がん患者団体のリレー活動報告
医療・健康・介護のコラム
GBCSS(がん研有明病院訪問ボランティア)
私たち「GBCSS(Ganken Breast Center Support Service:がん研有明病院訪問ボランティア)」は、乳がんを体験したメンバーが、東京のがん研有明病院入院病棟で、手術直後の乳がん患者さんと1対1で面談をするボランティアです。ピアサポート(同じような立場の人によるサポート)の一環ですが、孤独を感じがちな患者に「あなたは一人ではありませんよ」ということを伝えたいと思っています。
入院病棟で患者さんと1対1で面談
面談は1回あたり30~40分。1対1で、その日、初めてお目にかかった患者さんの話を聞きます。病気そのものに対する不安、退院後の生活、子どもへの病気の伝え方、仕事への復帰の仕方、病気を誰にどこまでオープンにすればいいかなど、患者さんによって話す内容は様々です。中には、座った途端、涙があふれ出す方もいます。
GBCSSのメンバーは乳がん経験者で、一定の研修を受け、参加が可能と判断された人です。研修で、この活動に流れる理念を学び、患者さんを想定してのロールプレイを重ね、“技”と“心”を身につけていきます。
私たちに与えられた“任務”は、患者さんの気持ちに寄り添うこと。医療者ではありませんので、たとえ知っていても医療的なアドバイスはしないと決めています。また、がんになった体験が生きるボランティアですが、自分の体験は一つの事例にすぎず目の前の患者さんとは違うという意識を持つことも必要です。
シンプルな活動なのですが、思ったよりもハードルが高いです。しかし、現在多くを占める今年9年目を迎えたメンバーは、家庭や健康上の理由で辞めざるを得なかった人をのぞき、ほぼ全員が活動を継続しています。ゴールがないからこそやりがいもあり、仲間意識も強くなり、この活動に対する愛情が深くなるのかもしれません。
支えは、患者さんからの言葉
やってみると、私たちが患者さんをサポートしているだけではなく、反対に患者さんからいただくものも多いと気づくようになります。
面談の際、感想をいただくために患者さんにはがきをお渡しするのですが、3分の2ほどの方が返信してくださいます。「同じ病気をした人にしかわからない話を聞いていただけてよかった」「ネットや本では得られない生の声が聞けた」「これからどうなるか不安でいっぱいだったが、元気に明るく生きている姿を見て勇気がわいた」など、そこには私たちと過ごした時間が肯定的な言葉でつづられていました。
面談を始めるときには硬い表情だった患者さんが、終了する頃には笑顔を見せてくださることも多く、はがきの感想とともに、やって良かったと思える瞬間です。
少しずつ病棟以外でも活動
活動範囲はこれまで病棟内に限られてきましたが、最近は新たな領域も増えてきました。
日本乳 癌 学会が2016年に東京で開かれた際、乳がん体験者と話すコーナーを主催しました。翌17年からは乳がんに関わる医師や看護師らが主催するイベント「With You Tokyo」で、私たちボランティアの有志がグループワーク(患者さんがテーマごとに集まり語る)のファシリテーターを担当しています。18年からは、院内のがん相談支援センターからのお声かけで、年に数回、外来患者さんの話を聞く活動も始めています。
活動を始めて13年弱。幸いなことに大きなトラブルもなく続けてこられています。院内の医療者の方々の力添えも大きく、とても感謝しています。今後も、おごることなく、協力し合いながら、患者さんの心の荷物が軽くなるきっかけになり続けられたらと思っています。
GBCSS
手術直後の乳がん患者さんと1対1で面談をするボランティアは元々、欧米で始まり、乳がん患者会のさきがけ的存在である「あけぼの会」が1994年に日本に取り入れ、がん研有明病院では2007年8月から活動を始めた。
面談は毎週火曜午後、木曜午後、土曜午前に各2枠(週に計6枠)実施している。病院内に常駐スペースはなく、1年単位でローテーションを組んだうえで、申し込みされた方がいる場合のみ、担当者が病院に出向く。外来での対応人数も含め、年間平均150人ほどの患者さんと面談している。
面談のほか、年1回の総会や、先生方から最新治療の話を聞く勉強会なども適宜開催。乳がんには様々なピアサポートの形があるが、病棟のなかで入院中の患者さんと面談する形態は全国的にも珍しい。母体を同じくする団体に、東京の聖路加国際病院の「SBCSS」もある。
このコーナーでは、公益財団法人 正力厚生会が助成してきたがん患者団体の活動を、リレー形式でお伝えします。
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