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40代から備えよう「老後のお金」 楢戸ひかる

医療・健康・介護のコラム

「聞こえ」の改善は、うつや認知症進行の予防にも!?…知っておきたい補聴器利用のポイント

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 「あれ!? 今までと何か違う……」。40代くらいの人なら、老親との会話の中で、そう感じることがあるのではないでしょうか?「もしかして、耳が聞こえづらいのかな?」と思ったら、早めにチェックすることが必要です。

「聞こえ」の改善は、うつや認知症進行の予防にも!?…知っておきたい補聴器利用のポイント

イラスト:赤田咲子

補聴器の必要を感じる「70歳」

 「人との会話が続かない」「ふさぎこんだかと思うと、大声で話し出したりする」「テレビの音量のことで家族とケンカをする」……。親御さんにそんなことが増えていたら、「聞こえ」に問題があるのかもしれません。

 一般社団法人日本補聴器工業会の「 JapanTrak2018調査報告 」によれば、補聴器を持っている人が「補聴器が必要だ」と感じた年齢の中央値は70歳です。

 高齢者の耳が遠い……。よくあることと見過ごされがちですが、難聴による家族とのディスコミュニケーション、実は大きな問題なのではないでしょうか? 海外では補聴器の利用を促進することで、周囲とのコミュニケーションが改善され、うつや認知症の進行を予防するという考え方もあるようです。

補聴器平均価格は15万円

 では、実際に補聴器を購入する場合、どれくらいの費用がかかるのでしょうか?

 前出の調査報告によると1台の平均価格は 15万円でしたが、補聴器の専門店である「聞こえの田中」の林麻夕美さんによれば、「良質な性能のものは、両耳で37万~80万円程度が相場です」とのこと。補聴器って、高額なんですね……。

 それでも、補聴器を使っている人の89%が、補聴器の使用により生活の質(QOL)が上がったとしています。「子供とコミュニケーションがうまくとれるようになった」「友達と食事に行くのが 億劫(おっくう) だったが、今は全部行くようになった」……。当事者の声を聞いてみると、「聞こえづらい」という状況は大変! だと実感します。

お試しサービスやリースも

 私が最も気になったのは、難聴に気づいてから補聴器を購入するまでに平均4~6年が経過している点です。

 聞こえづらさを自覚した人の42%がドクターに相談していますが、補聴器を勧められたのは14%でした。ドクターに相談しても、「聞こえ」改善につながらない場合は、補聴器の専門店に行ってみるのもひとつの方法です。

 気にいった補聴器に出会えたら、お試しサービスを体験をすることができるお店も増えてきました。

●体験サービスができるお店 例)
店名 費用
メガネの愛眼 2週間3000円~(税込)
ヒヤリングストア 2週間無料
メガネの田中(聞こえの田中) 1か月3000円(税抜き)

筆者作成

 「補聴器は、コンタクトレンズや眼鏡のように、『決まった度数の機種がある』というものではありません。自分の聞こえ方、聞こえに関するニーズをしっかりとヒアリングして、一人一人に最適な聞こえをプログラムしてくれるお店を選ぶことが大事です」(林さん)

 また、聞こえの田中では、気にいった補聴器の貸与サービスも提供しています。月額9000円からの定額制で、メンテナンスはもちろん、毎月のカウンセリングもあるので、聞こえを安定的に保つことができるそうです。「自分が感じていることと、家族が感じていることにギャップがある場合もあり、カウンセリングは、家族と一緒に受けることをお勧めしています」(林さん)とのことです。

補聴器は医療機器

 購入する場合であまり知られていない利点としては、補聴器は医療機器なので消費税がかからないということです。一方、集音器は医療機器ではなく、課税対象となるため、注意が必要です。

 前出の調査報告によると、使用者の約1割強は、公的助成(障害者総合支援法または自治体独自の支援制度)を受けています。補聴器を使ったことのない人に聞くと、公的助成の存在を知っているのは7%。「補聴器が公的助成の対象になりえる」ということは知っていた方が良さそうですね。

 補聴器が医療費控除の対象になる場合もあります。ただし、医師の「診療情報提供書」が必要で、最終的には税務署の判断になります。「必ず医療費控除の対象になる」とは言い難いものの、「医療控除の対象になりえる」という知識は持っておいて損はなさそうです。

知っておきたい補聴器購入のポイント

  1. 補聴器は公的助成の対象になることもある
  2. 「補聴器」と「集音器」では消費税に違いがある
  3. 「診療情報提供書」があれば医療費控除の対象になることもある

 筆者作成

 親と過ごす残された時間を後悔のないものにしたい……。40代は、そんなことを考え始める時期です。家族の語り合いのために、聞こえに関する適切な情報やサービスを知っておくことが大切ですね。(楢戸ひかる マネーライター)

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narato-hikaru_prof

楢戸 ひかる(ならと・ひかる)

マネーライター
 1969年生まれ。大手商社に勤務後、90年代よりマネー記事を執筆。「誰もが安心してお金のことを学ぶ場」である「お金のリビング」を主宰。その入り口として、「ザックリ家計簿」ワークショップをオンラインにて開講中。詳しくはホームページ「主婦er」で。
 お金の記事だけでなく、「家族」や「暮らし」についてもコンテンツ更新中。

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