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【がんと生きる~こころとからだ 私らしく~】(下)患者会の笑顔に救い

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最終章どう向き合う

  町永  患者の一番の不安は、孤立です。がんになったことで、自身の殻に閉じこもってしまう。患者につながろうという取り組みをしている田村さんにうかがいます。

  田村  約4年半前から、京都の町家で、「ともいき京都」という活動をしています。患者、地域住民、家族、遺族らの集まりです。月2回、ワークショップをしています。一歩踏み出したいけど、怖いと思っている患者、家族のステップアップのプログラムになったらいいと思っています。

  町永  「ともいき京都」は社会を凝縮したような取り組みです。社会の目指す方向かもしれません。大塚さんは看護師として長いキャリアがありました。看護師として、患者として、どんなことを感じましたか。

【がんと生きる~こころとからだ 私らしく~】(下)患者会の笑顔に救い

大塚尊子さん

  大塚  看護師の時は、一生懸命やってきた自負がありました。患者になって、看護師として見ていた患者さんの心の状態とは違うと感じています。36年間、現場にいた看護師で、がん末期のサバイバーでもある私には、できることがあると思い、患者に寄り添うボランティアをしています。

  宮本  私が患者会に入ったのは、胃を切った後に激しい下痢がいつまでも止まらなかったからです。主治医に「そのうち治まる」と言われても、 に落ちません。患者会で聞くと、「そんなの何年たっても起こるよ」と言われました。笑顔に救われました。

多くの支え気持ち安定 町永 同じがん患者だから、できることもあります。苦しい人がいたら手を差し伸べたい。大塚さんも苦しい方の立場ですよね。

  大塚  そうですが、手を差し伸べてくれる人が多くいてくれて、支えていただいている感じが自分の中で生まれてくる。不思議ですが、安寧、安定した気持ちになります。

   患者は選択の連続で、決断を迫られる時は、解決のための言葉がほしい。でも、終末期には向き合いたくないものに向き合うという場面がある。他人の力で解決できることではなく、(患者本人を)待ってあげることも大事。その時にこそ、寄り添ってくれる人がいれば、安心して向かってみようかという一歩が踏み出せるかもしれないと思います。

  田村  患者の状況が変わっていく中で、できることは本当にないなと思う。白衣を着ている私としては……。でも「ともいき京都」での白衣を着ていない素の私は、「できひんけど、まあいいか」という気持ちになる。医療者としてのありようと、個人としての私の覚悟のありようも、おそらく違うと思います。

  町永  個人個人がどう考えるか……。

谷野裕一さん

  谷野  私は、患者に必要だと思うことは全部やりたい。治療開発のほか、人生の最終章を自己決定する「アドバンス・ケア・プランニング(ACP=人生会議)」を病院で実践しています。

 患者自身や、地域の力を借りないとできないこともあるので、和歌山でNPO法人を作って、がんを経験した人が患者らを支援する「ピアサポーター」の養成もしています。

  田村  ACPは自らが死を事前に考えておこうという活動です。日本ではどちらかというと医療主体でスタートしているので、医療者の説明を聞いてから考えようという雰囲気が強い。実際には一人一人が今後の人生を全うしていくために、自分が信頼できる人たちに伝えていく一つの方法かなと思います。

  町永  日本は超高齢社会。裏返せば多死社会です。多くの人が亡くなっていく中で、どういうふうに生きて、どういうふうな最終盤を迎えるのか。自分のこととして考える時、実はわからない。

  宮本  「お隣のおばあちゃん、少ししんどそうだから、こうしてあげよう」とか、自分の体を使ってどうしていくのか。言葉がけ一つでもいい。そういうものを寄せ集めると、次の時代にまた新しいものが生まれる気がしました。

意思周りも理解を

   終末期に正解があるわけではなくて、一生懸命考えて導き出したことが、その人にはベストだったということを、周りも理解することが大事。自分の人生を考えることが、周りの人に残せることなのかもしれないと考えました。

  大塚  私は医師や看護師、薬剤師、整体師らに助けてもらっているけれど、それは私が今後も自分らしく生きていくためのプロジェクト。最終決断は絶対に私がしようと思っています。私自身も、ボランティアとしてかかわっている患者のプロジェクトメンバーになりたいと思っています。

  田村  大塚さんの話を聞きながら、関係性の中で意思決定をしていく自律、関係性の中にある自律という考え(リレーショナル・オートノミー)を思い出しました。自分で自分のことを決めるオートノミーは、一番価値があることだと西洋では言われています。日本でも新しい考え方を作りながら、一人一人が納得できる社会になっていく予感がします。

サポーター増やしたい

町永俊雄さん

  谷野  父が約30年前に肺がんで入院した時、病院は楽しかったけれど、家に帰ってきてからはつまらないと言った。4人部屋で、同室の人にお茶をついであげて、それがよかった。家に帰ると、してもらうばかりで面白くないと。自分が何かをすることで誰かが喜んでくれて、「よかったな」と思うのがその人らしさでしょう。患者と一緒にサポーターを作り、増やしていくことを考えたいと思いました。

  町永  いわゆる関係者ではない人をどうやって巻き込んでいくか、でしょうか。

  谷野  患者は、人を巻き込める力を持っています。患者がそういう人を作って、その人が何かをして、患者がまた喜ぶのを見る。「私も役に立った」と思うとよい循環が生まれてくる。この循環を作っていけたらいいなと思います。

患者の気持ち尊重しケア ビデオで事例

 患者が前向きになったり、医療者側が患者の気持ちを理解して心のケアにつなげたりしている四つの事例がビデオで紹介された。

  事例1  乳がんから肺などに転移が見つかった女性は、抗がん剤の副作用で仕事が手に着かないこともあった。主治医と相談し、薬の量を減らし、仕事との両立を果たしている。悩みの脱毛も、病院のヘアサロンで理容師から医療用かつらのアドバイスを受けた。カットもする。女性は新しい自分を発見した。

  事例2  パネリストの大塚さんは1年前から、緩和ケア病棟で患者の話し相手をしている。昔話などに花が咲く一方で、大塚さんは患者の心の奥のつらさも感じ取った。

  事例3  患者や家族はどんな思いをしているのか。医療者側が追体験するゲームを医師らが考案した。余命半年の患者が主人公。治療やお金、葬儀などに関するカードの中から不要と思うカードを捨て、必要と思うカードと入れ替えていく。最後に手元に残ったカードが自分にとって必要なもの。ゲームの後、参加者は、そのカードを残した理由を話し合う。

  事例4   膵臓すいぞう がんの男性。吐き気を和らげるため、医師が鼻から入れた管でおなかに栄養を送る提案をした。男性は自分の意思で管を入れない選択をした。

 医師の勧めで家族は男性を囲んで話をした。闘病の姿を見続けてきた娘は「『前向きに何でも楽しんで』という父の言葉を心に刻んでいきたい」と語った。

患者団体活動紹介

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兵庫県がん患者団体紹介コーナーでスタッフの説明を聞く参加者(左側)

 フォーラムに合わせて、兵庫県の患者団体などが活動を紹介するチラシを配った。患者や家族の相談や、漢方薬の効用などの展示もあった

 甲状腺がんや肝臓がんなどになり、7回も手術をした兵庫県伊丹市の明路英雄さん(80)は最初のがんが判明してからもうすぐ50年になるという。「治療を重ねて、命をつなげた。いろいろな人のおかげで今がある」と展示を見ながら話していた。

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