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Dr.イワケンの「感染症のリアル」

医療・健康・介護のコラム

新型コロナウイルス 崖っぷちの日本に活路はあるか

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クルーズ船の対応に課題

クルーズ船「ダイヤモンド・プリンセス」が停泊する大黒ふ頭を出発する救急車両

クルーズ船「ダイヤモンド・プリンセス」が停泊する大黒ふ頭を出発する救急車両

 さて、さらに大きな問題はクルーズ船です。

 豪華客船ダイヤモンド・プリンセス号が横浜入港を拒否されたのは2月4日のことです。同船に乗っていた香港出身の高齢男性が新型コロナウイルスに感染していたことが確認されたのです( https://www.newsweek.com/coronavirus-cruise-ship-quarantine-japan-yokohama-hong-kong-passenger-infected-1485575 )。

 この感染者は香港から中国本土に「数時間」滞在したのち、1月17日に日本に渡航。20日に横浜にて乗船、22日に鹿児島に寄った後、25日に香港で下船しました。2月1日に検査でコロナウイルス感染が判明したのです。

 ダイヤモンド・プリンセス号は日本で2004年に建造された豪華客船です。14年と19年に改装されました。乗客定員は2706人、乗組員数は1100人、英国籍の客船です。全長952フィート(約290メートル)、重量にして11万5000トン以上もあります( https://www.princesscruises.jp/ships/diamond-princess/ )。

 同日、この船は那覇市に寄港し、2月4日早朝に横浜に戻る予定でした。しかし、前述の感染報告を受けて3日午後に横浜市大黒ふ頭沖で停泊、検疫が開始されたのです(読売新聞オンライン2月4日)。2月1日時点で新型コロナ感染症は感染症法に基づく「指定感染症」および検疫法の「検疫感染症」に指定されていたのでした。

 2月4日の時点で、少なくとも10人程度が発熱などの症状を示していたといいます。2月5日、「検査対象」とされた273人中31人の検査結果が出て、うち10人でコロナウイルス感染が確認されました。検査対象者は香港の感染男性と同じバスツアーに参加した人、発熱やせきなどの有症状者、有症状者との濃厚接触者でした。

 2月7日の段階で検査した273人中61人が検査陽性者となりました。感染症病棟を有する医療機関への搬送が決まったのも同日です(厚労省発表  https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_09340.html )。翌日には追加6人の検査結果が出てそのうち3人が陽性となりました。

 結局、検疫のために乗客、乗員は2月5日から数えて14日間、19日までクルーズ船内で検疫の状態に入ることになりました。2月9日には336人が検査され、70人が陽性、10日には439人中135人に、そして12日には492人中174人の感染が確認されました。16日現在、感染者は350人以上が確認されています。

船内で連続感染が起きている可能性

 2月9日、10日の段階で、ぼくは「あれ、かなりやばいんじゃないか」と思うようになりました。

 クルーズ船は感染症に弱い乗り物です。閉じた空間に大量の人が起居し、何日も過ごします。過去にもレジオネラ症などいくつもの感染症アウトブレイクが報告されています(Jernigan DB, Hofmann J, Cetron MS, Nuorti JP, Fields BS, Benson RF, et al. Outbreak of Legionnaires’ disease among cruise ship passengers exposed to a contaminated whirlpool spa. The Lancet. 1996 Feb 24;347(9000):494-9.) 米国CDCはクルーズ内で下痢症が起きたときの船内浄化プログラムをすでに作っていて、過去のアウトブレイクのデータベースをウェブ上でアップしています( https://www.cdc.gov/nceh/vsp/surv/gilist.htm )。

 しかし、そのレジオネラのアウトブレイクも、患者数は約50人。100人以上の呼吸器感染症のアウトブレイクなど前代未聞です。

 それだけではありません。2月5日からクルーズ内は検疫体制に入り、同時に乗員の隔離が行われました。しかし、その後も感染者は繰り返し発見されます。

 これが2月4日までの感染の状態を可視化しているだけなら問題にはなりません。感染者と非感染者を観察期間の14日間で区別し、それぞれに対応すればよいだけだからです。

 しかし、もし2月5日以降も感染が起き続けているとすれば、これは大問題です。隔離対策の失敗を意味しますし、高齢者の多い乗客の重症化も懸念されます。

 そもそも、もし二次感染が起きていて、「クルーズ船の中にいるほうがむしろ危険」、ということになると検疫の意味そのものが根底から危うくなります。むしろ速やかに全員を下船させ、別な場所での隔離が必要になります。

 加えて、2月5日以降にも感染が起きているのならば、そもそも検疫期間と設定していた2月19日という日付そのものが意味を失います。それ以降に感染が起きていたら、それ以降を感染日として14日間の潜伏期間を再設定しなければならないからです。事実、米国や香港はクルーズ内の旅客を母国に搬送し、さらに14日の追加隔離期間を置くことを決めています。

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岩田健太郎(いわた・けんたろう)

