付き合っていく。

ある意味で、日本の礼儀正しい=仮面をかぶった社会の中で、距離感や関係性の使い分けが下手になっている部分はあると思います。
もっと言えば、病気そのものだけでなく、科学や人間の不完全性の理解と行動の修正が大事だということです。

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