健康経営の人
医療・健康・介護のコラム
テルモ<上> 松本幸助・人事部長(55) 「健康増進は先行投資」
医療機器メーカーのテルモは、2015年から2年連続で社員の健康管理に積極的な上場企業として、経済産業省と東京証券取引所が投資を推奨する「健康経営銘柄」に選ばれた。健康管理の指揮を執る松本幸助執行役員・人事部長(55)に取り組みを聞いた。
ーー社員の健康増進を目標に掲げた契機や背景は。
「後期高齢者制度の開始に伴って健康保険組合の財政が厳しくなるとみて、13年度に社員が負担する保険料率を大幅に引き上げた。同時に、労使の協議で社員が病気になりにくくする環境づくりに踏み込むことにした。健保財政が黒字の今こそ先行投資すべきだ、と考えた」
ーーテルモの健康経営の特徴は。
「禁煙や運動など必要なことをすべて網羅する『デパート方式』だが、特に2次健診に力を入れている。すべての費用を会社が持って担当部署からしつこくメールを出す。ほとんど強制的に2次健診を受けさせ、受診率100パーセントを目指している。
実は、この効果は大きい。2次健診を受けてみないと、本当に体に問題があるかどうか、明確にならない」
ーー経営者が「健康」の旗を振る意義は。
「日本企業はヒエラルキーの世界。経営者が率先して『おれもたばこをやめたんだから、みんなもやめよう』と言えば、その効果は大きい。テルモの企業理念は『医療を通じて社会に貢献する』。社員が健康であればこそ遂行できる」
ーー社員の動機付けはうまく行った。
「まだまだ、だ。例えば糖尿病の場合、合併症が出る前に手を打たなければならないが、『将来のために糖尿病予防を』と生活習慣の改善を呼びかけても、実際は難しい。ゲーム感覚で楽しみながら、いつの間にか運動をしていた、というような仕掛けが大切だ」
ーー今後の目標は。
「2015年に健康管理に使うデータを全社で統一する取り組みを始めた。健診で引っかかる割合が、例えば運動をする習慣がある人とない人ではどのくらい差があるのか。生活習慣の改善がいかに大切か、社員にエビデンス(根拠)を示したい」
(聞き手 鷲見一郎)
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