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遊び心が健康づくりに不可欠~~ルネサンス斎藤会長インタビュー

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 フィットネス業界大手のルネサンス(本社・東京都墨田区両国)は、大日本インキ化学工業(現DIC)の社内ベンチャーとしてインドアテニススクールの運営からスタートし、昨年10月、創業40周年を迎えました。全国166か所に施設を展開し、企業の健康経営やシニア世代の介護予防も含め幅広い分野で健康づくりを支援しています。創業者の斎藤敏一会長に、時代とともに変化するスポーツクラブの役割、社員や自らの健康づくりについて聞きました。(クロスメディア部 田中真奈美)

アプリで楽しみつつ行動変える

遊び心が健康づくりに不可欠~~ルネサンス斎藤会長インタビュー

健康経営の取り組みについて語る斎藤会長

――はじめに健康経営の取り組みについて教えてください。

 2017年から、スマホで日々の食事や運動、体重などを入力すれば専門家のアドバイスが受けられる健康アプリ『カラダかわるNavi』を全社で導入しました。アプリはスポーツクラブの個人会員や法人会員に無料で配布しているものです。毎日活用すればいいのですが、なかなかそうもいきません。そこで年に3~4回、社員がチームに分かれて1週間アプリを使い、健康スコアを競う全員参加のイベントを開いています。

 全社で150から160のチームになりますが、役員チームは16位とまずまず。ゲーム感覚で盛り上がっています。地道に運動することは大事ですが、行動に変化を促すには楽しいのが一番です。弊社は健康経営に熱心に取り組んでいるとして3年連続で、経済産業省の健康優良法人「ホワイト500」に認定されました。

――健康経営で企業を指導しているということですが、何社ぐらい指導されていますか。

 法人でスポーツクラブの利用契約だけ結んでいるのが1000社以上、健康経営の推進を支援している会社が約800社ありますが、この中のいくつかの会社のコンサルティングをしています。7年前から、社員の健康を維持・向上させて会社の成長や発展につなげようと、健康経営会議という取り組みを進めています。毎年、多くの企業に参加を呼びかけて経団連会館で講演やパネルディスカッションを開いています。昨年も大盛況でした。

「元氣ジム」でシニア層の筋力アップ

――社会全体で健康への意識が高まるなか、スポーツクラブの現状を教えてください。

 創業3年目の1981年に総合型のスポーツクラブを立ち上げたときは元気な人がより元気になるところで、20歳代、30歳代の利用者が中心でした。94年の調査でも60歳以上が3.3%しかいなかったんですね。その後は、60歳代の会員が増え、長く続く傾向がみられたんです。この時、フィットネスクラブはシニアに役立つかもしれないと直感したんです。

 シニア向けに会費が割引になる会員種別や設備、内装を取り入れていったところ、60歳以上の利用者が2004年に19.5%でしたが、19年には34.1%にまで増え、その約半分は70歳以上でした。

――健康維持や病気予防のために積極的に運動するシニアが増えてきたのですね。

 厚生労働省は国民の健康寿命を延ばそうと「スマート・ライフ・プロジェクト」を始め、運動や食生活、禁煙の3分野で具体的な行動を呼びかけています。私はその推進委員会で委員長になりました。病気の予防や介護保険の分野で行政と企業が一緒に取り組むことも増え、弊社も地方自治体の介護予防事業を受託するようになりました。

 健康な人が要介護にならないように運動指導を始めましたが、もう一歩進んで、要支援や要介護の人がリハビリや運動で元気になってもらうことも大事だと考え、「元氣ジム」をつくりました。理学療法士や運動指導員が常駐し、リハビリに適した器具やトレーニングマシンを使って筋力を維持、向上させ、脳の活性化を図るシナプソロジーというプログラムを提供しています。

シナプソロジーなら間違っても笑える

――シナプソロジーについて教えてください。

遊び心が健康づくりに不可欠~~ルネサンス斎藤会長インタビュー

ゲーム感覚で楽しめるシナプソロジー=ルネサンス提供

 「体を動かしながら数を数える」など、二つのことを同時に行う、左右違った動きをするといったように、脳を混乱させて刺激を与え、認知機能を向上させるものです。弊社の社員が大学の先生のアドバイスを受けながら開発した脳活プログラムで、ゲーム感覚のように楽しく続けられるのが特徴です。

