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Dr.若倉の目の癒やし相談室 若倉雅登

医療・健康・介護のコラム

「運転外来」を体験してみた…衝突5回!?の現実も

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「運転外来」を体験してみた…衝突5回!?の現実も

ドライビングシミュレーターによる模擬運転の仕方を説明する国松医師

 緑内障を始め、視野に問題が生じる目の病気は少なくありません。

 特に緑内障の初期は周辺の視野の感度が低くなるだけですから、まず自覚しません。また、かなり進行して歩行中の衝突や転倒が起こっても、運転中に事故を起こしても、まさか視野の問題が原因だとは気付かないことが結構あると思われます。

 緑内障を専門としている国松志保医師は、10年ほど前から、自動車事故と視野の関係を研究しています。現在、副院長として西葛西・井上眼科病院(東京都江戸川区)に勤務し、「運転外来」を開設している国松医師を訪ねました。

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国松医師

  若倉  なかなか医師が思いつかない、実践的なこのような研究を始めたきっかけを教えてください。

   栃木県の自治医科大学で、緑内障外来をはじめた頃のことです。多くの患者さんが自分で車を運転して通院して来られます。でも視野検査結果を見ると、これで運転なんて危険ではないかと思うような人が大勢いました。人身事故を起こした患者さんもいました。実は栃木県は、大都市圏と違って公共交通機関が網羅されておらず、県民の96%の日常の移動手段が、自家用車というデータがありました。

  若倉  そんなに多いのですか。車がないと不便で、生活が事実上成り立たないのでしょうね。

  国松  そうなんです。ただ、栃木県が日本で特に多いのではなく、当時は、これでも47都道府県中22位でした(国土交通省、平成19年調べ)。

  若倉  それで運転と視野の関連を研究し始めたのですね。

 国松 研究にはどうしてもドライビングシミュレーター(運転模擬体験装置)が必要だと思いましたが、 莫大(ばくだい) な費用がかかります。でも救世主が現れました、本田技研工業です。車を作っている以上、その安全性に関する研究には協力したいとのことでした。何度かの改良を重ね、現在のシミュレーターができました。

  若倉  どんなふうに応用されているのですか。

  国松  事故が起こる可能性のある場面を5分間に15回組み入れたプログラムで、模擬運転をしてもらいます。視野異常の程度を初期、中期、後期と分けていますが、このプログラムを走行すると、健常な方でも、平均1.1回事故が起こりますから、簡単ではない設定になっていますが、後期の方では平均3.3回という多くの事故を起こしていました。

  若倉  患者さんはどんな反応ですか?

  国松  プログラムを終了した後、事故を起こしたところを再生して、なぜ事故になったか、視野も参考にしながら患者さんと検討します。視野異常を気にしていなかった、今までは運よく事故がなかっただけだということがわかり、より注意するようになります。結果をみて、免許を自主返納することにした方もおられました。

 筆者も、中心20度しか見えない視野 狭窄(きょうさく) 眼鏡をかけてシミュレーターを体験してみました。何と5回ほど衝突または衝突寸前という事態になりました。スピードを控えること、正面を見るばかりでなく、目や頭を動かして、信号や左右からの飛び出しに注意することが事故を防止するのに大切だと国松医師は強調していました。

 事故を起こしていないからと自分の技量を過信しないこと、また、疲労すれば注意が散漫になるので適切に休憩をとることを改めて自分に言い聞かせた体験でした。

 (若倉雅登 井上眼科病院名誉院長)

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若倉雅登(わかくら まさと)

井上眼科病院(東京・御茶ノ水)名誉院長
1949年、東京生まれ。80年、北里大学大学院博士課程修了。北里大学助教授を経て、2002年、井上眼科病院院長。12年4月から同病院名誉院長。NPO法人目と心の健康相談室副理事長。神経眼科、心療眼科を専門として予約診療をしているほか、講演、著作、相談室や患者会などでのボランティア活動でも活躍中。主な著書に「目の異常、そのとき」(人間と歴史社)、「健康は眼にきけ」「絶望からはじまる患者力」「医者で苦労する人、しない人」(以上、春秋社)、「心療眼科医が教える その目の不調は脳が原因」(集英社新書)など多数。明治期の女性医師を描いた「茅花つばな流しの診療所」「蓮花谷話譚れんげだにわたん」(以上、青志社)などの小説もある。

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