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脳梗塞 もやもや病かも…血流補う手術 有効

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 脳の血管が詰まる脳 梗塞こうそく の多くは、加齢に伴う動脈硬化によるものだ。これが子どもや若い人に起きたなら、「もやもや病」の可能性がある。進行を抑えきれない難病だが、近年はバイパス手術の治療成績が向上している。(矢沢寛茂)

脳梗塞 もやもや病かも…血流補う手術 有効

  網の目状の血管

 病名は、脳内に網の目状に広がった異常な血管が、かつての検査画像で、たばこの煙のようにもやもやと見えたことに由来する。

 片方の手足や顔がしびれて動かしにくくなる、言葉を出せなくなる、というのが主な症状。数十秒から数十分続く。吐き気を伴う重い頭痛を訴える人も少なくない。その引き金となるのが、大泣きする、熱い食べ物に息を吹きかけて冷ます、縦笛を吹く、などの動作である点が特徴的だ。

 脳の一時的な血液不足(脳虚血)によるもので、しばらくすれば多くは回復する。ただ、脳梗塞の前兆とも言うべき状態なので放置は禁物だ。実際、網の目状の血管が破れて出血する恐れがある。

 大人の患者の半数は脳出血を起こして初めて、もやもや病と診断される。その後も高い確率で出血を繰り返す。脳の後ろ半分で起きる出血は、再発のリスクが高いとされる。命に関わる病気として対処すべきだ。

 発症の仕組みはどうなっているのだろう。

 左右の脳に血液を送る2本の 内頸ないけい 動脈は、目の後ろ辺りで前大脳動脈と中大脳動脈に枝分かれしている。ところが何らかの原因で、分岐点付近の血管が狭くなって血流が滞ると、血液を脳に届けようと周囲に細い血管ができる。これが網の目状に見える理由だ。

  国内患者1万6000人

 患者は東アジアに多く、日本は約1万6000人と推定される。女性が多く、患者のほぼ3人に2人を占める。年齢別では5歳前後と30~40歳代にピークがあり、小児はほとんどが脳虚血、成人は脳虚血と脳出血が半々だ。

 近年、この病気を起こしやすい遺伝子異常が見つかり、研究が盛んに行われているが、詳しい原因は解明されていない。

 治療は、脳虚血の症状がある場合、血栓を作る血小板の働きを抑え、血流を改善する薬のアスピリンなどを服用する。ただ、効果は限られるため、頭皮を走る血管を脳内に引き込み、血液が滞る血管につないで血流を補う、「脳血管バイパス手術」が行われる。

 脳虚血の治療として始まったこの手術の導入で、脳梗塞になるリスクは大きく低下した。脳の後ろ半分で起きる危険性の高い出血にも、予防効果があることが最近分かってきた。今後の標準的な治療になると考えられている。

 また、頭蓋骨に張り付いている筋肉や頭皮の血管の一部をはがし、脳の表面に密着させて血管再生を促す「間接バイパス手術」もある。手術後、日常生活での制限は多くないが、たばこは血流が悪くなるのでやめた方がよい。脱水状態も危険なため、サウナや岩盤浴、過度な飲酒は控える。

 高橋淳・国立循環器病研究センター脳神経外科部長は「国内での長年の研究により、治療や診断の技術は大きく進歩したが、いまだに予防法はない。脳梗塞や脳出血を防ぐためにも、早期発見と適切な治療が大切だ」と話している。

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