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医療・健康・介護のコラム

「健口」で健康(10)削らない治療へ転換

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 このシリーズでは、予防歯科学が専門の大阪大歯学部教授、天野敦雄さんに聞きます。(聞き手・佐々木栄)

「健口」で健康(10)削らない治療へ転換

 20世紀の歯科医たちは職人芸を競うように、正確に歯を削り、詰める、かぶせる技術を高め合ってきました。しかし2000年、国際歯科連盟は「歯を削ることで、かえって歯の寿命を縮めていたのでは」と疑義を呈し、「なるべく削らない治療」を提唱しました。

 歯科界のパラダイムシフト(枠組みの転換)が起きた背景には、治療材料の劇的な進歩があります。

 以前のむし歯治療で使われていた材料は接着力が弱く、むし歯の周囲も大きく削って埋め込む、または歯全体にかぶせる必要がありました。現在の詰め物は主に、樹脂かセメントで、いずれも接着力が強く、めったに外れません。色も歯とよく似ています。初期のむし歯なら削らずフッ素で再石灰化することもできます。

 「元に戻す」歯科医療も進歩しています。 口腔こうくう がんであごの骨や舌を切除しても、別の部位の骨や組織を使って元の状態に近づける再建手術ができます。今では歯並びの矯正も一般的です。

 歯周病で失った歯を支える骨を元に戻す治療も登場しました。可能にしたのは、大阪大歯学部が開発し、16年に発売された薬「リグロス」。歯ぐきを開き、骨にリグロスを塗ると骨が再生するという画期的な材料です。

 国際歯科連盟は患者教育の大切さも強調しています。「健口」を守り、取り戻すため、患者は手間暇を惜しんではなりません。令和は、最先端の技術と、むし歯や歯周病の原因を取り除く予防歯科の二本立てで臨む、そんな時代と言えそうです。

【略歴】
 天野 敦雄(あまの あつお)
 大阪大学歯学部教授。高知市出身。1984年、大阪大学歯学部卒業。ニューヨーク州立大学歯学部博士研究員、大阪大学歯学部付属病院講師などを経て、2000年、同大学教授。15年から今年3月まで歯学部長を務めた。専門は予防歯科学。市民向けの講演や執筆も多く、軽妙な語り口・文体が好評を得ている。

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