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認知症介護あるある~岡崎家の場合~

医療・健康・介護のコラム

「雰囲気」重視だけど、「近くて便利」も捨てがたい 理想の施設はどっち?…特養入所大作戦(4)

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第2希望は、立地ヨシ! しかも早く入れそうだけど…

 申込書の再提出で順位が大幅アップして、「次の入所」となった特養は、私の中では第2希望でした。私のマンションから自転車で10分ちょっとで、かかりつけ病院が、歩ける距離にあります。隣に小学校、少し歩けばショッピングモールという、活気に満ちた地域です。

 デメリットとして、これは個人的な感覚ですが、新しくてきれいな施設なのに、シックな色の壁や床のせいか、少し暗い印象だったのと、認知症の進んだ方が多いためか、リビングは常にシーンとしていました。

 加えて、母さんは「女性の入居者が見るからに多い」というのが、ひっかかっていた様子。父さんの浮気を心配して……などというわけではなく、家で暮らしていた時は、「ショートステイは、ばーさんばかりでつまんない」というのが父さんの口癖だったので、「あそこは、建物は古かったけど、男性が多くてよかった」と、別の特養が第2希望だったようです。

夫の言葉に目からウロコ

 どの施設にいつ入れるかわからなかった時は、「早く決まってほしい」ということばかりを願っていたのに、いざ決まると「本当にそこでいいのか?」と、悩んでしまう。人の心は勝手なものですが、父さんの終の 棲家(すみか) となる場所なので、最後まで慎重にならざるを得ません。

 見学に付きあってくれた夫のヒロさんにも意見を求めてみました。すると、「僕の目から見ても、息子のたー君を連れて気軽に面会に行ける距離なのはありがたい。それにショッピングモールまで、お父さんもつえをつけば歩いて行けるんじゃない? モールのファミレスで一緒にご飯を食べたいな」というのです。

 特養では、外出は原則として自由なのですが、なぜか私には「外食」という発想がなく、この提案は目からウロコ! 食べることが何よりも好きな父さんが、歓喜すること請け合いのこのアイデア、母さんにも伝えてみると、「それはいいわね!」と、ほっとしたような表情を浮かべていました(親子そろって、気付いていなかった……)。

 ウロコがぽろっと落ちた目で、利点と欠点をもう一度、整理し直してみると、第2希望だった特養の方が、むしろ利点が多いように思えてきました。

これからも迷うだろうけど…

 曲折を経て、やっとゴールが見えてきた感じですが、私にはもう一つ、気になっていることがありました。実は、母さんが倒れてからバタバタと老人ホーム探しが始まり、改めて父さんの希望を聞くこともなく、ここまできてしまったのです。家族なりに父さんのことを第一に考えて、入所する特養を決めさせてもらったものの、「父さんが家にいるうちから、どういう施設で暮らしたいか、いろいろと突っ込んで聞いておけばよかった」という後悔が残っています。

 入所後も、「この特養で良かったのかな」と、思うことがあるでしょう。そのたびに、迷い、悩み、周りの人にヒントをもらいながら想像力を働かせ(もちろん、父さんの希望も聞いて!)、解決策を見つけていくことも介護なのかもしれません。(岡崎杏里 ライター)

登場人物の紹介は こちら

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認知症介護あるある~岡崎家の場合~

岡崎杏里(おかざき・あんり)
 ライター、エッセイスト
 1975年生まれ。23歳で始まった認知症の父親の介護と、卵巣がんを患った母親の看病の日々をつづったエッセー&コミック『笑う介護。』(漫画・松本ぷりっつ、成美堂出版)や『みんなの認知症』(同)などの著書がある。2011年に結婚、13年に長男を出産。介護と育児の「ダブルケア」の毎日を送りながら、雑誌などで介護に関する記事の執筆を行う。岡崎家で日夜、生まれる面白エピソードを紹介するブログ「続・『笑う介護。』」も人気。

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日野あかね(ひの・あかね)
 漫画家
 北海道在住。2005年にステージ4の悪性リンパ腫と宣告された夫が、治療を受けて生還するまでを描いたコミックエッセー『のほほん亭主、がんになる。』(ぶんか社)を12年に出版。16年には、自宅で介護していた認知症の義母をみとった。現在は、レディースコミック『ほんとうに泣ける話』『家庭サスペンス』などでグルメ漫画を連載。看護師の資格を持ち、執筆の傍ら、グループホームで介護スタッフとして勤務している。

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