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たばこは「屋外」「換気扇の下」なら安心?…子どもへの影響

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 「たばこが健康に悪い」なんてことは、このご時世、改めて書くまでもない話かと思います。とはいえ、500年前のアメリカ大陸「発見」を機に、ヨーロッパに伝えられたこの植物は、当初、「あらゆる病気に効く万能薬」と信じられ、もてはやされました 1) 。信じられないかもしれませんが、今から50年余り前の1966年(昭和41年)、日本の成人男性の84%が喫煙者でした。

 かつて万能薬とまで信じられていたたばこは、皮肉なことに、その後の研究により、現在は肺がんや心筋 梗塞(こうそく) をはじめ多くの病気の原因であることが分かってきました。喫煙率も年々下がり、現在は約28%(2018年)となっています 2) 。たばこの煙には、実に4300種類の化学物質、約70種類の発がん物質が含まれていることが分かっています 3)

 たばこの煙は、肺の中に吸入される主流煙と、火のついた先端から立ち上る副流煙に分けられ、有害物質は副流煙の方が多いとされています 4) 。これが「受動喫煙」が問題となるゆえんで、たばこを吸わない子どもにも大きな影響を及ぼします。今回は、たばこと子どもの影響について書いてみたいと思います。

たばこは「屋外」「換気扇の下」なら安心?…子どもへの影響

イラスト:江村康子

乳幼児突然死症候群のリスクにも

 受動喫煙とは、「自分の意思と無関係にたばこの煙を浴びること」。とくに、有害物質を分解する能力が低く、成長段階にある子どもは、大人よりも喫煙の影響を格段に受けやすいのです。子どもが受動喫煙にさらされると、肺炎などの下気道感染症や 喘息(ぜんそく) 、中耳炎の発症が増えるとされています 5) 。79本の研究をまとめた論文は、出産前の母親の喫煙は、生まれてくる赤ちゃんの喘息発症リスクを上げると報告しています 6) 。これは、母親自身の喫煙だけでなく、母が受動喫煙を受けた場合にも当てはまりますので、妊婦さん自身はもちろん、その周りの人たちも喫煙を避けなくてはいけません。

 このほか、受動喫煙がリスクとなる病気として、乳幼児突然死症候群(SIDS)があります。これは、今まで元気だった赤ちゃんが、突然、亡くなる病気です。何の予告もなく起こるSIDSは、原因不明であるがゆえに、乳児を持つご家族にとって、子育ての大きな不安のひとつです。

 原因は不明ですが、リスクを高める要因はいくつか分かっています。知られているのは「うつぶせ寝」ですが、親の喫煙もそのリスク要因の一つで、1997年の厚生省(当時)の疫学研究データによると、両親が喫煙していた場合のSIDSのリスクは4.7倍と報告されています 7) 。皆、SIDSを少しでも減らしたいと考えています。そのために、改善できるリスクには、しっかり対応することが大切。それが「親の禁煙」なのです。

空気清浄機や換気扇があっても

 「自宅に空気清浄機があるから大丈夫」という方もいらっしゃるかもしれません。しかし空気清浄機は、粒子状物質を除去できますが、ガス状物質は除去できません。たばこの煙にはガス状の有害物質も含まれ、空気清浄機では不十分です。

 「換気扇の下で吸っているから、子どもには大丈夫」という言葉を聞くこともあります。しかし、家庭での喫煙状況ごとに、子どもの尿に含まれる「コチニン」というたばこ由来の成分を測定した研究 8) では、そうではないことが報告されています。屋内でたばこを吸う保護者の子どもからは、禁煙家庭の15倍の濃度の成分が検出され、換気扇を回してその下で吸っていた場合でも、10倍以上の濃度で検出されました。換気扇にはたいした効果がなかったのです。

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坂本昌彦(さかもと・まさひこ)

 佐久総合病院佐久医療センター・小児科医長
 2004年名古屋大学医学部卒。愛知県や福島県で勤務した後、12年、タイ・マヒドン大学で熱帯医学研修。13年、ネパールの病院で小児科医として勤務。14年より現職。専門は小児救急、国際保健(渡航医学)。日本小児科学会、日本小児救急医学会、日本国際保健医療学会、日本国際小児保健学会に所属。日本小児科学会では小児救急委員、健やか親子21委員。小児科学会専門医、熱帯医学ディプロマ。現在は、保護者の啓発と救急外来の負担軽減を目的とした「教えて!ドクター」プロジェクトの責任者を務めている(同プロジェクトは18年度、キッズデザイン協議会会長賞、グッドデザイン賞を受賞)。

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