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医師が教える「女と男、髪と地肌の話」 田中洋平

医療・健康・介護のコラム

せっかく止まっていた抜け毛が、春になったら…

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せっかく止まっていた抜け毛が、春になったら…

 今年は冬の間、ずっとコロナウイルスに世界中がひっかき回されてきました。

 でも、外の空気が暖かさを増してくると、心配することなく外出したり、知人・友人に会ったりしたくなりますよね。

 新型肺炎の状況が改善することを心待ちにしながら、今回は、毎年、春に養毛育毛のためにクリニックにやって来る患者さんについてお話しします。

 まもなくスタートする新年度。それでなくても、部屋の中に籠もりがちになっていた寒いシーズンから抜け出すために、気分一新、すっきりしたヘアスタイルにリフレッシュしようと考えている方も多いでしょう。

 新しい職場や新生活を前に、周囲の目が一層気になる時期です。

 春になると、抜け毛と薄毛を気にされるたくさんの患者さんが、私のクリニックに相談にいらっしゃるのもそのためかもしれません。

人の目が気になる季節だから

 多くの動物は春と秋に衣替えをします。春になると、冬の毛皮を脱ぎ捨てるように、自然に夏バージョンの毛に生え替わります。

 私たち人間も、はるか大昔の名残りのせいか、春と秋に抜け毛が増えることが多いのです。

 とくに女性の場合、寒い季節には、ボリュームを増やすヘアスタイルを選ばれる方が多く、抜け毛や髪の毛の減少は目立たなくなっています。ところが、暖かくなってくると、気持ちも行動も活動的になるためか、すっきりとしたヘアスタイルを選ばれるようになるのでしょう。新しい出会いも増えるので、人の目も気になりやすい時期です。多くの女性患者さんが、髪の毛のボリュームを気にするようになるのです。

抜け毛対策に油断は大敵

 これまでの連載で、老若男女問わず、頭髪を増やす治療として、抜け毛促進のホルモン、ジヒドロテストステロンのブロックは内服薬で、抜け毛、薄毛の原因の毛根周囲の血流改善にはミノキシジルの内服と外用で治療するとお話をしてきました。

 数年前、岐阜県にお住まいの20代男性が、私のクリニックにやってきました。髪の毛が減って、頭皮がところどころ透けて、おでこの生え際も後退しています。

 そこで、私が処方した「フィナステリド」と「ミノキシジル」を1年くらい継続し、しばらくは良い状態を維持していました。ところが、最近、また髪の毛が減ってきたように感じると、相談に来たのです。

 お話によると、かなり髪の毛が復活したことで、油断して薬の飲み忘れがあったとのこと。さらに、春の髪の毛の「衣替え」で、さらにボリュームが減ったことも、不安になった原因だったようです。

 以前にもお話ししましたが、フィナステリドは、飲んだ日は抜け毛ホルモンのジヒドロテストステロンが作られないため、抜け毛が予防できます。ただし、血中濃度は1日で下がってしまい、効果は減ってしまいます。内服を忘れた日は、基本的に抜け毛を予防できないのです。

 ミノキシジルも同様です。

 抜け毛が予防され、髪の量は増えているので、たまに服用を忘れても、さほど目立たなかったかもしれませんが、季節の変わり目などの「別の理由」が加わると、一気に少なくなってしまったように感じられたのですね。

職場が変わったストレスで、再び抜け毛が

 山梨県にお住まいの30代の女性は、髪のハリ、コシがなくなったように感じ、同時に分け目が広がって見えるようになったことで受診されました。「スピロノラクトン」「ミノキシジル」を1年近く継続したところ、すっかり改善して喜んでいました。ところが、再び髪の毛が減ったように感じるとのことで、改めて相談に来られました。

 春になって職場が変わり、慣れない仕事のためにストレスが大きくなったそうです。以前以上に毎日が忙しくなったため、薬を飲むことを忘れてしまうこともしばしばになってしまったとのことでした。

 この患者さんのケースも、薬を飲み忘れ、さらに「ストレス」「多忙」などの「別の理由」が加わったことで、せっかく継続していた効果が薄れてしまったようです。

 さらに、春になって、髪の毛の「衣替え」が進み、活動的な外出も増えたことで、周囲の目が気になったことも、不安に拍車をかけたのです。

 きちんと薬を飲み続ければ、少なくともホルモン性の抜け毛は予防できるのです。それを忘れると、せっかくの効果が薄れて、さらに別の原因による抜け毛のせいで、一層、薄毛が進んだかのように感じてしまいます。

 やはり、毎日の継続的な内服は本当に大切だと思い知らされます。

 春は、新しいことが始まる季節ですね。心が弾むような出会い、楽しい出来事への期待も高まります。その反面、毎日の環境が変わることで、新しいストレスが生まれたり、慣れない生活スタイルで心身が疲れてしまったりすることも。

 どれも、抜け毛の新しい原因になりえます。

 過大なストレスや疲労は、髪の毛だけにはとどまらず、肌や内臓のコンディションにも悪影響を与えます。みなさんがフレッシュな気分で、新年度を迎えられることを祈っています。(田中洋平 形成外科医)

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田中 洋平(たなか・ようへい)

 クリニカタナカ 形成外科・アンティエイジングセンター(長野・松本市)院長 新潟薬科大学客員教授、東京女子医科大学非常勤講師。1975年生まれ。

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