山中龍宏「子どもを守る」
医療・健康・介護のコラム
たばこを飲み込んだ! すぐ病院へ?…判断を分ける目安は「2センチ」
今回は、乳幼児の誤飲で最も多いたばこの誤飲について見てみましょう。
6か月の女の子、第1子。押し入れの掃除のために、部屋いっぱいに物を出していた。そんなとき、父親のたばこが1本落ちたのに、両親とも気づかなかった。子どもが急に泣きだしたので、びっくりして見ると、赤ちゃんの口にたばこが入っていた。すぐに 掻 き出したが、どれくらいの量を食べたのかわからず、慌てて医療機関を受診した。
日本でたばこの誤飲が多い理由
日本中毒情報センターが受信したたばこ関連品の問い合わせは2290件(2018年)でした。センターには自動音声応答の「たばこ誤飲事故専用電話」(TEL:072-726-9922 365日、24時間)が設置されています。その利用件数は4285件(18年、1日約12件)で、合わせると6575件でした。毎年、ほぼ同じ受信件数となっています。年齢層別では、5歳以下の小児が9割を占め、0歳が約40%、1~5歳が約50%。とくに、8~11か月児に多くみられます。動画参照。
5歳以下の問い合わせ件数に占めるたばこ関連品の割合は10%前後で、単品では最も多くなっています。アメリカでは0.5%くらいで、大きく異なっています。わが国では畳での生活が一般的で、いろいろなものが畳や床の上に置かれているためと思われます。
中毒症状の出現は14%
たばこの急性中毒はニコチンによるもので、市販の紙巻きたばこ1本中には9~28ミリグラムのニコチンが含まれています。パッケージに記載されているニコチン量は「自動喫煙機」で測定した値で0.1~2.3ミリグラムです。ニコチンの急性致死量は、成人で紙巻きたばこ2~3本、幼児で1/2~1本とされ、「紙巻きたばこ1本には、子ども2人を死なせるニコチンが入っている」と中毒学の本に書かれています。しかし、たばこの葉からニコチンが溶け出すには時間がかかり、胃の中ではほとんど吸収されず、吸収されてもニコチンの催吐作用により吐き出してしまうことなどから、重篤な症状を呈することは 稀 です。たばこの誤飲で死亡した乳幼児例はありません。
たばこを誤飲した場合、中毒症状の出現頻度は14%程度とされ、誤飲してから30分~2時間くらいの間に、 悪心 、 嘔吐 、顔面 蒼白 、頭痛などの症状がみられます。たばこが水に 浸 かっていた液体を飲んだ場合は、速やかに吸収されて中毒症状を示すことがあります。
危険なのは「溶け出た水」
誤飲してしまったら、気づいた時点ですぐ吐かせるのが原則です。飲み込んだたばこの葉が2センチメートル以下なら、特に処置を必要とせず、4時間観察して症状が出なければ問題ありません。何らかの症状が見られたり、たばこの葉を2センチメートル以上、あるいは、たばこが溶け出た水を飲んだりした場合は、すぐに医療機関を受診してください。
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