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介護の人材 質と量を同時に向上させるイノベーションとは…山田尋志・社会福祉法人リガーレ暮らしの架け橋理事長

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人手不足の介護に”助っ人”採用 活路は業務・人材の再編と大学教育にあり…山田尋志・リガーレ暮らしの架け橋理事長に聞く

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専門性に見合った介護報酬、賃金の引き上げ

  ――介護職員の数が減るなら、1人あたりの賃金を引き上げることができるのでは?

 その通りです。例えば、認知症や要介護3以上の中重度の人のケアは、相応の専門性が要求されます。それに見合う賃金を出す助けになると期待しています。

 介護アテンド職の力を借りながら、介護職員の賃金を上げるという考えには、批判もあるでしょう。私自身も決して本意ではなく、限られたパイの中でやりくりする苦肉の策ですが、これも限界がある。全体のパイ、つまり介護報酬を引き上げる努力もお願いしたい。バラマキではなく、働きを正当に評価してほしいのです。

国公立大に介護の学部・大学院を

  ――高度な専門職とは? どういう人材をイメージしていますか。

 認知症の人や中重度の要介護の人の暮らしを支えるには、解剖生理学や薬、リハビリなど、看護師と同レベルの知識は必須です。そのうえで、介護チームのリーダーとなり、他職種や住民と連携し、利用者一人ひとりの支援にとどまらず地域のマネジメントやプロデュースを担う力も身につけてもらいたい。

 業務の合間の研修で、それらを学ぶのは、なかなか難しいでしょう。大学での専門教育とするべきだと考えています。国公立大に介護の学部と大学院を設け、介護理論を確立して、教育、研究を行う体制を整えるとともに、指導者を育てることが急務です。

 まずは京都府立大に学部・大学院を作るよう、府に要望を続けています。いくつかの都道府県立大での実績があれば、介護福祉士養成のあり方について、国の方針が転換する可能性も出てくると期待しています。

 こうした人材には、介護福祉士のさらに上位に当たる資格も用意すべきです。看護師に優るとも劣らない専門性があるのですから、賃金水準も看護師と同等以上というのが妥当でしょう。そうなれば、大学を出た優秀な若者が介護の仕事を目指すようになり、親御さんや先生も、応援してくれるようになるのではないでしょうか。

  ――現在の介護業界では、資格や経験、経歴が全く異なる人が同じ仕事をしていることも多く、賃金にもあまり差がないと言われています。

 例えば、訪問介護には身体介護と生活援助があります。生活援助を例にとれば、家事だけでなく、利用者本人はもちろん家族や近隣住民と関係性を作り、日々の状態の変化などを見てとる目が求められます。これも一つの専門性といえます。

 一方、身体介護は、一定の状態を超えると家族の負担の限界などで、在宅生活の継続が困難になる場合が多いのが実情です。認知症と身体の複合障害、慢性疾患との合併など、重度の障害高齢者が地域で暮らし続けるのを支えるには、小規模多機能のような、24時間365日の包括報酬型在宅サービス、あるいは施設が中心になります。

 それらの仕組みの中で、介護のさまざまな業務と人材や資格を抜本的に再編成し、どの仕事をどういう人材が担い、その働きに対してどれだけの賃金が支払われるべきなのかを整理する必要があります。介護アテンド職の例からも分かるように、新しい役割を作り出すことで、高度な専門職である介護福祉士が本来の業務に専念できるようにしてケアの質を上げるとともに、それぞれの働きに見合う報酬体系に組み替えることが必要です。その結果、介護のイメージが上がり、目指す人も増えるでしょう。

 少子高齢化で、介護ニーズが増えるのに担い手は減っていくのだから、これまでのやり方を続けていたら、必ず立ちゆかなくなります。今こそイノベーションが求められているのです。

やまだ・ひろし 1946年京都市生まれ。自治体職員、企業経営などを経て、34歳から同市内の社会福祉法人に勤務し、施設・法人経営に当たる。京都市老人福祉施設協議会会長などを歴任。2006年にNPO法人介護人材キャリア開発機構、17年には社会福祉法人リガーレ暮らしの架け橋を設立し、理事長に就任。立命館大、同志社大非常勤講師などを務め、大学で教壇に立つ機会も多い。

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