回想の現場
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昔懐かしい映画の思い出話に耳を傾け~都内で映画愛好者の会
古き良き日本映画の名優や製作者を招き、その当時の話を聞いて回想する団体の監名会の例会=主催・非営利組織(NPO)日本映画映像文化振興センター=が、2月20日、東京・京橋の国立映画アーカイブ本館で開かれました。この日の上映映画は黒澤明監督の名作「影武者」(1980年公開)で、映画を鑑賞した後、撮影監督の上田正治さん(82)=写真左=に当時の思い出話を聞きました。
監名会は81年以来、市川崑監督をはじめとする名匠、女優の吉永小百合さんら名優を毎回、ゆかりの映画上映とともにゲストとして呼び、当時の話を聞く会を開き続け、今回で143回を迎えました。
上田さんは1938年生まれで、56年に東宝に入社、71年に技師に昇格して数々の名画の撮影に携わってきました。黒澤作品では「影武者」を手始めに、「乱」「夢」「八月の狂詩曲」「まあだだよ」で撮影を担当。その後も名匠の下で撮影を続け、日本アカデミー賞最優秀撮影賞などを受賞し、現在も現役の撮影監督として活躍しています。
この日の会には、会員ら約40人が参加。2時間59分にも及ぶ「影武者」を鑑賞した後、上田さんが思い出話を披露しました。聞き手は、元キネマ旬報編集長の植草信和氏=同右=が務めました。上田さんが「今の日本映画と違って格がありますね」と語り、「今の日本映画はフィルムからデジタルになって撮影技術が伝承されず、ダメになった印象があります。映画らしい映画が作れない時代になりました」と明かすと、うなずきながら話に聞き入る会員の姿が多く見られました。
一方で、上田さんは撮影秘話も披露。「馬が倒れるシーンを撮影するときは、死体役の役者が馬から逃げようとして、黒澤監督に『死体は動くな!』と叱られていました」と笑いながら語ると、場内からも笑い声が起きました。また、「黒澤作品は封切り(最初の公開期間)だけでは製作費の元が取れないので、費用をまかなうには長い時間がかかるのです」とも苦笑交じりに話し、会員の笑いを誘っていました。
続けて上田さんは、「今になっても、こうして『影武者』を見てくれる人がいる。それだけの名画だと思います。そんな作品に携われて良かった」と語り、聴衆から拍手を受けていました。
参加者の一人は「テレビで見るのとは違って、スクリーンで改めてフィルムで見ると、この映画の素晴らしさを改めて感じます。公開から40年の歳月がたちましたが、裏話も聞けて、当時の若かった自分も思い出せて良い機会でした」と話していました。
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