 最初、このプログラムはアスリートの認知機能や運動機能の向上、また、子ども向けに、知育や発育の向上、ビジネスの場においても認知機能をアップさせ、生産性を向上させるために開発されました。ところが、これを一番必要としていたのは、実はシニアの人たちだったのです。

 60歳を過ぎると物忘れが出てきますが、この年代の認知機能向上にも役に立つということがわかり、元氣ジムのプログラムにも取り入れています。「シナプソロジー」は、間違っても笑いながらやれるんです。インストラクターの養成や派遣も行っています。

脳卒中やがん患者のリハビリも

――脳卒中のリハビリもやっていらっしゃるということですが。

 脳卒中に特化した施設が必要とされていると感じ、2018年に「リハビリセンター鎌倉」を開設したところ、すぐ定員に達しました。50歳代の方も多く、体を元に戻して仕事に復帰したいという方々がたくさんいらっしゃいました。必死になってリハビリに取り組んでいらっしゃる姿を見ていると、涙が出てきます。

 病院は医療機関なので、何とか歩けるようにはしてくれます。しかし、その後、日常生活を過ごすために必要な機能については、個人でリハビリしていくしかないんですね.

――がん患者のためのリハビリも行われているということですが。

 大阪国際がんセンター(大阪市)から依頼があり、昨年、がん患者の方のための「ルネサンス運動支援センター」をつくりました。がん患者の生活の質を維持・向上させるため運動を支援しています。この半年で利用者は延べ200人ぐらいで、治療が終わった後に筋肉の衰えなどの身体的問題、心のケアを寄り添ってやるという新しい提案です。がんセンターで患者が交流する棟に支援センターがあり、治療とリハビリの連携を進めています。

 大事なのは社会で課題となっていることに取り組み、解決することです。「課題解決型事業」で患者の方々も元気になって生きがいを取り戻し、社員もプライドを持って仕事ができ、それが生きがいになる。お客さまと我々社員がともに生きがいを持てるということで、わが社を「生きがい創造企業」と命名しました。

硬式テニスというより口式テニス、笑いが健康の秘訣

――最後に企業のトップとして、ご自身の健康法についておうかがいします。

遊び心が健康づくりに不可欠~~ルネサンス斎藤会長インタビュー

「遊び亭一生」の名前で落語を披露=ルネサンス提供

 長いことテニスをやっていますが、ゲーム性があって楽しいんです。デンマークとアメリカで、8種類のスポーツをしている人を25年間追跡調査すると、テニスをしている人が最も長生きという結果が出たそうです。その次がバドミントン、その次がサッカーでした。これらのスポーツは、2人以上でコミュニケーションをとるので社会性が求められます。動くだけでなく頭も使い、楽しいから、長生きするのではないかと思うんです。

 プレーだけではなく仲間と集まって冗談を言って笑い合います。私がやっているのは硬式テニスですが、「口式テニス」でもあります。我々のグループは平均年齢70歳代、コートでは「みたか~!」「やった~!」と大声を出しながらプレーする。ボールよりも口(言葉)のやりとりで盛り上がる。これが実に楽しいんです。

 笑うことも健康の秘訣ひけつだと思いますね。会社員になってから、DICの技術系の社員たちと素人の落語研究会を作りました。私の芸名は「遊び亭一生」。「一生遊びたい」をひっくり返しただけなんです(笑)。

斎藤 敏一(さいとう・としかず)
【略歴】株式会社ルネサンス 代表取締役会長。1944年宮城県生まれ。1967年京都大学工学部卒業、大日本インキ化学工業株式会社(現DIC)入社。同年、スイス連邦工科大学へ留学、1969年に帰国。研究所、石油化学技術部、海外事業部を経て、1979年に健康スポーツ事業を企画し、ディッククリエーション(現ルネサンス)設立。1992年に社長に就任。2008年より現職。

 

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