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新型コロナウイルス肺炎 家族に感染の疑い、どうする?
新型コロナウイルスの感染を抑えるために、2月27日に政府は小中高と特別支援学校の休校を要請しました。その翌日に放送された番組では、その政策の受け止め方や感染を防止するためにはどうするべきか、具体的な方法について専門家を招いて話し合いました。(司会・右松健太キャスター、久野静香アナウンサー)(2020年2月28日放送)
<ゲスト>
齋藤孝(さいとう・たかし) 明治大学文学部教授。専門は教育学。「声に出して読みたい日本語」など著書多数。
寺嶋毅(てらしま・たけし) 東京歯科大学市川総合病院教授(呼吸器内科部長)。日本感染症学会専門医。
大谷義夫(おおたに・よしお) 池袋大谷クリニック院長。日本呼吸器学会専門医。
休校の決定には、説明が足りなかった
右松 齋藤さん、政府は、教育現場に休校を要請しました。教育現場にいるお一人としてどのように受けとめましたか。
齋藤 非常に急だったなという印象です。学習する権利を制限するのは、一種の人権の制限ですから、それだけの説得力のある説明が必要だと思いました。クルーズ船を下船した人たちの移動の制限をなぜしなかったのか、春節前から中国からの渡航をなぜ制限しなかったのか。今回の措置では、人権を制限するための説得力ある説明が必要かなと思いますね。
右松 読売新聞メディア局専門委員の渡辺勝敏さんにもトークに参加していただきます。 渡辺さんは医療記者を23年経験していますが、現在の事態をどのように見ていらっしゃいますか。
渡辺 新しいウイルスが出てくると、大きく言えば人間とウイルスの戦争です。科学の知識と社会的な力で抑え込んでいく。我々の生活や経済にも影響を与えます。新型コロナウイルスに対して、日本も闘いの最前線に立たされている、そういった感じを持っています。
右松 率直に言って、今日本はどのような現状だと思いますか。
寺嶋 事態は変わってきていて、何かしらアクションを起こさなくちゃいけないとは思います。その判断には、医学的な根拠や専門家の効果への見通しという点から、やや首をかしげたくなる部分もありました。
大谷 参考になるデータがそろっているわけではないので、難しい判断だったと思いますが、これ以上拡散してしまうと医療が追い付いていけないという意味で、政府の英断だったと思います。ただ、やはり説明は足りなかったと思います。
直接、診療所の受診ではなく、まず、電話で問い合わせ
右松 新型コロナウイルス感染を疑う患者さんが来ると思いますが、現場ではどのような診察をしているのですか。
大谷 私のところはクリニックですので、待合室を別に設けることはできません。まずはお電話をいただいて、予約制にしています。お話から疑いがありそうだったら、時間帯を分けて、昼の休憩の時間帯か夜の診療後の時間帯に来ていただいて、ほかの患者さんとは会わないようにしています。待合室にも座らないで、直接検査室の奥にそのままお通しして問診をとらせていただきます。
その際、まずインフルエンザのチェック。インフルエンザがマイナスでしたら、レントゲンを撮らせていただいて肺炎の有無、さらには血液検査で白血球とかCRPという炎症のマーカーを診ます。総合的に肺炎と炎症の強さをチェックした上で、もし肺炎があれば、私たちがすぐにできる検査として、肺炎の原因になるマイコプラズマや肺炎球菌を調べます。たんを出していただいて、色が黄色とか緑ですと細菌性の可能性が高くなります。血液検査で白血球が高ければ細菌性の可能性が高くなります。そうした診断の上で、新型コロナウイルスの疑いがあれば、保健所にPCR検査をお願いすることになります。
右松 今、PCR検査というお話が出ましたが、渡辺さん、やはりPCR検査についても多くの方が受けたいと思ってもなかなか受けられないという現状や、その精度についてもまだいろいろな議論がありますよね。
渡辺 そうです。専門家の方々は感度がどうもあまり信頼できないなんて話がありますけれども、その辺はどうなんでしょうか。
寺嶋 検査機器の性能や検査員の方の習熟にも若干の差があるようですけれども、こだわる必要はなく、検査は有効だと思います。
ドアノブにはウイルスが長く残る
