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田村専門委員の「まるごと医療」

医療・健康・介護のコラム

新型コロナウイルス肺炎 分かったこと 分からないこと やるべきこと やるべきではないこと

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安易な検査はむしろマイナスに

 ウイルスの検査が必要だと医師が判断して、保健所に要請したにもかかわらず、検査が行われなかった事例が報告され、日本医師会は国に是正を要望した。国は検査を保険適用で行えるようにする方針を明らかにしている。医師が必要と判断したケースでは確実に検査が行えるような、検査態勢の整備が必要だ。

 新型コロナウイルスの検査には、インフルエンザのように外来診療でできる簡易検査はまだ導入されていない。のどなどから採取した検体を検査機関に送って、ウイルスが存在するかどうか遺伝子を増幅して調べるPCR(核酸増幅法)検査が用いられている。 

 しかし、検査は100%ではなく、限界がある。特に、全体の患者数が少ない(有病率が低い)状況では、検査では陽性だが、実際には感染していない偽陽性が多く出てしまう可能性がある。もちろん、逆に陰性と出ても、100%感染していない証明にはならない。仮に検査を受けても、軽症であれば、現状では抗ウイルス薬もなく、特別な治療法があるわけでもない。医師が必要と判断しないのに患者がむやみに検査を求めることは、かえってマイナスにもなる。

手洗い、せきエチケット、密な空間に集まることは避ける

 予防の基本は、手洗いや、せきエチケットだ。マスクは、症状のある人が他人にうつさない「せきエチケット」のためにつけるもの。感染しないための予防の効果は限定的であることは、繰り返し説明されてきた。医療関係者への供給が不足したり、症状のある人がマスクを手に入れられなかったりするとすれば、本末転倒だ。

 国は3月1日、集団感染を防ぐために国民に求める具体的な行動指針を示した。散発的に小規模の患者が発生している現状においては、小規模の患者の集団(クラスター)が次のクラスターを生み出すのを防ぐことが大切になることを踏まえたものだ。

 そのためには、「換気が悪く、人が密に集まって過ごすような空間に集団で集まることは避けて」ほしいと呼びかけた。これまでの感染例から、スポーツジム、屋形船、ビュッフェスタイルの会食、スキーのゲストハウス、密閉された仮設テントなどを具体的な場所の例として挙げている。

若者へのお願い

 国の専門家会議は2日、クラスター対策班の分析に基づいた新たな見解を発表し、国民に理解と協力を訴えた。なかでも、中心は、若者に対する呼びかけだ。

 それによると、北海道などのデータ分析から、症状の軽い人でも、気づかないうちに、感染拡大に重要な役割を果たしてしまっていると考えられる、と分析。特に若年層は、重症化する割合が非常に低く、感染拡大の状況が見えないため、結果として多くの中高年層に感染が及んでいることが考えられると述べた。

 そのうえで、全国の10代、20代、30代へのお願いとして、「皆さんが、人が集まる風通しが悪い場所を避けるだけで、多くの人々の重症化を食い止め、命を救えます」と、呼びかけている。

 ウイルスの正体にはまだ不明な点が多く、個人のレベルでできることは限られている。だからこそ、一人ひとりが、やるべきこと、やるべきでないことをしっかり認識して、行動に移す必要がある。(田村良彦 読売新聞専門委員)

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田村 良彦(たむら・よしひこ)

 読売新聞東京本社メディア局専門委員。1986年早稲田大学政治経済学部卒、同年読売新聞東京本社入社。97年から編集局医療情報室(現・医療部)で連載「医療ルネサンス」「病院の実力」などを担当。西部本社社会部次長兼編集委員、東京本社編集委員(医療部)などを経て2019年6月から現職。

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1件 のコメント

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変わるものと変わらないもの

寺田次郎 関西医大放射線科不名誉享受

色々な情報が上がってきていますが、結局、感染経路、他の微生物や疾患との対比しかないですよね。 新型コロナウイルスが、他のどんな微生物と暴れるとし...

色々な情報が上がってきていますが、結局、感染経路、他の微生物や疾患との対比しかないですよね。
新型コロナウイルスが、他のどんな微生物と暴れるとしても、人間や人間社会そのものはいきなり変わるわけでもありません。
最小限と最大限を考えて、個人も組織も自分を見失わない程度にマイペースで準備していくしかないでしょう。

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