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【特別編】高知東生氏 ドラッグで逮捕され、死も考えた――。

シリーズ「依存症ニッポン」

高知東生氏 4年目の覚悟と決意(下) 薬物使用の頻度が高まるたびに「ヤバいな」と

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逮捕されて「来るべき時が来た」と

――そして結局、逮捕になりました。女性と一緒にいたホテルにマトリ(麻薬取締官)が入ってきたとき、どう思ったのですか?

 「ああ、俺は終わった」と。同時に、「来るべき時が来た」という思いもありました。

 ただ、マトリが来た瞬間は、大麻が効きすぎてぐっすり寝込んでいましたから、「これは、ドッキリか?」とも考えました。もちろん、すぐに「この状況でドッキリはあり得ない」と理解しましたが。

 一方で、これで(薬を)やめられると、ホッとした部分もあるんです。

――え、そんなことも考えたのですか?

 本当にそう思いました。だから、すでに報道もされましたが、マトリの方に「逮捕してくれて、ありがとうございました」と言ったのは本当です。

――薬をやめられる代償とはいえ、家族やキャリアを失うことになる。「ありがとう」なんて言葉になるのは不思議です。

 当時、女房に対して、ウソを重ねて薬物を使っていたのがつらかったんですね。

――執行猶予付きの判決が出るまでは何を考えていたのですか?

 自分ができること、しなくちゃいけないことは何かを考えていました。

 僕が「終わった」ことは仕方ない。だけど、当時、元の奥さんにはドラマもCMもあった。最低の男なりに、彼女のために何をすべきなのか考えました。それで弁護士にお願いして、すぐに離婚の手続きに入りました。

――奥さんを守りたい、と。

 そんなかっこいいものではありません。傷つけただけでなく、彼女が築き上げてきた人生を、僕が壊してしまう。せめて、それに対して、自分なりに何ができるかばかりを考えました。

――自身への後悔、反省は?

 もちろんありました。

――それは「ばれちゃったから反省」したのですか? 厳しい言い方ですが、ばれて大変なことになったから、「反省しているふり」をする人もいると思います。

 いや、心底反省しました。やっぱり、元奥さんががんばってきたことを自分がぶち壊すことになる。それは心の底から反省しましたよ。

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今、立派なことを言ってもきれいごとにしか……

――その後、依存症問題に取り組むことになった。今は、どんな思いで?

 本当は、自分のことを話すのは嫌でした。世間から「こう見られているだろう」との思いに縛られてもいた。でも、「考える会」の田中紀子さんと出会い、自助グループでも同じ経験をした人たちとつながることができた。ようやく「ああ、俺は一人じゃないんだ」と感じることができたんです。そこでは、僕より厳しい状況の人もいたし、もっとひどい罪を犯した人にも出会いました。

 でも、みんな、必死に自分に向き合って、お互いを語ることで分かち合っています。やがて、僕も自分がやったこと、感じたことなどをありのままに話せるようになっていきました。

――繰り返しになりますが、罪が暴かれたとき、反省するふりをする人はすごく多い。少しでも罪を軽くしようと思ったり、その場を取り繕ったりするために。実は、高知さんが依存症問題に取り組んでいるのは、贖罪の意味もあるのだろうけど、イメージ戦略もあるのではないかと半信半疑です。

 (大きくうなずいて)うんうん。今、立派なことを言っても、きれいごとに聞こえるだろうし、そう受け止められることはわかります。本当に最低の人間でしたから。

 だけど、本心から、「今日という日」に感謝しているんです。生き直しをしている最中であり、毎日、自分に向き合っています。もしかしたら、こんな自分の経験が人の役に立つかもしれない。これからの自分がどうなるか、楽しみで仕方ない。これは本当です。

――薬物に溺れたことや、元奥さん、それに周囲に迷惑をかけたことに対しては「バカ野郎!」と言いたい。だけど、キレイごとを抜きにすれば、「お金がほしい」「女性にもてたい」「いい生活をしたい」なんて、若い男ならだれもが考えることです。そこから、現実にぶつかり、それを乗り越えたり、はね返されたりしながら、折り合いをつけ、身の丈にあった着地点を探していきます。

