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山中龍宏「子どもを守る」

医療・健康・介護のコラム

祖母の貼付薬を擦り傷に貼った2歳児が…成人1回分の薬が命を奪うことも 日本も誤飲・誤使用防止の仕組みを

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 日本中毒情報センターの受信報告を品目別に見ると、子どもの誤飲で最も多いものは医薬品です。

祖母の貼付薬を擦り傷に貼った2歳児が…成人1回分の薬が命を奪うことも 日本も誤飲・誤使用防止の仕組みを

イラスト:高橋まや

 2歳7か月の男の子。午後3時過ぎ、「薬を飲んだ」と母親が慌てて連れてきた。下の写真の薬を飲んだとのこと。「これを全部飲んだ」と母親は言うが、ちょっと考えにくい。本人に「これ飲んだの?」と聞くと「うん」と言う。「これ、飲まなかったの?」と聞いても「うん」と言う。診察しても、心肺機能に異常はない。

祖母の貼付薬を擦り傷に貼った2歳児が…成人1回分の薬が命を奪うことも 日本も誤飲・誤使用防止の仕組みを

 母親は「中身を探したが、どこにもない。絶対に飲んだ」と言い張る。「全部を飲んで吸収されたなら、症状が出るかもしれない。飲んでから時間がたっていないので、これから症状が出るかもしれない」と考え、入院してもらうことにした。

 薬の血中濃度を調べるために血液や尿を採り、血中から早く排出するために点滴をつけた。午後8時ごろになって、母親がナースセンターにやって来た。「先生、薬がありました! お姉ちゃんのラッコのぬいぐるみに付いているチャックを開けたら、薬が全部出てきました」ということで、一件、落着。

1歳児に多い大人用医薬品の誤飲

 日本中毒情報センターの受信報告の年報をみると、ここ数年の0~5歳の薬についての問い合わせは、年間で医療用医薬品が5600件程度、一般用医薬品が2600件程度、合計で8200件程度となっています。これは、同じ年齢層の総受信件数のおよそ3分の1になります。6~12歳での薬の問い合わせは年間に570件くらいで、乳幼児で医薬品の誤飲が多発していることがわかります。発生する件数は、毎年そう変わりません。

祖母の貼付薬を擦り傷に貼った2歳児が…成人1回分の薬が命を奪うことも 日本も誤飲・誤使用防止の仕組みを

日本中毒情報センター グラフ

 受信するまでに、子どもに何らかの症状がみられたのは10%前後でした。薬の種類としては、中枢神経系用薬が多く、続いて外皮用薬、アレルギー用薬の順になっています。中枢神経系用薬の中で、最も多いものは解熱鎮痛薬です。これは、家庭での使用頻度が高いことによるものです。

 誤飲した薬の形状と子どもの発達段階には相関がみられます。体の表面に塗る 軟膏(なんこう) や外用液剤は0~2歳児に多く、錠剤やカプセル剤は1~2歳児、シロップ剤は2~3歳児に多くみられます。

 また、1歳では大人用の医薬品等の誤飲が多く、2歳になると子ども用医薬品等と同数近くになり、3歳以上では子ども用医薬品等の誤飲件数が多くなっています。

0歳児の3人に1人はボトルを開けられる

 誤って使用したケースでは、兄弟の薬の取り違え、用量・回数や間隔の誤り、重複投与、保護者への処方薬が子どもの処方薬と同じ形をしていた場合などがあります。

 誤飲の発生状況では、以下のケースが目立ちます。

  1. 子どもが自分で足場となるものを持ってきて、上って薬を取り、飲み込む
  2. 子どもの手がすぐに届く高さの場所(机の上、かばんの中など)に薬を置く
  3. 兄が使っていた薬を弟が飲む
  4. 甘い味がするシロップ剤を大量に飲む

 医薬品の包装容器には、袋、PTP(錠剤やカプセルを包装するシート)、チューブ、ボトルなどがあります。0歳児の3分の1はボトルを手で開けることができ、1歳児の半数はPTPの薬を取り出すことができます。

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山中 龍宏(やまなか・たつひろ)

 小児科医歴45年。1985年9月、プールの排水口に吸い込まれた中学2年女児を看取みとったことから事故予防に取り組み始めた。現在、緑園こどもクリニック(横浜市泉区)院長。NPO法人Safe Kids Japan理事長。産業技術総合研究所人工知能研究センター外来研究員、キッズデザイン賞副審査委員長、内閣府教育・保育施設等における重大事故防止策を考える有識者会議委員も務める。

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