右松 家庭内の感染を防ぐ防御策を伺っていきます。まず、家に帰宅して、何をすべきでしょうか。
大谷 私は玄関のドアの外にアルコール手指消毒を置いているんですよ。そこでアルコール手指消毒、15秒間手指にもみ込んで、消毒してからドアをあけて中に入るようにしています。その後は洗面所に直行して、うがいして、そのついでに手洗いをして、そのまま顔を洗って、私は髪がないから頭まで洗っちゃいます。本当はアルコール消毒すれば手はきれいなんですけれども。
右松 ドアノブにウイルスがついて、しばらく残っているという話を聞きますが。
寺嶋 金属というのは比較的、 飛沫 が長く生存しやすいと言われていまして、数時間から半日ぐらいとインフルエンザでは言われています。一般のコロナウイルスですと、4~5日、海外の研究だと最大9日間ぐらい生きていたという報告もあります。ですから、ドアノブや机の上などには長くいるということも念頭に置いた方がいいかもしれません。
渡辺 やはり手洗いなんですけれども、医師の手洗いを拝見していると、私たち一般人よりもとても丁寧な印象があるのですが、コツはあるのでしょうか。
大谷 習慣としてせっけんをたくさんつけて、手のひら、手の甲、指の間、爪、あと親指、さらには手首まで、腕時計を外して洗います。30秒を目安にしています。ただ、最近の考え方として、30秒の手洗いよりはアルコール手指消毒15秒のほうが有効だということがわかってきています。
顔をさわらない習慣にも予防効果
久野 家に帰って手洗い、うがいはしっかりするようになったんですけれども、一つ配なのが、服やバッグとかにウイルスはつくものなんですか。
寺嶋 比較的つるつるしているところには、電車の中で誰かの飛沫を浴びたりすることがあると思います。ですから、私はカバンを置いて、コートを脱いでから手を洗うようにしています。
齋藤 顔はどうなんですかね。例えば飛沫が飛び散っていたのを、子供なんかだとさわってしまうということがあるんですけれども。
大谷 そうですね。そこは危ないと思います。特に目、鼻、口をさわって粘膜から入ってきますから。そいう点で、マスクの一つの隠れた効能は、マスクの下まで手を入れないことね。顔をさわらない癖をつけていただくと、意外とさわらなくなります。
家族が感染したら、看病ではできるだけ向かい合わないように
右松 万が一家族の中に感染の疑いがある人がいる場合、私たちはどのように看病すればいいのでしょうか。
寺嶋 看病する人を、できるだけ1人、2人に絞るということですね。
大谷 飛沫を正面から浴びないように、なるべくフェース・トゥー・フェースで向き合わないことです。お子様に食事を渡す時も、正面ではなく真横からですね。私たち呼吸器内科は聴診器を当てるときは、実は前からではなく、背部や横から当てているんです。横に回ってお話を聞いて、飛沫を避けるようにしております。
右松 食べ物が感染源になることはありますか。
寺嶋 食べた物は大丈夫ですけど、食器にはウイルスがついていますから、洗浄した後はした人が手を洗うといったことは必要です。
情報や知識で防御することも必要
右松 感染が拡大する新型コロナウイルスですが、既に自分たちの周りにもウイルスがいると考えたほうがいい時期に入っているのかもしれません。
齋藤 いろいろな知識を伺いましたが、情報や知識で防御していくことが重要かと思います。手洗いの仕方も、一度聞いたらそんなものかと思いますけれども、知識というのは3回、4回と聞いているうちに、ようやく入るということがあります。ですから、いろいろな場を通して知識が皆さんに蓄積されていくと自然と防御力が高まると思います。満員電車も家庭以上に密着しているわけですから、全員がアルコール消毒して乗るとか、そういうことがあってもいいのかなと思います。
右松 感染拡大を防ぐために、私たちは何をすべきでしょうか。
寺嶋 休校措置やイベントの自粛が最大の効果につながるように、休みだからと言って、みんなで集まったりしないことですね。
大谷 症状が出たら心配になると思いますが、呼吸器症状が出た段階でいきなり受診しないで、医療機関にまず電話でご相談ください。受診するタイミングなどを調整して、それによって院内感染を防げる可能性があります。
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