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中川恵一「がんの話をしよう」

医療・健康・介護のコラム

若い人に多い「家族性のがん」 乳房、前立腺…欧米では発症前の切除も

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若年性前立腺がん、男性乳がんのリスクも

 BRCA1のようながん抑制遺伝子は、細胞のがん化を防ぐ働きを持ちます。家族性腫瘍の患者さんでは、両親から一つずつ受け取ったがん抑制遺伝子のうち、片方に生まれつき異常があるのです。

 ジョリーさんの場合、母親も若くして卵巣がんと乳がんを発症していますから、母方の家系から異常なBRCA1遺伝子を受け継いだと思われます。なお、彼女には、パートナーだったブラッド・ピットさん(現在は離婚)との間に3人の実子がいますが、異常なBRCA1遺伝子は、この子供たちにも50%の確率で遺伝することになります。男性に変異型のBRCA1遺伝子が受け継がれると、若年性前立腺がんや男性乳がんを発症しやすくなるため、欧米では、予防的な前立腺全摘まで行われています。

前輪のブレーキが壊れた自転車

 がん抑制遺伝子の一方が生まれつき働かなくなっていると、残るもう一方の遺伝子に傷がつくだけでがんが発生しやすくなります。これは、前輪のブレーキが最初から壊れている自転車で、坂道を下っているようなものです。後輪のブレーキが利いているうちは、一見、何の問題もないように見えますが、もし、後輪のブレーキも壊れれば大けがにつながります。両方のブレーキが壊れるまでには時間がかかりますが、ジョリーさんのように、どちらかがもともと壊れているケースでは、発症までの時間が短くなります。家族性腫瘍が若い人に多いのはこのためです。

 ただし、最初にお話ししたように、遺伝はがんの原因の5%程度ですから、家族性腫瘍はあくまで例外的。一般的には、生活習慣の方がずっと大事です。がんで死なないためには、生活習慣と早期発見のためのがん検診が何より大切です。(中川恵一 放射線科医)

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中川 恵一(なかがわ・けいいち)

 東京大学医学部附属病院放射線科准教授、放射線治療部門長。
 1985年、東京大学医学部医学科卒業後、同学部放射線医学教室入局。スイスPaul Sherrer Instituteへ客員研究員として留学後、社会保険中央総合病院(当時)放射線科、東京大学医学部放射線医学教室助手、専任講師を経て、現職。2003~14年、同医学部附属病院緩和ケア診療部長を兼任。患者・一般向けの啓発活動も行い、福島第一原発の事故後は、飯舘村など福島支援も行っている。

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