夫と腎臓とわたし~夫婦間腎移植を選んだ二人の物語 もろずみ・はるか
医療・健康・介護のコラム
腎提供後、夫がダボダボのパンツだったワケ…移植から2年 ドナーの日記を読み返してみた
半年間もポコンと
移植後、しばらく苦しんだのは、おなかの張りだった。見た目は妊娠5か月といった感じ。スーツのジッパーが上がらず、タンスに仕舞い込んでいたダボダボのパンツで代用した。
「張りの原因は、気腹(手術中のガス注入)が原因と思われます。多くのドナーさんは、2週間程度でおさまりますが、これも個人差があるのでしょう」(石田先生)。夫のお腹は、結局、半年間もポコンと出っ張ったままだった。
夫にとっては、ダボダボのパンツよりも、趣味のジョギングをできないことがつらかったようだ。それまでの夫は、フルマラソンを年に3~4回もこなす市民ランナーだった。走れば、仕事のモヤモヤは吹き飛び、自分のペースを取り戻せた。それなのに、移植後は、軽くジョギングをするだけで左腹部が痛んだ。走れないストレスで、イライラを募らせた。気力まで失い、それが手術のせいなのか、40代になった「老い」のせいなのか、わからず戸惑ったという。
そうした苦しい時期を乗り越え、夫は、本来の自分を取り戻していった。腎機能は、1.22mg/dlまで回復し、1月のハーフマラソンで、ついに自己新記録を達成したのだった。
腎移植後、イケメン化が止まらない夫
現在、夫は41歳。数字だけ見れば、いい 歳 になってきたなと思うが、自分の夫が「おじさん」になっていることに気づいていない嫁は、案外少なくないように思う。私も例に漏れず、腎移植を経て肉体も心も強くなっていく夫のことを、過去最高のイケメンだと信じて疑わない。だって、本当に、日に日にカッコよくなるんです。
先日も、行きつけのカフェ店員の前で、夫のことを「青年」と言って、「さすがに『青年』はないっす!」とあきれられたばかり。親バカならぬ、嫁バカか……と、ここらへんでやめておこう。「ドナーになるということ」について真剣に語るつもりが、ただのノロケ話になってしまったことをおわびしたい。(もろずみはるか 医療コラムニスト)
監修 東京女子医科大学病院・石田英樹教授
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