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医療・健康・介護のコラム

「治療を続けるなら、辞めてほしい」と会社が…「不妊退職」の経済的損失は1345億円!?

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仕事と両立困難 自ら「不妊退職」選ぶケースも多い

 こうした「不妊退職」を勧告されることは、もちろんハラスメントにあたります。しかし、「不妊退職」は、実は自ら退職を選んでいる(選ばざるを得なくなっている)ケースも多いのです。厚生労働省の2017年の調査では、仕事をしながら不妊治療をしている女性の約4人に1人(23%)が、両立できずに「退職」している、という結果が出ていますし、NPO法人Fineの5526人を対象とした「仕事と不妊治療の両立に関するアンケートPart2」の結果でも、20%の女性が、仕事と不妊治療を両立させられず、40%が働き方を変え、そのうち半数が「退職」したという結果が出ました。つまり、5人に1人が「不妊退職」をしていた、ということです。

 では、そもそも「不妊治療をしている人」は、どれぐらいいるかというと、国立社会保障・人口問題研究所「第15回出生動向基本調査」(2015年6月)によると、カップルの5.5組に1組が「実際に不妊治療を経験している」という結果が出ています。まだ治療をしていないとしても「不妊に悩んだことがある」のは、実に3組に1組です。不妊当事者は、それを公言しないケースが多いことから、サイレント・マジョリティともいわれています。不妊は今や、「すぐ身近にある重要課題」なのです。

 国や企業にぜひ考えていただきたいのは、この「不妊退職」が社会にどのような影響を与えているかということです。不妊退職による経済的損失についてFineがこのほど試算をした結果、実に1,345億3,363万円という数字がでました。しかしこれには、退職者にそれまでかかった育成費用や、その補填のための人材雇用の費用は含まれていません。この費用を40歳の女性で試算したところ、737憶6,908万円という数字もでており、不妊退職の経済損失と合算すると2,083憶271万円と試算されます。

(NPO法人Fineプレスリリース:
https://j-fine.jp/prs/prs/fineprs_kokkaibenkyokai200130.pdf

不妊はもはや、社会的な課題

 不妊はよく「プライベートな話題」「個人的な問題」と言われます。しかし、この数字を見ると、もはや不妊は一個人、一企業の問題ではなく、社会的な課題であると言わざるを得ないのではないでしょうか。企業も潤沢に人材がいるわけではなく、ぎりぎりで回しているところも多い中、大変なのは理解できますし、この「不妊治療」に関しては、正しい情報が知られていないことこそが、第1段階の課題であると感じています。ですから、不妊治療に対してだけ特別に扱ってほしいというわけでは決してなく、例えば、すでにある休暇制度等を「不妊治療にも」使えるようにしていただくだけで、当事者は大変助かるのです。まずはそこから始めていただけたら、仕事を辞めずにすむ当事者は少なからずいるはずで、上記のような経済的損失も減らすことができるでしょう。

 不妊治療と仕事の両立に関しては、この春にも厚生労働省から「両立支援マニュアル」が発表される予定となっています。「働きながら○○○をしたい」という○○○に入るものは、育児、介護、通院、不妊や不育の治療、なんでもいいと思います。必要なのは制度もそうですが、それよりもまず、「風土」。「お互いさま」と支えあえる社会こそ、今、求められているものではないでしょうか。(松本亜樹子 NPO法人Fine=ファイン=理事長)

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松本亜樹子(まつもと あきこ)

NPO法人Fine理事長/国際コーチ連盟認定プロフェッショナルサーティファイドコーチ

 長崎市生まれ。不妊経験をきっかけとしてNPO法人Fine(~現在・過去・未来の不妊体験者を支援する会~)を立ち上げ、不妊の環境向上等の自助活動を行なっている。自身は法人の事業に従事しながら、人材育成トレーナー(米国Gallup社認定ストレングス・コーチ、アンガーマネジメントコンサルタント等)、研修講師として活動している。著書に『不妊治療のやめどき』(WAVE出版)など。
Official site:http://coacham.biz/

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