今井一彰「はじめよう上流医療 あいうべ体操で元気な体」
医療・健康・介護のコラム
20年悩んだ頑固な下肢の出血 原因は思いがけない場所に
「このまま死んでいくのはつらいんです」
傘寿(80歳)の大台を目の前に控えたSさんが開口一番、こう私に告げたのは年始の大寒に近い、一年でも一番寒い日のことでした。
「先生、この脚のせいで外出もままならないんです。このまま死を迎えるのはつらすぎます。何とかしてください」
Sさんは、慢性色素性紫斑という病気を発症してしまいました。血管が弱くなり、破れてしまって血液がもれ出す病気です。血液がたまりやすい下肢に、症状が出やすいのが特徴です。Sさんには、さらに腎硬化症、痛風の持病があります。
生活の満足度落とす慢性色素性紫斑
この病気には20年前から気がついていたのですが、命には別状がないため、経過観察をするという程度でした。Sさんはインターネットを駆使して、いろいろな情報を集めましたが、あまり有益なものは見つかりませんでした。
命の危険はないかも知れませんが、両脚に赤い発疹が広がっているのは見た目にもつらく、皮膚がかゆかったり、熱を持ったりして不快です。このような、生活の満足度を落とす病気というのもやっかいです。他人から見たら「死ぬこともないんだし、痛いとかの症状が出るわけでもないし」と思われるのでしょうが、Sさんの悩む姿を前にして、そんなことを軽々しくいって勇気づけるわけにもいきません。
ちょっとここで、慢性色素性紫斑について簡単に説明しましょう。中年期以降に両脚、それも 下腿 の前側に小さな点状の出血斑が見られる病気です。血液は体の下の方にたまりやすいので脚に病変が出るのです。普通の湿疹と違うのは、赤くなったところを押しても退色しない(もとの皮膚の色に戻らない)ところです。原因は加齢による血管の 脆弱 性(もろくなる)やアレルギーの関与なども言われますが、病巣疾患が関係しているときがあります。
治療ははっきりと定まっておらず、弾性ストッキングをはいて血液が溜まらないようにする対症療法がとられます。Sさんも、ぎゅっと皮膚を圧迫するロングタイプのソックスをはいていましたが、それでも出血斑が消えたり、少なくなったりすることはありませんでした。
原因は? 病巣疾患?
Sさんが私のクリニックに来た理由は「どこに病巣があるか調べてもらいたい」というものでした。今はいろんな病気のことがすぐにインターネットで検索できます。良い情報も悪い情報もありますし、誰が書いたのか分からない記事も多いですね。まさに玉石混交です。ましてや慢性色素性紫斑というマイナーな病気のことなど詳しくは載っていません。それでも根気よく検索していくうちに、病巣疾患からもこの病気が起こることを知り、もしかしたら自分も良くなるのではとわずかな望みをかけたのです。
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