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其の筋の命により立小便禁ず~町田忍さん、手描き看板コレクション

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著書を手にする町田さん

 庶民文化研究家の町田忍さんが、街中で見つけた手描き看板の写真集「町田忍の手描き看板百景-美あり珍あり昭和あり-」(東海教育研究所)を出版しました。「紹介した看板の9割はすでに姿を消している」と町田さん。失われた昭和の街の風景を回想する貴重な資料といえそうです。

 町田さんは半世紀近くにわたってカメラを持って街を探検し、マンホール、落書き、銭湯、映画館、芝居小屋、古い自販機など、消えゆく風景の断面を撮影してきました。そのなかから今回は昭和40年代後半から平成20年頃にかけて撮影した手描きの看板や貼り紙、案内図など計400点を選びました。

 例えば、波うつトタンの板に描かれた「元教師 塾」の看板。「塾だけでは説得力に欠けると考え、元教師を加えたのでは」と町田さんは推測しますが、何を教えてくれるのかの情報はありません。落花生を売る店に掲げた「皆んなでたべよう 1日10粒のエネルギー」の看板は、コピーだけでなく手書きの文字も個性的で、手作り感満載です。

トタン板を使った塾の看板

 「煙突から排煙が出ます 時にはすすっこ出る時もあります」(銭湯)、「光線指圧」(マッサージ)といった貼り紙や看板。「どれも手描きで一点しか世の中に存在しない作品で、商店主の思い入れや主張が込められている」と町田さんは言います。四角い看板に「刀」と一文字、フグの形の看板に「ちり」の二文字など、狭いスペースを目立たせるために効率的に使おうと腐心するさまがうかがえます。

 「立小便は国の恥」「放水無用」「其の筋の命によりこの露路にての立小便は、禁じられて居ります」など、立ち小便を禁ずる貼り紙には怒りがにじみ出ています。行方のわからない人やペットを探す貼り紙も掲載しています。事細かに尋ね人の特徴が書かれた文面はみな切実。犬や猫、小鳥、フェレットといったペットを見つけてくれた人への謝礼金は高いもので10万円にもなります。

フグの形をしたお店の看板

 手描き看板が姿を消し始めたと町田さんが感じたのは、町の商店が代替わりし、コンビニエンスストアが増え始めた昭和50年代。最近ではパソコンを使ってきれいな文字で描かれた看板ばかりが目立ちますが、「手描き看板には江戸以前からの何百年の伝統があり、画像だけでも残す意味はあると考えました」と町田さん。

 同書は、味わい深いコピーを集めた「するめフレーズ看板」、個性あふれる文字に特徴がある「味わい文字看板」、塗装が剥げるなどして風化が進んだことで独特の雰囲気を醸す「美的風化看板」、珍しいキャラクターが登場する「キャラ&モチーフ看板」などの章に分かれています。

 町田さんは「高値で取引される書画骨董と違い、身の回りにあったのに価値を認められず失われていくものを記録するのが自分の役割。もはや絶滅危惧種となってしまった手描き看板の味わい深さを多くの人に知ってほしい」と話しています。

(クロスメディア部 小坂剛)

手作り感満載の手描き看板

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