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医療・健康・介護のコラム

「健口」で健康(9)親知らず抜き虫歯予防

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  このシリーズでは、予防歯科学が専門の大阪大歯学部教授、天野敦雄さんに聞きます。(聞き手・佐々木栄)

「健口」で健康(9)親知らず抜き虫歯予防

 口の一番奥に最後に生えてくる上下左右4本の「親知らず」は、正式には第3大臼歯といいます。呼び名の由来は、生えるのが20歳前後と遅く親が気づかないから、とか、昔はこの歯が生える頃にはすでに親をなくしていたから、など諸説あります。

 昔の人はあごが大きく、親知らずが生えるのに十分なスペースがありました。現代人はあごが小さいため、斜めに生えたり埋まったままになったりします。

 では、抜いた方がいいのでしょうか。ここで私の体験を紹介しましょう。下の親知らずが左右とも斜めに生え、歯ぐきから少しだけ顔を出していました。専門家から見れば、「最悪の生え方」です。

 右側は歯学部の学生時代にクラスメートの練習台として差し出しました。左側は抜かなかったのですが、米国留学中の34歳の頃、ひどく痛み始めました。検査の結果、親知らずだけではなく手前の大臼歯もむし歯になっていました。結局2本とも抜く羽目になり、先延ばししたことを後悔しましたね。

 抜く方がいいのは、斜めに生えるなどしてうまく歯磨きできず、むし歯になる場合です。歯ぐきの下に隠れていると手前の歯が押され、歯並びにも影響しかねません。放置すると腫れや痛み、骨のやせにもつながります。

 「親知らずの抜歯は痛い」と恐れる人もいますが、麻酔で痛みは感じません。麻酔が切れても鎮痛剤で抑えられます。ちなみに、「親知らずを抜くと小顔になる」という話もありますが、あながち間違いでもなさそうです。周囲の骨や筋肉が減り、下あごの辺りが小さくなる可能性があるためです。

【略歴】
 天野 敦雄(あまの あつお)
 大阪大学歯学部教授。高知市出身。1984年、大阪大学歯学部卒業。ニューヨーク州立大学歯学部博士研究員、大阪大学歯学部付属病院講師などを経て、2000年、同大学教授。15年から今年3月まで歯学部長を務めた。専門は予防歯科学。市民向けの講演や執筆も多く、軽妙な語り口・文体が好評を得ている。

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