リングドクター・富家孝の「死を想え」
医療・健康・介護のコラム
野村克也さんを突然死させた「虚血性心不全」は防げる死だったのでは
誰もが突然のことに驚いた野村克也さん(84歳)の死。死因は「虚血性心不全」と発表されました。報道によると、11日の午前2時ごろ、東京・世田谷区の野村さんの自宅から119番通報があり、救急搬送された病院で死亡が確認されたといいます。発見したのは家政婦で、野村さんが浴槽の中でぐったりしているのを見つけて電話したそうです。とすると、野村さんは入浴中に心不全を起こしたということでしょう。
非常に残念な死であり、ある意味で防げた死でした。というのは、虚血性心不全というのは、自覚症状があり、そのときすぐに連絡、早く病院に搬送されれば、手術によって助かる可能性が高いからです。
私も2度、虚血性心不全を経験した
実は、私も虚血性心不全に陥り、手術により助かっています。それも2回です。私の場合、1回目は57歳のとき、2004年12月6日の朝方のことでした。左胸部が急に激しく痛み出し、冷や汗が出たのです。このとき、これは心臓の血管になにか異変があると直感しました。医学生のとき、心疾患を起こすと「胸痛、圧迫感、奥歯の痛み、左肩痛」という症状が出ると習っていたからです。それで、慌てて知己の心臓外科医・ 南淵 明宏氏に連絡を取りました。彼は、心臓外科の世界では有名な 凄腕 を持つ名医です。
「すぐ来てください」と言われ、病院に駆けつけ、CT(コンピューター断層撮影)と心電図の検査を受けました。すると異常がないということでしたが、エコーを見ると左心室が動いていないのです。
「これはステントを入れないとだめですね」と、南淵医師。心臓の冠動脈のうち一本の一部が詰まっているというのです。
ステントというのは、ステンレススチールやコバルト合金などの金属でできているチューブで、これを血管に入れて広げることで血流が回復します。こうして、緊急でステント挿入手術を受け、私はことなきを得ました。
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ニュースはショックでした。 2年前の学会発表に名言を使わせて頂きましたし、学生サッカー指導にも著書の内容を使わせていただいたので。 やはり生きる...
ニュースはショックでした。
2年前の学会発表に名言を使わせて頂きましたし、学生サッカー指導にも著書の内容を使わせていただいたので。
やはり生きる気力の根幹が奥様の死去で失われていたことが根本原因でしょうか?
人間の生きる理由とは、本能の外周に自らの欲求で形作るものと他者から与えられるものでデコレーションしたようなものだと思いますが、外的要因も様々な形で大事です。
同じ困難を目の前にした時に、どういう感情や行動が引き出されるかの個性があるからです。
さて、古典的な心筋梗塞の症状は本文の通り、胸の症状、歯の症状、左肩の症状ですが、その前駆状態や亜型としては肩こりや右肩の症状なども知られています。
また、心臓が血液を全身に循環させるので、頭部や腹部、四肢に虚血症状が出ることもあり得ます。
一番見逃しやすいのはNOMI(非閉塞性腸管虚血)とか一過性の脳虚血かもしれません。
最近のCTであれば冠動脈もくっきりと移りますが、あるいは低被ばくCTや高速MRIの進化も含めて、前駆状態からもっと可視化されていくのかもしれません。
いずれにせよ、突然死そのものは防げたかもしれないと言えばそうなのかもしれませんが、人生の最後まで様々な制限をつけてまで生きるのは月見草らしくないとボヤかれたかもしれないですね。
慢性疾患やそこからの救急症状の評価や予測ができるということは死に方を選べる側面もあります。
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