介護の人材 質と量を同時に向上させるイノベーションとは…山田尋志・社会福祉法人リガーレ暮らしの架け橋理事長
インタビューズ
人手不足の介護に”助っ人”採用 活路は業務・人材の再編と大学教育にあり…山田尋志・リガーレ暮らしの架け橋理事長に聞く
資格不要の「介護アテンド職」 副業解禁が追い風に
――介護の現場に、新しい職種を導入したそうですね。
介護アテンド職のことですね。8年前から温めていた構想を、19年4月にオープンした特養で、やっと実現したのです。
地域の人に、利用者の見守りや話し相手、食事の配膳、掃除やシーツ交換、買い物や散歩の同行、レクリエーションなどを担当してもらいます。これが大人気で、オープニングスタッフということもあったのかもしれませんが、10人の募集に30人も集まりました。
――人手が不足している業種の筆頭とされる介護の仕事に、人が殺到するなんて……にわかには信じがたいです。
人の暮らしを支えたい、という思いが、多くの人の中に潜在的にあったんでしょうね。「資格はいりません、週に半日でもOK」としたことで、そうしたニーズが表に出てきたのだと思います。
「介護の専門職の補助ではなく、別の役割である」と、明確に打ち出したのも奏功したのではないでしょうか。高齢者の暮らしを支える上で、介護職員とは異なる役割として互いに敬意を払い、チームワークはきわめて良好です。
京都府立大の先生に調査してもらったところ、介護職員だけのフロアよりも、介護アテンド職が交じっているフロアの方が、わずかですが排せつや入浴の介助など、利用者に触れる介護にかける時間が長くなっていたので驚きました。
さらに調査を重ねる必要がありますが、もしこのデータが実態を反映しているのであれば、おそらく、食堂やリビングなどの公共スペースを中心に常に介護アテンド職がユニット全体を見守ってくれているので、介護職員が一人ひとりの介護に集中できるのではないでしょうか。
――介護アテンド職の賃金はどう設定しているのですか。
時間給920円で、京都市の最低賃金を少し上回る金額です。副業が認められるようになった学校の先生など、他に仕事を持っている方や、資格は不要で空いた時間を使えるので、この賃金でもやりたいという方が応募してくださったのだと思います。
街中の施設ですので、ご近所の若者も来てくれていますし、リタイア後の高齢者にもこれまでの社会経験を生かしていただける仕事ですから、地域の雇用創出にもつながると思います。もちろん、認知症や、介護職員の仕事について知っていただくことも必要ですし、対人支援の基本やチームワークなども大切な要件ですので、研修体系の組み立てなどがこれからの課題だと思っています。
――人材確保の効果は、どの程度、期待できるでしょうか。
介護福祉士など高度な専門職と、いわば家族代わりの介護アテンド職を組み合わせることにより、介護職員総数の3割程度を高度専門職から置き換えることが可能になると考えています。介護保険の基準で、特養では利用者3人に対し介護・看護職員1人以上(常勤換算)と決められていますが、実際にはもっと人手が必要で、どの施設もだいたい利用者2人に対し職員1人、あるいはそれ以上の配置をしている場合が多いのです。介護福祉士の資格を持つ介護職員で3対1の基準を満たし、あとは介護アテンド職に入ってもらって、全体で1.5~2対1になるようにすれば、高度な専門職の配置を見直すことができます。同時に、高齢者の暮らし全体をみるという、介護施設の本来の役割を強化することにもなり、ケアの質を上げることが可能なのです。
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