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在宅訪問管理栄養士しおじゅんのゆるっと楽しむ健康食生活

医療・健康・介護のコラム

水分補給にシュワシュワの「トロミつきサイダー」はいかが?

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 前回のコラムでは、「冬場でも、水分を取って脱水を防ぎましょう」と呼びかけましたが、「高齢の方にお茶を飲むように促しても拒否されてしまい、なかなか水分摂取が進まない」という声が聞かれます。また、病気によっては水分をとり取り過ぎると病状を悪化させてしまう方もいらっしゃいます。今回は、水分摂取に関しての工夫や注意点をご紹介します。

液体にとろみをつけるのはなぜ?

 私が訪問栄養指導を実施している方の約半数に、飲み込みの障害があります。飲み込みの障害は、「 老嚥(ろうえん) 」という老化現象であったり、脳卒中の後遺症や、パーキンソン病などの難病によるものであったりと、原因はさまざまです。徐々に飲み込む力が低下していく方もいれば、ある日突然、食べ物や飲み物を飲み込めなくなった方もいます。

 水分はサラサラしており、口に含むとすぐに喉へ流れてしまいます。飲み込む動作には、何種類もの筋肉や神経が関係していますが、うまく機能しないと、水分の一部が気管に流れてしまいます。その結果、はげしくむせて苦しい思いをすることになります。

 また、気管に水分や食べ物が入っても、まひなどがあるために反応せず、まったくむせない人がいます(「 不顕性誤嚥(ふけんせいごえん) 」と呼びます)。気管に入った食べ物や飲み物、唾液が体外に排出できず、そこへ細菌が繁殖すると気管支や肺で炎症が起こり、結果的に肺炎になってしまうケースもあります。

 そこで、水分にトロミをつけて、喉を流れ落ちるスピードを遅くすることで、一気に流れ落ちるのを防ぐ効果が期待できます。したがって、飲み込みの障害がある場合には、「トロミ剤」を使って液体にとろみをつけるのが一般的です。

風呂上がりのコーラが飲めなくなった

 仙台市内に住む70代後半の男性Aさんは、脳卒中を起こし、病院に救急搬送されました。一命をとりとめ、退院できましたが、軽度の飲み込みの障害が生じたため、水分にはトロミをつけるよう指導されました。それまでのAさんはお茶や水を好まず、自分で自動販売機からコーラを買って、頻繁に飲んでいました。しかし、コーラにトロミをつけるのは無理だと考え、風呂上がりの楽しみだった1杯も諦めていました。トロミのついたお茶や水は「おいしくない」と言って手を付けようとしません。その結果、あまり水分を取らなくなってしまいました。

 また、同じく市内に住む80代の男性Bさんも、半身麻痺と飲み込みの障害があり、強いトロミのついた液体が苦手です。お茶や水だけでなく、みそ汁なども好んで飲みません。尿の量も少なく、脱水状態に陥るリスクが高いため、毎日点滴をしなければなりませんでした。ご家族は、Bさんに少しでも水分を取ってもらうため、甘酒やお汁粉など、いろいろな「トロミのある飲み物」を出していました。しかし、しばらく飲むと飽きてしまい、飲まなくなってしまいます。

トロミがついたシュワシュワ飲料を作る方法

 そこで私がお二人に提案したのは、「トロミつきのコーラ(サイダー)」です。

<トロミつき炭酸ジュースの作り方>

  1. 100ミリリットルの炭酸飲料に、1.5~2グラム程度の市販のトロミ剤を加えよく混ぜます  ※このときかなり泡が出ますが、しっかりと混ぜてください
  2. 5分ほど置いてトロミを安定させます
  3. 炭酸飲料50ミリリットルをそっと追加してゆっくりと優しくかきまぜます。
  4. 再度数分放置して、表面にたまった泡を取り除きます

 トロミをつけたサイダーは、炭酸の泡がゆっくりと水面に上がっていくのが見えます。縦長のシャンパングラスに注ぐと、見た目も華やかになりました。介護の現場でグラスに注ぐのは難しいとは思いますが、誕生日などに非日常を演出するときにはよいかもしれませんね。AさんもBさんも、トロミの炭酸ジュースをゴクゴクと飲むと、「おお。炭酸だね。おいしいね」と笑顔に。Bさんのご家族は「一度に150ミリリットルも水分を飲むなんてほとんどないから、本当にサイダーが好きなのね」と話していました。

 これはビールでも作ることができますので、アルコールが好きな方に試してみても。苦みの少ない銘柄のビールを使うのがおすすめです。

水分を取りすぎてはいけない人も

 特に夏場になると「脱水を防ぐために水分をたくさん取りましょう」という報道が多くなりますが、水分の取りすぎが病気の悪化につながる方もいます。

 夏のある日、長く心臓病を患っている高齢女性のお宅に訪問すると、塩分が含まれた「経口補水液」を水代わりに飲んでいてびっくりしました。「脱水の予防にこのしょっぱい水がいいってテレビで流れていたから、近所のドラッグストアで買った」とおっしゃるのです。

 心臓病や腎臓病など「体内の水分調節機能」が低下している方は、むやみに水分を摂取すると命にかかわることがあります。入所者全員に1.5リットルもの水分を取らせるという、信じられないルールがある高齢者施設があると聞いたことがありますが、必要な水分量は人それぞれです。水分を取りすぎることがかえって健康を損なうことがありますので、持病を考慮したうえで、水分を取るように勧めてくださいね。(在宅訪問管理栄養士 塩野崎淳子)

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塩野崎顔2_100

塩野崎淳子(しおのざき・じゅんこ)

 「訪問栄養サポートセンター仙台(むらた日帰り外科手術WOCクリニック内)」在宅訪問管理栄養士

 1978年、大阪府生まれ。2001年、女子栄養大学栄養学部卒。栄養士・管理栄養士・介護支援専門員。長期療養型病院勤務を経て、2010年、訪問看護ステーションの介護支援専門員(ケアマネジャー)として在宅療養者の支援を行う。現在は在宅訪問管理栄養士として活動。

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