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中川恵一「がんの話をしよう」

医療・健康・介護のコラム

若い人に多い「家族性のがん」 乳房、前立腺…欧米では発症前の切除も

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 がんにまつわる誤解はたくさんあります。「遺伝病」というイメージもその一つです。「がん家系だから心配」などと言う人もいますが、がんの原因のうち遺伝が占める割合は5%程度にすぎません。

アンジェリーナ・ジョリーさんの予防的切除

 現在、日本人男性の3人に2人、女性でも2人に1人が、生涯に何らかのがんに 罹患(りかん) します。「うちは父も母もがんになった」などというと、「がん家系」という印象を与えますが、両親ともがんになる格率は2/3×1/2=1/3ですから、決して珍しくはないわけです。

 がんは遺伝子が傷ついてできる病気ですが、基本的には、遺伝する病気ではないのです。ただし、わずかに遺伝性のがんも存在し、「家族性腫瘍」と呼ばれます。

 2013年5月、ハリウッド女優のアンジェリーナ・ジョリーさん(当時37歳)が、家族性腫瘍の予防のために左右の乳腺組織を切除したと発表しました。彼女は実際に乳がんを発症したわけではありません。BRCA1と呼ばれる「がん抑制遺伝子」に生まれつき異常があることが分かったため、健康な乳腺組織を予防的にかき出してシリコンに置き換えたのです。

 さらに、乳腺切除から2年後の15年3月には、卵巣と卵管の予防的な切除を公表しました。

 彼女のようにBRCA1に変異がある場合、発がんリスクは非常に高くなり、特に乳がんと卵巣がんの発生確率は、それぞれ約65%、40%に上ります。このため、予防的な乳腺、卵巣の摘出を決めたわけです。

 BRCA1の異常は、血液検査で簡単に分かります。すべての遺伝子は父母から一つずつ受け取りますが、彼女の場合、母親からのBRCA1に異常があったと考えられます。異常なBRCA1遺伝子を持った卵子と正常な精子が合体した受精卵から、彼女のすべての細胞は作られましたから、血液の細胞を採るだけでBRCA1の異常が分かるのです。

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中川 恵一(なかがわ・けいいち)

 東京大学医学部附属病院放射線科准教授、放射線治療部門長。
 1985年、東京大学医学部医学科卒業後、同学部放射線医学教室入局。スイスPaul Sherrer Instituteへ客員研究員として留学後、社会保険中央総合病院(当時)放射線科、東京大学医学部放射線医学教室助手、専任講師を経て、現職。2003~14年、同医学部附属病院緩和ケア診療部長を兼任。患者・一般向けの啓発活動も行い、福島第一原発の事故後は、飯舘村など福島支援も行っている。

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