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マスク誤用は御用! 「鼻出し」「顎かけ」「手洗いせず」は資源の浪費だ

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飛沫は阻止するが…

 せきやくしゃみで飛び散る飛沫には、大量の病原体が含まれうる。1メートル程はそのまま飛散するが、水分を含んで重いため、大半は床や机上、あるいは着衣などに落下する。一部は水分を失い、軽く小さなエアゾール化して浮遊するが、地面に近く量もわずかだ。マスクは大きな飛沫なら捕らえるため、感染者に市販のマスクをしてもらうと、周囲に感染を与える割合を5分の1から3分の1に低下させられるが、ゼロにはできない。知っておいていただきたいのは、「マスクには飛沫のやり取りを阻止する効果はあるが、ウイルスそのものは通過させる」ことである。

微細なウイルスは容易に通過する

 ウイルスは、顔面や頭髪、着衣に付着したり、舞い上がったりしながら、目、鼻、口の粘膜から体内に入る。

 空気を吸いこむ鼻と口は、大量の病原体が通る場所だ。人々がマスクをするのは、その病原体を遮断するためなのだが、この時、普段の息の9割以上が往来する「鼻」を出したままでは意味がない。息を吸いやすいように隙間を作ったりすれば、自分もだが、周囲への感染拡大を防ぐ効果もない。

 また、市販のマスクの大半は、花粉やほこり(20~50マイクロ・メートル以上)、PM2.5(2.5マイクロ・メートル)を吸わないためには有効だが、微細なウイルス(0.1マイクロ・メートル)は容易に通過し、感染防止効果はない。ウイルスを通過させない医療用のマスクもあるが、息苦しく日常使用には適さない。

 市販マスクも正しく着ければ、 喀痰(かくたん) や唾液の飛散を防ぎ、人混みの中でお互いに直接、飛沫を交換し合わないようにする多少の利点はあるかもしれない。しかし、顔やマスクを手で触れたり、マスクを過信して手指の衛生を怠ったりすれば帳消しだ。

マスクがあるばかりに触る頻度が増えて

 さらに問題なのは、マスクがあるばかりに、顔に触る頻度が増えることだ。終日、無意識に何百回とウイルスにまみれたマスクや顔、髪の毛、着衣に手を触れ、その手で手すりや机、スマホやマイクなどに触り、また口や鼻に触ることを繰りかえす。また、冒頭で述べたように、マスクを手でずらして,鼻出しマスクにしたり、一時的に顎や首にかけたり、あるいはポケットに出し入れしたりすれば、わざわざ感染を広めているようなものだ。マスクや顔に触れたら、その都度、手指の衛生に努めてほしい。

 新型コロナウイルスに関しては、吐物や便を介した感染も無視できないとされ、その意味でも手指の衛生が重要だ。目の粘膜からのウイルス侵入を防ぐためにゴーグルを使う場合も、前後の手洗いは必須。アルコール消毒薬でなくとも、石けんと流水で十分だ。

 一般市民のマスク使用が感染予防に著しい効果があると明確に示した研究は、世界的にもほとんどない。使わない方がよい可能性があることも、あまり知られていない。

 感染を防ぐ以外の目的で、マスクを使う人もいる。快適さや安心感、そして感染への意識付けや警告効果まで否定するつもりはない。しかし、正しく着け、顔やマスクに触れず、着脱前後には手指の衛生に努めなければ、むしろ害であり、資源の浪費とさえ思える。

宮坂 勝之(みやさか・かつゆき)

宮坂 勝之(みやさか・かつゆき)
 医師、聖路加国際大学大学院名誉教授
 1944年 長野県生まれ。信州大学医学部卒業後、国立小児病院麻酔科、フィラデルフィア小児病院、トロント小児病院集中治療部員、国立成育医療センター手術・集中治療部長、長野県立こども病院院長、聖路加国際病院周術期センター長などを経て、2018年から現職。

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