街で障害のある人と出会ったら~共生社会のマナー
医療・健康・介護のコラム
喧騒の中で耳を塞いでいる人がいる…何があったの?
ヨミドクターをご覧のみなさま。サービス介助士インストラクターの冨樫正義です。今回は、発達障害のある人に見られることがある感覚過敏のうち、特に「聴覚過敏」についてお伝えします。
発達のしかたに凸凹がある
発達障害とは、アスペルガー症候群などを含む自閉症スペクトラム障害(ASD)、学習障害(LD)、注意欠陥多動性障害(ADHD)などの脳機能障害であって、通常は低年齢で症状が発現します。大人でも同様の障害がある人がいますし、いくつかの障害が重複することもあります。簡単に説明すると、「脳機能の発達が関係し、発達のしかたに生まれつき凸凹(でこぼこ)がある障害」です。
特に自閉症スペクトラム障害の特性がある人の中には、音や光、匂いなどに過敏だったり、鈍かったりする人がいます。ただし、自閉症スペクトラム障害の人が必ず感覚過敏であるわけではありませんし、感覚過敏がある人が必ず、自閉症スペクトラム障害というわけでもありません。
「こんなところで座るな!」と叱責され
ここで、ある発達障害の方のエピソードをご紹介します。
自閉症スペクトラム障害で聴覚過敏がある男性Aさんは、周波数の高い機械の音や子供などの甲高い声などが苦手で、居心地の悪さを感じたり、ときにはパニック症状を起こしたりと、生活に支障が及ぶことがあります。電車に乗るときは、いつも防音具であるイヤーマフや耳栓、イヤホンをして移動しているのですが、ある日、耳栓を忘れ、イヤホンの充電も切れてしまいました。その時、電車内でたまたま小学生の団体と一緒になり、周囲を囲まれ、甲高い声の洪水にさらされてしまいました。
Aさんはパニックに陥って、立っていられなくなり、混んだ電車の中でしゃがみこんでしまいました。さらに、近付いてきた男性に「こんなところで座るな!」と叱責され、よりパニックが悪化し、息苦しくなってしまいました。
幸い、すぐに、他の乗客が、Aさんがバッグにつけていたヘルプマーク(支援を必要としていることを周囲に知らせる東京都作成のマーク)に気がつき、「大丈夫ですか、席に座りませんか?」と手を差し伸べてくれました。この男性(Aさんいわく「すてきな紳士」)のおかげで、多少落ち着き、次の駅で下車してベンチで一呼吸置くことができました。理解してくれる人の存在により、パニック状態から回復することができたのです。
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