yomiDr.編集室より
医療・健康・介護のコラム
介護の仕事が若者に人気! 小学生限定ですが…
子どもたちが様々な職業を疑似体験するテーマパーク「キッザニア」。その甲子園(兵庫県)の施設に今春、介護福祉士のパビリオンが誕生します。
全国で働く介護職員は、今や180万人を超えています。キッザニアに集まる約100種の職業に、これまで介護が含まれていなかったことの方が驚きなのかもしれません。遅まきでも、「介護の仕事をやってみたい」という子どもがたくさんいる(と、事業者側が判断した)と思うと、長年、介護を担当してきた記者としてはうれしい限りです。
本物の老人ホームで職業体験
そこへ、「ある老人ホームで、キッザニアさながらに、小学生が介護の仕事に挑戦するイベントが開かれている」という話を耳にしました。その名も「キッザケア」。兵庫県内で高齢者施設や保育所、さらには有機農園も運営する社会福祉法人あかねが、年に1~2回、開催してきたというのです。
法人が本部を構える阪神電鉄尼崎駅は、キッザニア最寄りの甲子園駅から各駅停車でも10分足らずと、場所もかなり近いようです。なんだかややこしいのですが、イベントはキッザニアとは関わりのない、独自の取り組みだとか。京都出張の折に、足を延ばして担当者を訪ねてみました。
未来に種をまく
少子高齢化で、介護業界は空前の人手不足に苦しんでいます。専門学校の学生らを対象とした施設見学のバスツアーや職場体験会、インターンシップなど、事業者と関係団体があの手この手で若者にアピールしていますが、小学生の職業体験は、聞いたことがありません。「青田買いにしても、ちょっと気が長いのでは……」と尋ねると、事業推進室の山本雅則室長が「将来にむけて、種をまいているんです」と、笑顔で答えます。
会場は、本部近くの特別養護老人ホームです。ゴールデンウィークや夏休みに開かれ、小学1年~4年の子どもたち計100人が、「介護士」「看護師」「管理栄養士」「保育士」の中から3職種を選んで、順番に体験します。
2015年に初めて開催された時には、体の不自由な高齢者と子どもたちが触れあう活動もあったのですが、安全面の配慮から、近年はスタッフや他の子どもが乗る車いすを押して、リフトを使って車に乗せるといった業務を体験しています。それでも子どもたちは、本物の施設の中でユニホームを着て働くことにワクワクしている様子が、写真からも見て取れます。
働いて給料をもらう喜びも
仕事を終えたら、独自の通貨「キュア」の紙幣で給料をもらい、施設内に設けた売店でお買い物。お菓子やおもちゃと一緒に並ぶ有機野菜を「お母さんへのお土産に」と選ぶ子もいるとか。
子どもたちへのアンケートでは、いずれの職種も9割近くが「楽しい」あるいは「すごく楽しい」と回答しています。「いちばん楽しかったこと」として、車いすの介助を挙げた子も多く、「車いすでお世話をしたら、ありがとうと言ってもらえてうれしかった」という声も。将来なりたい職業を書き込む欄に、「介護士」という文字もちらほら見えます。このうち何人が、その気持ちを大人になるまで持ち続けているか分かりませんが、小さな種が確かにまかれていると感じました。
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