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ペットと暮らせる特養から 若山三千彦 

医療・健康・介護のコラム

介護施設は厳戒 面会禁止、外出行事中止…でも犬の散歩だけは継続

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マスク不足深刻

 職員にはマスク着用も義務付けていますが、うちのホームでもマスク不足は深刻です。2月7日段階で、3層マスクの在庫は5000枚でした。

 なお、3層マスクとは、その名の通り3層構造になっている使い捨てマスクで、インフルエンザウイルスの防止効果が高いとされています。うちのホームでは、インフルエンザが流行する11月~3月は3層マスクを使い、それ以外の時期は安価な2層マスクを使っています。ちなみに両方とも、通常の時期なら普通にお店で買えます。

 うちのホームでは、インフルエンザの流行が爆発的になった場合に備えて、常にマスクは多めに在庫を持つように備えていたので、3層マスクが5000枚あったのは幸いでした。しかし、冬の時期のマスクの使用量は1か月3000枚ですので、5000枚のマスクも1か月半程度で在庫はなくなってしまいます。3月16日段階で、残りが1200枚となったため、3層マスクの職員配布を停止しました。そして、2000枚の在庫がある2層マスクに切り替えました。というのは、万が一、新型コロナウイルスの感染が起きた場合、3層マスクが必要になるからです。いえ、それだけではありません。新型コロナウイルスの影に隠れていますが、インフルエンザやノロウイルスの感染も恐ろしいのです。その時に備えて3層マスクをとっておきたいのです。

職員の多くが自分の布マスク 自家製も

 2層マスクに切り替えると同時に、職員にはマイマスクの使用をお願いしました。その結果、大勢の職員が自分の布マスクをしています。自家製マスクの職員も多いです。中には、周りの職員に頼まれて、たくさん布マスクを作っている、マスク職人のようになっているスタッフもいます。職員たちの協力と頑張りには本当に感謝するしかありません。

 介護の現場では使い捨てのゴム手袋も大量に消費します。これも入手が困難になっています。やはり、在庫をいざという時のためにとっておくため、現在はビニール製の使い捨て手袋に切り替えています。

 幸いなことに、消毒用アルコールは何とかなっています。一定量の在庫があったのに加え、細々とですが業者が納品を続けてくれています。高齢者用オムツや、トイレットペーパー、ティッシュ、ペーパータオルなども、流通の混乱で納品が遅れたりしていますが、業者と相談しながら早め早めに手を打つことにより、足りなくなってご入居者様にご迷惑をかける事態は何とか避けています。

入居者を元気づける企画に力

 毎日大勢いらしていたご家族様がいらっしゃらなくなり、ボランティアの公演等のイベントが行われず、外出行事にも行けず、業者の出入りすらなく、ホーム内はゴーストタウンのように静まり返っています。ご入居者様の上にも、新型コロナウイルスという見えない恐怖によるプレッシャーがのしかかっており、皆さんストレスを感じています。

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 そこで、介護職員達はユニットの中でのイベントやレクリエーションに力を入れています。ある若手職員は、ホットプレートで作るチーズタッカルビを囲むというイベントを企画しました(写真上)。別の若手職員は、たこ焼きパーティーを企画しました(写真下)。年配の職員は、切り絵、貼り絵という介護施設の得意技を生かし、ユニットのご入居者様全員で巨大な貼り絵作りに挑戦しています。ストレスがたまり、落ち込んでいるご入居者様を元気づけ、心身を活性化することも、新型コロナウイルスとの闘いの一つです。

 私たちが行っている新型コロナウィルス対策は、ほぼすべての特別養護老人ホームが行っているものです。元から体が弱っており、様々な疾患を抱えている特別養護老人ホームのご入居者様にとって、新型コロナウィルスは命とりになります。ですから、介護職員は大変なプレッシャーを感じています。しかも、発熱のため出勤できない職員がいる分、過重勤務になっています。休日の夜、夜勤の職員が発熱のため、出勤できないと連絡が入り、急きょ出勤するというようなこともあります。それでも職員たちは頑張ってくれています。今、全国のすべての介護施設の職員たちは、ご高齢者様の命を守るため、必死に闘っているのです。(若山三千彦 特別養護老人ホーム「さくらの里山科」施設長)

 (補足)横須賀で複数の感染が発表されたのを受け、今日(3月30日)からお散歩ボランティアも受け入れをやめました。何とか職員だけで頑張って散歩を続ける予定です。私も散歩に出ます。

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若山 三千彦(わかやま・みちひこ)

 社会福祉法人「心の会」理事長、特別養護老人ホーム「さくらの里 山科」(神奈川県横須賀市)施設長

 1965年、神奈川県生まれ。横浜国立大教育学部卒。筑波大学大学院修了。世界で初めてクローンマウスを実現した実弟・若山照彦を描いたノンフィクション「リアル・クローン」(2000年、小学館)で第6回小学館ノンフィクション大賞・優秀賞を受賞。学校教員を退職後、社会福祉法人「心の会」創立。2012年に設立した「さくらの里 山科」は日本で唯一、ペットの犬や猫と暮らせる特別養護老人ホームとして全国から注目されている。20年6月、著書「看取みといぬ文福ぶんぷく 人の命に寄り添う奇跡のペット物語」(宝島社、1300円税別)が出版された。

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