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ゲーム依存症 生活に深刻な影響…治療必要な精神疾患

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 スマートフォン(スマホ)やパソコンのゲームにのめり込み、学業や仕事など日常生活や健康に深刻な影響が出る。そんな人は、「ゲーム依存症」(ゲーム障害)が疑われる。世界保健機関(WHO)が昨年5月、治療が必要な病気として位置づけた。(長尾尚実)

ゲーム依存症 生活に深刻な影響…治療必要な精神疾患

  体の病気招く恐れ

 近年、中高生を中心に、インターネットにつないだ携帯端末で、他のプレーヤーと通信しながら遊ぶ「オンラインゲーム」などが広がっている。

 厚生労働省研究班の2017年度調査では、ゲームやネットに依存しているとみられる中高生は推計約93万人。7人に1人に上り、5年間でほぼ倍増した。

 ゲーム依存症の主な症状は、〈1〉ゲームをする時間を減らそうとしてもできない〈2〉家族や仕事よりゲームを優先してしまう――などだ。この状態が1年以上続くか、短期でも症状が重い場合は、病気と診断される。

 病気そのものは精神疾患に分類されるが、ゲームのしすぎで、目の潤いがなくなる「ドライアイ」や、首の筋肉がこわばって痛む「ストレートネック」など、様々な体の病気を招く恐れがある。

 なぜ依存の状態が起きるかはまだよくわかっていない。ヒントになるのは、薬物による依存の状態だ。

 覚醒剤などの薬物では、脳の中心にある「 側坐核そくざかく 」から、神経伝達物質ドーパミンが多量に分泌されることで、高揚感が増し、依存が深まる。

 ゲーム依存症患者の脳でも、似た反応が起きていると考えられている。過剰なドーパミンにより、理性をつかさどる「前頭前野」の働きが鈍り、感情や欲望を抑えにくくなってしまう。

 脳は、気持ちよく感じる刺激を繰り返し与えられると、その刺激への依存を深めてしまう。特にスマホは持ち運びやすく、いつでもどこでもゲームを始められるため、こうした刺激を与えやすいとされる。

 もちろん、ゲーム好きの誰もが患う病気ではない。患者がのめり込んでしまうのは、「学校の授業についていけない」「家庭内がばらばらで寂しい」などの背景もあると指摘される。

  ストレスで再発も

 神戸大病院では、受診した人に、「インターネット依存度テスト」(全20問)を受けてもらう。「睡眠を削っているか」「誰かと外出するよりネットを選ぶか」などの設問に回答して点数を出す。70点以上ならこの病気が疑われる。

 さらに、生活状況や他の精神疾患の有無や、脳の磁気共鳴画像(MRI)などを踏まえて診断する。

 治療は、単にスマホを取り上げることではない。自分でゲームの時間を制御できるようにするのが目標だ。患者には、1日の行動を記録してもらう。まずは、自らの行動を客観的に理解することが大切だ。

 患者同士が体験談を語り合う方法を行う医療機関もある。

 いったん改善しても、受験などのストレスにさらされると再発しやすい。根気強い治療が必要だ。

 神戸大精神医学分野教授の曽良一郎さんは、「日本では、治療が必要な病気だとは、あまり知られていません。インターネットの活用法の指導など教育現場との連携が課題です」と話している。

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