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うんこで救える命がある 石井洋介

医療・健康・介護のコラム

センター試験直前対策が教えてくれた健康情報の見分け方

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センター試験直前対策が教えてくれた健康情報の見分け方

 1990年に始まった大学入試センター試験は今年が最後で、来年からは「大学入学共通テスト」が行われるようですね。僕が大学受験をしたのは20年近く前のことですが、当時のことを思い出すと、今でも手に汗が出てきます。これまでの人生の中で一番ストレスがかかった瞬間だったのではないかと思っています。

 センター試験は全ての問題が選択式で、正しい知識に基づいて解答を導いていくのが正しい受験生のあり方ではあります。ですが、僕が受験生だった頃から直前対策として「どうしても答えがわからない時の選択肢の絞り方」が先輩たちから語り継がれていました

  • 「絶対に〇〇である」のような極論は間違った選択肢の可能性が高い
  • ひとつだけ明らかに違う選択肢は間違った選択肢の可能性が高い
  • 文章がやたらと長い選択肢が正解である可能性が高い
  • 迷ったら3番の確率が一番高い

 今思えば笑ってしまうような技もありましたが、よくよく考えるとこんな話、最近どこかで聞いたなと思いました。それが「健康情報の見分け方」の話をしている時だったのです。

 世の中に出回っている健康情報は数多くありますが、その中でもつい飛びついてしまうような選択肢には、高価な割には効果が乏しい健康食品や怪しい「治療法」が含まれていると感じます。今回は細かいエビデンスがうんぬんという話は抜きにして、センター試験直前対策くらいの感覚で健康情報への対策を立ててみようと思います。

「『絶対に〇〇』は間違い選択肢」説

センター試験直前対策が教えてくれた健康情報の見分け方

 健康情報もセンター試験のように「絶対に治る」「絶対に痩せる」のような「絶対に〇〇」は、疑った方がいいです。「絶対に効く」なら薬剤として医療機関に導入されているはずだからです。また、医療、医学は人間の体という自然を扱う自然科学なので、どんな時にも「絶対」ということはありません。医師が行う日常の診療では、検査データや所見から常に患者さんにとって最適と考えられる方法を探す作業をしています。どれほど効果がある薬でも「絶対に」という治療法は存在せず、例外は存在します。たとえば、「Aという薬は一般的にはとても効果があるが、腎臓の機能が悪い場合には悪影響の方が勝ってしまうため、Bという薬を使用する」ということは、日常診療の中で当たり前のように行われています。

「ひとつだけ明らかに違う選択肢は間違い」説

 一般的な社会常識のようなものや、多くの医師が言っていることと明らかに違うこと、たとえば「ワクチンは打つな」みたいな話も疑ってみましょう。前述の「絶対に〇〇」がないことの裏返しなのですが、効果の一方でリスクがあるのが医療です。たしかにワクチン接種によって免疫ができる以外の反応(副反応)などもあるのは事実です。しかし、広く普及しているワクチンは、病気に 罹患(りかん) した際の重症化のダメージや副反応が起こる可能性といったリスク(害)も含め、ワクチンを打って病気が未然に防げて、感染拡大を防止できるベネフィット(利益)が大きいことが証明されているから、世界的に導入されているのです。大きなベネフィットの部分を明示せず、リスクを強調して一見正しいような論に見せるのは、ひっかけの間違い選択肢として作りやすいですよね。

「文章がやたらと冗長な選択肢は正解」説

 前述の二つの“言い切る系”と比較して、医療従事者が発信する情報は長くて読みにくいものです。「結局、何が言いたいの?」みたいなものは正解のことが多いです。人間の体は個体差があるため、どんな時にも効果とリスクは両方持っているのです。そのことをすべて書こうと 真摯(しんし) な発信になればなるほど冗長になっていくと言えます。「ずばり〇〇」という答えが欲しい気持ちも分かるのですが、そういう心理にニセの健康情報が入り込もうとしていると、頭の片隅に入れておいてもらえればと思います。

「迷ったら3番」説

 「迷ったら選択肢の3番を選ぶ」、これはどうにもたとえようがなかったですが、実はこの都市伝説は、過去のセンター試験の主要科目の解答の選択肢を比較した時に出現確率が一番高かったのが3だったというデータから生まれたもの……らしいです。現代医学も基本的には全てのデータに基づき、もっとも確からしい確率の医療を提供しているため、もしもこの格言を基に医療情報との接し方を考えるなら、最もデータが信頼できるものを選択しろということになるでしょう。そういう意味で「標準治療」と呼ばれる医療の多くは、長い歴史の中で統計的に証明されてきた効果を提供しているため、信頼していい選択肢と考えられます。

人生は選択の連続である

センター試験直前対策が教えてくれた健康情報の見分け方

 「人生は選択の連続である」とも言われます。センター試験が選択式である理由が人生を模しているからかどうかは定かではありませんが、人生の選択肢をどう選ぶのかといった選び方が、その人の知性や教養に比例するのだと思います。しかし、どれほど知性や教養を身につけても、「正しい」健康情報というのを選ぶのは、なかなか難しいです。

 そもそも健康情報というものは「正しい」正解を選ぶ学問ではなく、その時その時の「最も確からしい」選択肢を選ぶ学問であると認識することが重要なのかなと思います。この確からしさを追求するあまり、健康情報の選び方に関して細かいことを言い出すとキリがないのも事実です。

とりあえずの健康情報との向き合い方

 ここまで健康情報とセンター試験の話をしてきましたが、大きく言えば医療・健康情報の中には、
 <1>病気になってから聞く治療法など命に関わる医療情報
 <2>病気になる前に健康を維持するために調べる健康情報
の二つがあると考えています。

 <1>に関してはネットや雑誌の情報は 鵜呑(うの) みにせず、まずはしっかりと主治医に相談しましょう。どうしても主治医の意見を信じきれない時には、積極的にセカンドオピニオンも利用して他の医師の意見を聞いてみることをおすすめします。特に、医療保険外の診療を勧められた場合は、標準治療を行っている他の医師にも意見を聞いてみましょう。本当に効果が証明されているものは医療保険が使える標準治療になっているはずですし、学会で発表されているような有望な治療であれば、標準治療を行う医師がきちんと調べれば、あなたへの有効性を判断できるはずです。

 <2>に関しては、個人的に標準医療をきちんと併用してもらっていれば、命に関わる医療情報や、極端に高価で生活に支障を来すようなものでない限り、皆さまが気に入った健康情報を選んでもらっていいと思っています。「病は気から」とも言いますし、健康に良いと信じて実践することで効果が得られればラッキーです。

 ただし、薬を飲んでいる方は、飲み合わせの良し悪しなどもありますし、中には科学的根拠がなく害すらあるトンデモ医療もあるので、主治医がいる場合には、やはりきちんと相談してから実践することをおすすめします。

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ishiyousuke_prof

石井洋介(いしい・ようすけ)

 医師、日本うんこ学会会長

 2010年、高知大学卒業。横浜市立市民病院炎症性腸疾患科、厚生労働省医系技官などを歴任。大腸がんなどの知識の普及を目的としたスマホゲーム「うんコレ」を開発。13年には「日本うんこ学会」を設立し、会長に就任。現在は、在宅医療を展開する山手台クリニック院長、秋葉原内科saveクリニック共同代表、ハイズ株式会社SHIP運営代表、一般社団法人高知医療再生機構特任医師。著書に「19歳で人工肛門、偏差値30の僕が医師になって考えたこと」(PHP研究所)など。

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