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Dr.三島の「眠ってトクする最新科学」

医療・健康・介護のコラム

不眠に効く、でも3トン食べないと!?…快眠サプリ・健康食品の現実

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 こんにちは。精神科医で睡眠専門医の三島和夫です。睡眠と健康に関する皆さんからのご質問に科学的見地からビシバシお答えします。

 「眠りには困っているけど、処方薬を服用するのは心配」。そんな方に人気なのが、快眠作用を (うた) ったサプリや健康食品です。これらの商品は、本当に効果があるのでしょうか? 今回は、食やサプリに関するちょっと辛口の話題です。

紹介サイトでは効果ありそうだけど…

 日本人は睡眠薬に対する不安が強く、「できれば服用したくない」という方が大多数のようです(「 睡眠薬を飲むと認知症になりやすいって本当? 」「 睡眠薬と寝酒 どっちが安心? 」を参照)。睡眠薬は怖いし、寝酒も睡眠には良くないらしい。さて、どうしようかとお悩みの方に人気なのが、「寝つきが良くなる」「睡眠の質を改善」「安心」などの効能を謳ったサプリや食品です。

 商品の紹介サイトには、服用後の睡眠感の改善を示したグラフなども載っていて、信頼性も高そうに見えます。少しお値段は張るものの、「病院に通うよりも楽だし、何より副作用がなくて安全そう」……そんな印象を抱いて購入する方が多いようです。ただ残念ながら、結論から言えば、病院で処方される医薬品のように、効果を厳密に調べられた商品はほとんどありません。また、その効果にも限界があります。ご自分の困りごとに合った商品なのか、冷静に考えてみる必要があるでしょう。

厳密で大規模な臨床試験をクリアした医薬品

 病院で処方される医薬品は、厳密かつ大規模な臨床試験(新薬治験)によって効果や副作用が検証されています。紙幅の関係から、その詳細は省略しますが、数百~1000人以上の患者さんに、実薬とプラセボ(実薬と見分けのつかない偽薬)のいずれかを服用していただいて、効果に差があるかを比較します。患者さんも、処方する医師も、実薬とプラセボのどちらを服用(処方)したかが分からないようにします。

 このように手間をかけてプラセボを服用してもらう理由は、たとえ偽薬であっても、期待感から服用後に症状が改善してしまうことがしばしばあるからです。これを「プラセボ効果」と呼びます。特に、不眠や痛み、不安やうつなどでは、プラセボ効果が大きいことが知られています。つまり、医薬品では、プラセボ効果を上回る強力な効果があることを求められているわけです。

 サプリや食品では、そこまで厳密な効果検証は求められていません。そのため、数十人の(時には数人の)ボランティアの被験者にサプリや食品を服用してもらい、睡眠感や睡眠時間、中途覚醒回数がどのように変化したかを聴き取るような、かなりお手軽な調査で効能を謳っている商品もあります。プラセボのサプリや食品は、用意されていないことがほとんどです。これでは、本当にサプリや食品に含まれている成分の作用なのか、プラセボ効果なのか、区別はつきません。

 「いやいや、私にはあのサプリがすごく効いた」という方も多いと思います。もちろん、効果はあったのでしょうが、それがプラセボ効果であった可能性もあるというお話です。実際、医薬品の臨床試験の中には、プラセボが、本物の睡眠薬や鎮痛剤とほぼ同じ効果を発揮した例もあります。「そんな話は聞きたくない。今まで感じていた効果がなくなりそう」「結果オーライ、プラセボ効果だろうが楽になればよい」という方は、どうかお気になさらずにご愛用ください。

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三島和夫(みしま・かずお)

秋田大学大学院医学系研究科精神科学講座 教授

 1987年、秋田大学医学部卒業。同大助教授、米国バージニア大学時間生物学研究センター研究員、スタンフォード大学睡眠研究センター客員准教授、国立精神・神経医療研究センター睡眠・覚醒障害研究部部長を経て、2018年より現職。日本睡眠学会理事、日本時間生物学会理事。著書に『不眠症治療のパラダイムシフト』(編著、医薬ジャーナル社)、『やってはいけない眠り方』(青春新書プレイブックス)、『8時間睡眠のウソ。日本人の眠り、8つの新常識』(共著、日経BP社)などがある。

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