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在宅訪問管理栄養士しおじゅんのゆるっと楽しむ健康食生活

医療・健康・介護のコラム

ウイルスにも負けない!? 免疫力「アップ」よりも「低下させない」食生活のポイント

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 新型コロナウイルスのニュースが毎日報道され、不安から外出を控えている方が多いのではないでしょうか。日ごろ、私が訪問する患者さんには、冬場は「デイサービス以外は外に出ない」という方が少なくありません。呼吸器系の持病をお持ちの方、リウマチなどの自己免疫疾患のための薬を飲んでいる方などは、ウイルスや細菌に感染してしまうと重症化するリスクが高くなります。そのため、感染症が猛威をふるっている地域では、デイサービスすらもお休みする場合があります。

 そのような患者さんから最近よく聞かれるのは「免疫力アップの食事について」です。

「免疫力をアップする食事療法」はあるの?

 診察の場で、医師から患者さんへの説明に利用される「免疫力」という言葉ですが、実は医学用語にはありません。「免疫力が高い」というのは、「免疫機能が正常に機能している」「感染症に対する抵抗力がある」「体力がある」といった意味で使われる場面が多いと思います。

 したがって、免疫力を「高める」というよりも、本来自分が持っている免疫機能がしっかりと働くように体調を整えることが重要です。世間では「ビタミンCやAを取ればよい」とか「腸内環境を整える腸活をすればよい」はたまた「紅茶を飲めばよい」などと、さまざまな情報が飛び交っていますが、「免疫力を高める」といった科学的根拠のある食事療法は今のところありません。ビタミンやミネラルはバランスよく食べていれば自然に充足しますし、最近、よく話題になる「腸内環境を整える」といっても個人差が大きく、必ずしも特定の食品や食習慣で腸内細菌をコントロールできるとは限りません。

免疫力の低下を防ぎたいなら、無理なダイエットは控えて

 在宅医療を受けている方への訪問栄養指導で、患者さんの免疫機能を低下させないように、私自身が注意していることがあります。
それは、

  1. 栄養状態を良好に保つ
  2. 十分な水分を摂取する
  3. 口の中の衛生状態を保つ

の三つです。
 まず、栄養状態が低下すると、 誤嚥(ごえん) 性肺炎などの感染症にかかりやすくなります。年齢を問わず、体形がやせ形で食事量が少ない方は、体に必要な栄養が十分に取れていない可能性が高いので、食事だけでなく飲み物でもしっかりと栄養のあるものを摂取することを勧めています。牛乳たっぷりのカフェオレやポタージュスープなどで、水分と栄養も一緒に補給するといいですね。

 また、「貧血」がないかどうかも必ずチェックします。ひとことに貧血といっても、原因はさまざまで、かつて常識のように言われた「鉄を取りさえすれば改善する」わけではありません。鉄を取って治るのは「鉄欠乏性貧血」と診断された場合です。

 貧血があると全身に十分な酸素を送ることができずに、疲れやすくなり、体力が低下します。ひどいときには心拍数が上がって息切れすることもあります。たかが貧血と侮ってはいけません。

 無理なダイエットに励んでいる方の中には、鉄欠乏性貧血を起こしているケースが少なくありません。短い期間で何キログラムも体重を落とすために、食事を抜くなどして栄養摂取不足が続き、結果的に「体脂肪」だけでなく「体力」も低下してしまっては困ります。1か月で体重が5%以上低下すると、「栄養障害」と判定します。仮に体重が60キロの方の場合は、5%の体重減少は3キロにあたります。ダイエットをする場合は、運動と食事を組み合わせ、必要な栄養をしっかりと確保しながら減量することが大切です。

十分な水分摂取と歯磨きで口の中の衛生を

 目、耳、鼻、口の粘膜は外界に面しているので、粘膜にくっついた細菌やウイルス、異物を排除するという重要な役割があります。ところが、体の水分が少なくなり、「脱水状態」に陥ると、粘膜が乾燥して防御力が低下してしまいます。特に高齢者の場合は、のどの渇きに鈍感になり、こまめな水分補給をしない方がよくいらっしゃるので、冬場の脱水にも注意が必要です。

 唾液には、「粘膜保護作用」のほか、「抗菌作用」もあります。唾液の分泌が低下しやすい副作用がある薬(抗コリン作用を持つ薬や利尿薬など)を飲んでいる方は要注意です。これらの薬を服用していて、十分に水分を摂取していても口の渇きが気になる方は、かかりつけの薬剤師に相談してみてください。

 また、口腔乾燥の対処法は歯科医師や歯科衛生士に相談してみてはいかがでしょうか。口の中を保湿する「保湿ジェル」の使い方を指導してもらうことができます。

 今回のコラムで一番お伝えしたいことは、免疫力を低下させないようにするには、単に特定の食品やサプリメントを摂取するだけでは不十分だということです。むしろ特定の食品にとらわれて、食事のバランスが悪く栄養状態が低下しては本末転倒です。

 旬の食材を使ってバランスよく食事をすることは、当たり前のようで難しいですね。手っ取り早くなにかの食品に頼りたいという気持ちもよくわかります。しかし、常にバランスよく食べることを意識し、こまめな水分補給を心掛け、食後は念入りに歯磨きをすることから始めてはいかがでしょうか。(在宅訪問管理栄養士 塩野崎淳子)

参考文献:
  • Nutrition Reviews,vol.75,No.12.,pp.1059-1080,December2017
    「食事介入に対する腸内細菌叢と宿主呼応の個人差」
  • 『誤嚥性肺炎の予防とケア 7つの多面的アプローチをはじめよう』前田圭介著 医学書院
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塩野崎淳子(しおのざき・じゅんこ)

 「訪問栄養サポートセンター仙台(むらた日帰り外科手術WOCクリニック内)」在宅訪問管理栄養士

 1978年、大阪府生まれ。2001年、女子栄養大学栄養学部卒。栄養士・管理栄養士・介護支援専門員。長期療養型病院勤務を経て、2010年、訪問看護ステーションの介護支援専門員(ケアマネジャー)として在宅療養者の支援を行う。現在は在宅訪問管理栄養士として活動。

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