 やっぱり、上京した当初から、僕自身、ズレていたんだと思います。ずっと、かっこいいと思っていたのは、やんちゃで破天荒なタイプでした。自分でもそうなりたいと考えてきた。

――1970年代、80年代の東京には、そんな空気もあったかもしれません。高知さんは、現実社会のルールやモラルから外れてしまったことが問題だった。

 ある売れっ子先輩芸能人と飲んでいるとき、「いい酒を飲んで、きれいな女の子とも遊んでいられるけど、自分の芸名がなかったら何もないんだよな。寂しいことだよ」と言われたことがあります。なぜ、僕はそれに気づかなかったんだろうと思います。

――顔も名前も、それに逮捕された事実も知られている。これからが大切だし、大変だとも思います。今後は、中期、長期の目標がなければ、なかなか生きていけないとも思いますが。

 そうですね。だけど、すでにほんの1年前には、「もう生きていけない」と考えていた人間が、いろいろな人とつながることで、今、こうして話せるようになった。

 あとは、自分が回復して、きちんとした生き方をするストーリーを実証することです。それが僕にとっての目標になる。

 僕は依存症啓発の活動家ではありません。死ぬことを考えた人間が、ほかの人への啓発のお手伝いをさせてもらいながら、正直な自分の話をみなさんに伝えていく。そこから、苦しんでいる人たちが何かを感じてもらえればと考えています。

 一方で、「人の役に立とう」とばかりを考えていると、それが新しいストレスになってしまうかもしれない。だからこそ、まずは自分のため。自分がしっかりと生き直していくことが大切だと思っているんです。

高知東生氏

たかち・のぼる
 1964年、高知県生まれ。3月31日に動画サイトYouTubeで公開されるドラマ「みーんな知らない 依存症」に、俳優として5年ぶりに出演した。

 

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染谷 一(そめや・はじめ)

読売新聞東京本社メディア局専門委員
 1988年読売新聞社入社、出版局、医療情報部、文化部、調査研究本部主任研究員、医療ネットワーク事務局専門委員などを経て、2019年6月から現職。

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2件 のコメント

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心からエールを送ります

なおちん

人間は間違いを犯します。大なり小なり少なからず通る道です。明るみに出るか出ないかだけです。高知さんの言葉は自らの言葉で、私には真っ直ぐ届きました...

人間は間違いを犯します。大なり小なり少なからず通る道です。明るみに出るか出ないかだけです。高知さんの言葉は自らの言葉で、私には真っ直ぐ届きました。反省ってカタチのないものです。どうするのが正解なのか、答えが見つからなくて、もがいている。高知さんの言葉に共感して、高知さんの言葉に沿って立ち上がれるような感じがして、救われた気持ちです。素直に正直にシンプルになろうと思います。

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応援してます。

ぐり

 自分は2度のうつの経験があり、2回目の時に、根本的に生き方を変えなければまた繰り返すと観念して、カウンセリングを受け、ネットや本などいろいろな...

 自分は2度のうつの経験があり、2回目の時に、根本的に生き方を変えなければまた繰り返すと観念して、カウンセリングを受け、ネットや本などいろいろな情報を探しました。高知さんのことは、松本俊彦先生つながりで知りました。

 うつ病者も、自傷行為者も、依存症者も、「援助希求が下手」という共通点があるとしみじみ思います。追い込まれ方が下手というか。
 自分が薬物依存にならなかったのは、たまたま自分の通り道にそれがなかったから。つまり、運だけだなと。そのくらい、「あ~それわかるわかる」って、「私もおんなじだ~」って、思います。
 だから、高知さんと田中さんの動画は全部見たし、インタビューも見つけたら必ず読んでます。本当に、共感できるし、励みになるし、勉強になります。
(そういう立場なので、染谷さんの質問には、うわ、きびしいな~と感じるものがたくさんありました。)

 これからも多分、高知さんの記事は見つけたら全部読みます。それからもちろん、俳優としての姿も見てみたいです。楽しみにしています。

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