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気象予報士ママの「健康注意報」 新見千雅

医療・健康・介護のコラム

乾燥肌に注意 保湿ケアをしましょう…乳児はなるべく早い段階から、かしこく保湿するコツは!?

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乾燥肌は経皮感作を起こす可能性もある

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写真はイメージ

 さて、乾燥肌はかゆみや肌荒れを引き起こして悩ましいですが、引き起こされる問題はさらにあるようです。

 近年では、乾燥や () き傷、湿疹等で肌のバリア機能が低下すると、肌から異物が侵入しやすくなることが分かってきています。特に注目されているのはアレルゲンの侵入です。アレルゲンの体内への侵入というと、鼻や口からというイメージが強いかもしれませんね。肌からアレルゲンが侵入して、排除しようとする免疫機能が働くことを「 経皮(けいひ)感作(かんさ) 」といいます。

 角質層を含む肌の一番外側の膜を表皮といい、この表皮には異物を認識して、攻撃することができるランゲルハンス細胞が存在しています。肌のバリア機能が低下すると、ランゲルハンス細胞が活性化してアレルギー反応を起こす可能性があるようです。

 従来、アトピーや食物などのアレルギーは、体質がアレルギーになりやすいから合併することがあると考えられていました。しかし近年では、アトピーで肌のバリアが低下したために、周辺にある食物が肌から侵入して経皮感作を起こし、食物アレルギーも引き起こすことがあると考えられています。

 アレルギーの発症原因はまだ分かっていないことが多いですが、最近では乳幼児の肌を保湿することが、アトピーや食物などのアレルギー発症の予防につながる可能性があると考えられています。

肌の保湿ケア

 肌の乾燥を防ぎ、バリア機能を保つことは、経皮感作の予防につながります。

 特に乳児はなるべく早い段階からのスキンケアがすすめられています。

 近年では新生児期からの保湿ケアを進めている医療施設もあります。

 まず、体を洗う時には皮脂膜やセラミドを流しすぎないようにしましょう。肌の状態が良く、特別な汚れなどがなければ、お湯のみでも汚れは十分落ちるため、せっけんは必ずしも使わなくてよいかもしれません。

 ただ、アトピー性皮膚炎の場合は、黄色ブドウ球菌や汗に含まれる悪化因子を洗い流すために、せっけんやボディーソープで洗浄する方がよいと言われています。

 せっけんやボディーソープを使う時は、スポンジなどでたっぷり泡立てて、肌をこすらないように手で優しくなでましょう。直接、肌の上でボディーソープやせっけんを泡立てると、肌が傷つきやすくなるので、泡立てたものを肌の上に置くようにするのもポイントです。

 また、お風呂の温度が熱すぎたり、入浴時間が長かったりするのも皮脂膜やセラミドが流れやすくなってしまいます。目安は38~39度、入浴時間は5分から10分です。

 ぬれた肌は特に刺激に敏感なので、お風呂から上がった時も、なるべく、こすらないように、タオルで優しく押すようにして水分を吸収させると、肌への負担が軽減できます。

 そして、一見、乾燥が気にならない部分も含めて、全身の保湿ケアをするといいでしょう。

 お風呂上がりには保湿剤を使うのが効果的です。

 肌のバリア機能の三つの因子に関係するスクワランやアミノ酸、セラミドなどを補うとよさそうです。ただし、保湿剤そのものがアレルゲンとなってしまわないように、無添加や刺激のないものを選びましょう。特に乳幼児の保湿剤選びは慎重なほうがよさそうです。

 体質や肌の状態によって、身体の洗い方や保湿剤の選び方に違いがあるようです。悩んだ時は、主治医の先生や、アレルギー専門の先生に相談するとよいでしょう。

 処方されることの多いワセリンは、皮脂の代わりになり皮脂膜を構成しやすく、ヘパリン類似物質は、角質層の細胞の中にある水分を保持しやすくなる効果が期待できます。

保湿剤の種類によって成分や役割が違うので、肌に合う物を選ぶといいでしょう。異なる保湿剤を組み合わせて使うことで、保湿効果が高くなることもあります。

 乳幼児は皮膚が薄く繊細なので、涙や汗、離乳食の食べこぼしでもかぶれやすいですよね。保湿するタイミングはお風呂上がり以外にも、身体を拭いたり着替えたりする時など、1日に2回程あるといいでしょう。

 また、肌の状態によっては、保湿だけでは治らないことがあります。

 かゆみが強く、掻き壊していたり、じゅくじゅくしたりしている場合は、湿疹が黄色ブドウ球菌やA群溶連菌に感染し、「とびひ」になってしまう可能性がありますので、受診した方がよいでしょう。

 保湿ケアの重要性は理解していても、乳幼児をお風呂に入れて寝かしつけるのは大人の体力が必要で、毎日のケアは負担に感じることもあると思います。とくに、2歳頃の活発な時期は、日常生活の色々なことに時間がかかるため、親の気力も必要ですよね。わが家も子どもがお風呂上がりに走り回るので、洋服を着せるだけで手いっぱいになることがありました。

 子どもの肌を保湿することは、肌のバリア機能を守る他に、親子のスキンシップにもなるメリットがあります。肌と肌で触れ合うスキンシップで、親子ともにオキシトシンという、情緒を司り幸福感を高めるホルモンが脳の下垂体から分泌されるそうです。リラックスすることで、寝かしつけがスムーズになるかもしれません。

 保湿ケアにはいろいろな効果が期待できるので、生活リズムに負担がかからないように継続できるといいですね。

 (新見千雅・日本気象協会 気象予報士)

  監修 鈴木孝太・愛知医科大学医学部教授(衛生学講座)

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気象予報士ママの「健康注意報」

新見 千雅(にいみ ちか)
日本気象協会 気象予報士

 呼吸器、透析分野で看護師として勤務した後、気象会社で原稿の作成やラジオ番組を担当。現在は、日本気象協会と株式会社JMDCが進めている、気象データとレセプト(医療報酬の明細書)データを使って、様々な疾患の発症・重症化リスクに関する情報を提供するサービス「Health Weather(R)(ヘルスウェザー)」プロジェクトに参加している。
 2児の母として、妊娠・出産・育児にまつわる天気のコラムを執筆中。


鈴木 孝太(すずき こうた)
愛知医科大学医学部 衛生学講座 教授

 1974年、東京都生まれ。2000年、山梨医科大学医学部卒。2005年、山梨医科大学大学院医学研究科修了(博士(医学))。2011年 、University of Sydney Master of Public Health (MPH) Coursework修了。山梨大学医学部助手、助教、特任准教授、准教授を経て、2016年から現職。専門分野は周産期から小児期にかけての疫学、産業保健、ヘルスプロモーション。
 最近は、「Health Weather(R)」と共同で、気象と健康に関する研究を実施している。



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