文字サイズ:
  • 標準
  • 拡大

僕、認知症です~丹野智文46歳のノート

医療・健康・介護のコラム

私は「毎日メールをくれる優しい人」? 勘違いでも、いいことずくめ

  • このエントリーをはてなブックマークに追加
  • チェック

携帯アラームで「薬飲むんだよ」

私は「毎日メールをくれる優しい人」? 勘違いでも、いいことずくめ

 去年、長野に住む認知症の仲間を訪ねた時のことです。その中に一人暮らしの70代の女性がいて、「薬を1週間も飲み忘れることがあるので、訪問看護を利用することになりそう」と聞きました。

 女性の携帯電話を見せてもらうと、今時珍しいガラケーでしたが、アラーム機能はちゃんとついています。毎日、朝ご飯を食べ終える頃にアラームが鳴って、画面に「薬飲むんだよ」と表示されるようにセットしておきました。少し耳が遠いので、アラーム音がだんだん大きくなる設定です。

 すると、次の日から飲み忘れがなくなったそうなのです。本人は機械に弱く、アラームの表示を私からのメールと勘違いしていたそうで、「毎日、同じ時間にメールをくれるのよ。丹野さんって本当に優しいわね」と、喜んでいたとか。

 この、友達からのメッセージのような「~だよ」という言い方が、実はとっても大事なんです。例えば、「薬を飲む時間」とか「薬を飲んでください」と出ていたら、なんだか携帯に命令されているようで嫌な気持ちになりませんか? 機械ではなく、親しい人が声をかけてくれているように感じたら、気分も上がると思うのです。 

 ちょっとしたことですが、日々の暮らしが楽しく、便利になり、まだまだ人に頼らなくてもやっていけると自信を持ったのではないでしょうか。介護サービスを使わずに済み、私も「優しい人」という評判が立つのですから、周りにとってもいいことずくめです。

スマホで世界が広がった

 携帯のアラームが使えるのでは……と気付いたのは、私自身も普段から、スマホのアラーム機能をフル活用しているからです。手帳に書き込んでおいたその日の予定に合わせて、起床時間や家を出る時間などにアラームをセットしておいて、いつどんな行動を起こせばいいのかがわかるようにしておくのです。

 スマホは、講演に出かける時にも、ホテルや列車、飛行機を予約したり、会場までどう行けばいいのか調べたりするのに大活躍です。もしスマホのない時代だったら、行動範囲や活動の幅をここまで広げることはできなかったかもしれません。

高齢者が先進技術を使いこなす時代

 「あなたは若いからいいけど、認知症の人は高齢の場合が多いから、スマホなんて使えないのでは」と言う人もいますが、私だって、認知症になってから使い方を覚えようとしたら、かなり苦労したんじゃないかと思います。発症するずっと前、スマホが出回り始めた頃から使っていたことが、今になって役に立っているのです。

 そう遠くない将来、ネットやスマホが生活に浸透している世代が高齢者になります。年をとれば、認知症に限らずさまざまな障害を持つようにもなるでしょうが、その頃には、今は想像したこともないような新しい技術が誕生している可能性も。高齢者が先進技術を使いこなすようになって、障害が障害でなくなる日がくるかも……なんて、想像しています。(丹野智文 おれんじドア実行委員会代表)

  • このエントリーをはてなブックマークに追加
  • チェック

tanno_46

丹野智文(たんの・ともふみ)

 おれんじドア実行委員会代表

 1974年、宮城県生まれ。東北学院大学(仙台市)を卒業後、県内のトヨタ系列の自動車販売会社に就職。トップセールスマンとして活躍していた2013年、39歳で若年性アルツハイマー型認知症と診断を受ける。同年、「認知症の人と家族の会宮城県支部」の「若年認知症のつどい『翼』」に参加。14年には、全国の認知症の仲間とともに、国内初の当事者団体「日本認知症ワーキンググループ」(現・一般社団法人「日本認知症本人ワーキンググループ」)を設立した。15年から、認知症の人が、不安を持つ当事者の相談を受ける「おれんじドア」を仙台市内で毎月、開いている。著書に、「丹野智文 笑顔で生きる -認知症とともに-」(文芸春秋)。

僕、認知症です~丹野智文46歳のノートの一覧を見る

コメントを書く

※コメントは承認制で、リアルタイムでは掲載されません。

※個人情報は書き込まないでください。

必須(20字以内)
必須(20字以内)
必須 (800字以内)

編集方針について

投稿いただいたコメントは、編集スタッフが拝読したうえで掲載させていただきます。リアルタイムでは掲載されません。 掲載したコメントは読売新聞紙面をはじめ、読売新聞社が発行及び、許諾した印刷物、読売新聞オンライン、携帯電話サービスなどに複製・転載する場合があります。

コメントのタイトル・本文は編集スタッフの判断で修正したり、全部、または一部を非掲載とさせていただく場合もあります。

次のようなコメントは非掲載、または削除とさせていただきます。

  • ブログとの関係が認められない場合
  • 特定の個人、組織を誹謗中傷し、名誉を傷つける内容を含む場合
  • 第三者の著作権などを侵害する内容を含む場合
  • 企業や商品の宣伝、販売促進を主な目的とする場合
  • 選挙運動またはこれらに類似する内容を含む場合
  • 特定の団体を宣伝することを主な目的とする場合
  • 事実に反した情報を公開している場合
  • 公序良俗、法令に反した内容の情報を含む場合
  • 個人情報を書き込んだ場合(たとえ匿名であっても関係者が見れば内容を特定できるような、個人情報=氏名・住所・電話番号・職業・メールアドレスなど=を含みます)
  • メールアドレス、他のサイトへリンクがある場合
  • その他、編集スタッフが不適切と判断した場合

編集方針に同意する方のみ投稿ができます。

以上、あらかじめ、ご了承ください。

最新記事