神戸大学教授

1971年島根県生まれ。島根医科大学卒業。内科、感染症、漢方など国内外の専門医資格を持つ。ロンドン大学修士(感染症学)、博士(医学)。沖縄県立中部病院、ニューヨーク市セントルークス・ルーズベルト病院、同市ベスイスラエル・メディカルセンター、北京インターナショナルSOSクリニック、亀田総合病院(千葉県)を経て、2008年から現職。一般向け著書に「医学部に行きたいあなた、医学生のあなた、そしてその親が読むべき勉強の方法」(中外医学社)「感染症医が教える性の話」(ちくまプリマー新書)「ワクチンは怖くない」(光文社)「99.9%が誤用の抗生物質」(光文社新書)「食べ物のことはからだに訊け!」(ちくま新書)など。日本ソムリエ協会認定シニアワインエキスパートでもある。

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5件 のコメント

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検査対象の絞り込みと休校の何故を考える

寺田次郎 関西医大放射線科不名誉享受

新聞各紙にはピークを押し下げるイメージ図と休校のニュースばかり出ていますけど、結論だけ与えられても、その何故がよくわかりませんね。 SNSで検査...

新聞各紙にはピークを押し下げるイメージ図と休校のニュースばかり出ていますけど、結論だけ与えられても、その何故がよくわかりませんね。

SNSで検査の有無を巡る論争なども見ていますが、コロナウイルスの咽頭検査には保菌者、感染者、重症発症者の区別をつける能力がおそらくないので、圧倒的な感染能力を持つ新型コロナウイルスの前ではほとんど検査自体の意味がないという説明があれば多くの人は頭では理解できるのではないでしょうか。
そして、その強い感染力により、人ごみの中に居るということが、みなし保菌者になって、確率論で発症者を作ると考えれば、休校も分かります。
検査や治療は検査そのものや医療機関のパンクが目的ではなく、個々や集団の被害を最小限に抑えるためのものです。
その辺が、診断治療への期待や願望と現実の乖離のしがちなところで、医療の宗教性と多様性を勘案した多彩な説明や説得が大事になります。
人ごみの発生を抑えるために、全ての経済活動全体さえ押し下げたいところですが、政治経済として現実的ではありません。

感染力やその被害を最大限に見積もった時の対応として、今回の対応はおかしくないと思いますが、マイナー感染症や医療インフラの運用の実際がわからなければ、自分の日常や経済活動が侵害されたように感じるのも仕方ないと思います。
一方で、特効薬もなければ、類似疾患も含めたインフラが整ってない以上、他の不利益を飲んででも、感染や発症のスピードを遅らせつつ、対策を形作るしかないのではないかと思います。

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クルーズ船は本当に心配です。 厚労省が、「陰性として下船された23人は、2/5以降検査をしてなかった」として謝罪しましたが、ということは、2/6...

クルーズ船は本当に心配です。
厚労省が、「陰性として下船された23人は、2/5以降検査をしてなかった」として謝罪しましたが、ということは、2/6とか2/7に検査で陰性になった人は、それから船で10日以上も滞在されてるにも関わらず、陰性として問題なく下船して公共交通機関で帰って普通の生活に戻るのだと驚きました。クルーズ船の外国人は、日本で陰性でも、母国に帰ったら陽性だった人が続出し、母国で14日間に隔離する国がほとんどなのに、日本はあくまで、14日間の検疫(隔離)は成功したという姿勢を崩さないんですね。(再度の隔離が申し訳ないという気持ちはわかりますが)
神奈川県の病院など、すでに外国人を含んだダイヤモンドプリンセスのコロナウイルス陽性者をたくさん受け入れてるので、今後県民に感染が広がったときに、県民が医療を受けられるかという心配もでてきます。

また、船長の国籍、船籍、運行会社はそれぞれ別の外国なのに、日本が負担を抱え込んでしまったと良くなかったかと思います。
何千人もの多国籍の乗客乗員がいるのですから、乗客も多く運行会社のある米国等に協力を求めても良かったと思います。この何千人もの人数を安全に陸地で隔離する場所はなかなかないでしょうから、軍で持っているような船を提供してもらって、そこに安全に移して隔離するなどです。

船の運行会社の顔も、ほとんど見えませんでした。これが飛行機だったら、もっと航空会社が前面に出ると思います。ダイヤモンドプリンセスの運行会社が、隔離用にもう一隻汚染されてないクルーズ船を用意して、そこで隔離するとかできないのかなと思いました。船が一隻しかないなら、他の運行会社と、疫病が蔓延したときにお互い隔離用にクルーズ船を融通し合うという取り決めをしておくなどです。疫病が流行ったときに対応できるような船の構造にしておく必要もありますね。

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厚労省職員がクルーズ船に立入検査する姿などに違和感を持っていましたが、「CDCを持たない日本」の一言で現状に納得できました。今後は早急に代替組織...

厚労省職員がクルーズ船に立入検査する姿などに違和感を持っていましたが、「CDCを持たない日本」の一言で現状に納得できました。今後は早急に代替組織を立ち上げて科学的見地、および事実に即した感染拡大防止・早期収束を進めて頂きたい。併せて各企業・個人レベルでの対応も必須。

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