第48回医療功労賞
イベント・フォーラム
[第48回医療功労賞]中央表彰者の10人(上)
地域で 海外で 命守る
地域の医療や福祉、難病患者や海外医療の支援に尽力した人を表彰する「第48回医療功労賞」(読売新聞社主催、厚生労働省、日本テレビ放送網後援、損保ジャパン日本興亜協賛)の中央表彰者10人が決まった。国内部門7人と海外部門3人の横顔を紹介する。(敬称略)
◇ 中央選考委員
永井良三 (自治医科大学長)
福島靖正 (国立保健医療科学院長)
五十嵐隆 (国立成育医療研究センター 理事長)
尾身 茂 (地域医療機能推進機構理事長)
石井則久 (国立療養所多磨全生園長)
小山眞理子(日本赤十字広島看護大学長)
鈴木俊彦 (厚生労働事務次官)
吉田 学 (厚生労働省医政局長)
宮嵜雅則 (厚生労働省健康局長)
笠井 聡 (SOMPOホールディングス執行役)
小杉善信 (日本テレビ放送網社長)
山口寿一 (読売新聞グループ本社社長)
福士千恵子(読売新聞東京本社事業局長)
(敬称略)
主催 読売新聞社
後援 厚生労働省
日本テレビ放送網
協賛 損保ジャパン日本興亜
〈海外部門〉
紛争、災害 子どもの心支える
桑山紀彦 57 医師
パレスチナ自治区などで活動を続けてきた。「心の傷と向き合う子どもの存在を知ってほしい」と語る。
精神科医として経験を積み、1994年、ノルウェーに留学。トラウマ(心的外傷)を抱えた人を支える心理社会的ケアを学んだ。主宰するNPO法人「地球のステージ」で2003年から、紛争が続くパレスチナ自治区で活動。外務省の資金援助で、今も年に2、3回赴き、現地スタッフと連携して年約240人の子どもの支援をしている。
心に傷を負った子どもは、記憶が抜けていたり、混乱していたりする。PTSD(心的外傷後ストレス障害)の状態にもなる。絵や工作、音楽などを通して自分の体験と向かい合い、体験を表現する手助けをしてきた。
11歳の女の子は粘土で赤い女性を作った。2歳の頃、爆撃で亡くなった母親だ。「血まみれで死んだ」と聞かされ、悪夢に苦しんでいた。徐々に母の死を語れるようになり、2年後、この女の子と一緒に映画「ふしぎな石~ガザの空」を制作した。魔法の石を集めて母親からのメッセージを受け取る話だ。
「心の深い傷は、時間がたっても、触れずにそっとしておいても治らない。憎しみだけが残る。つらい体験に向かい合い、自分の中に取り込むことで初めて前を向ける」。17歳になった女の子は、宇宙飛行士になる夢を持つまでに元気になった。
11年の東日本大震災では、NPOの拠点があった宮城県名取市のクリニックが被災した。救護活動をしながら、3か月後には同市 閖上 地区で活動を始め、55人の子どもたちが体験を絵や音楽で表現するのに寄り添った。
18年からは、南スーダン難民が押し寄せるウガンダ北部で活動を始めた。神奈川県海老名市のクリニックでは、不登校児らのケアにあたる。〈パレスチナ自治区〉
アジア・アフリカ 結核調査
小野崎郁史 61 世界保健機関(WHO)医務官
アジア・アフリカの25か国以上で結核の詳細な実態調査をした。世界の結核有病率の推計を上方修正し、この地域の患者発見のための援助活動が強化された。
2003年まで4年間、カンボジアで、対象集落の人全員にレントゲン検査を実施。従来の推測よりも感染者が多いことがわかった。調査は同国の結核対策の基礎になり、確実な服薬支援につながった。
07年からWHOに勤務。アジア・アフリカ各国の山間部やスラム地域などを調査した。16年からはミャンマーに拠点を移し、調査研究や診療に尽力している。〈ミャンマー〉
妊産婦死亡率低下に貢献
仲佐保 65 医師
国立国際医療研究センター職員の立場で、エチオピアなど8か国で延べ12年以上、医療支援をしてきた。調査などでの派遣も26か国計51回に上る。
タイのカンボジア難民キャンプで、地雷などで負傷した人の治療にあたった。ボリビアでは外科医の研修プログラムを構築した。ホンジュラスでは母子保健に関わる人材の育成や検査体制の整備などを行い、妊産婦死亡率の低下に貢献した。
2018年から国際協力機構(JICA)の一員として、コンゴ民主共和国でエボラ出血熱制圧活動をしている。〈コンゴ民主共和国ほか〉
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